2015 Fiscal Year Annual Research Report
プロトン共役電子移動による水素原子の包接安定化と反応性制御
Publicly Offered Research
Project Area | Stimuli-responsive Chemical Species for the Creation of Functional Molecules |
Project/Area Number |
15H00942
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Research Institution | Osaka University |
Principal Investigator |
平尾 泰一 大阪大学, 理学(系)研究科(研究院), 助教 (50506392)
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Project Period (FY) |
2015-04-01 – 2017-03-31
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Keywords | 構造・機能材料 / プロトン共役電子移動 / 感応性化学種 / 分子認識 |
Outline of Annual Research Achievements |
生体内の様々な物質変換や電子伝達系において電子およびプロトンの授受を媒介する重要な役割を担っているNADHは、ジヒドロピリジン骨格の4位水素のC-H結合が非常に強固であるために活性化障壁が大きく、酵素の働きに頼らない実験系においての利用は難しい。本研究はジヒドロピリジンの4位水素を活性化する新たな手法を開発することで、高い反応性と選択性を併せ持つ感応性化学種を創生することを目指している。ジヒドロピリジンの酸化体であるピリジニウムラジカルまたはピリジニウムカチオンがジヒドロピリジンと向かい合った場合、両分子間には酸化還元反応に基づいた相互作用が働くことが予想される。このときドナー側であるジヒドロピリジンの4位水素は活性化する可能性がある。そこでジヒドロピリジンとピリジニウムカチオンが向かい合うようにして一分子とした化合物を設計した。これまでに逐次的な手法によって全10段階、全収率17%で目的とする化合物の合成を達成することができた。この際に課題になったのは還元時のプロトンの付加位置である。ピリジニウムカチオンの反応中心は2,4,6位の3ヶ所であり、4位のみの選択的な反応を実現するには2,6位に立体的に嵩高い置換基を導入する必要があった。フェニル基を2,6位に導入したものでは選択性はなかったものの、メシチル基に代えたものでは選択性が飛躍的に向上した。二次元NMRおよび単結晶X線構造解析から4位水素がサンドイッチされた立体配座をとることを確認することができ、目的の構造を単離することに成功したといえる。酸化還元挙動、温度可変NMRから4位水素について調べたところ、対面した酸化体ユニットからの電子的な影響を確認した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本年度に計画していた対象分子の合成を完了することができた。また得られた化合物の構造についても明らかにしている。特に重要な成果としては、置換基の立体的な嵩高さに起因するヒドリド還元の反応点の選択性についてであり、今後の研究に活かすことができる。このように申請書に記載した計画の通り研究はおこなえており、研究目的に向けて着実に前進している。
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Strategy for Future Research Activity |
次年度はサンドイッチされた水素の状態解析に関してさらに詳しく分光学的測定から調べる。特に注目している水素が一方のユニット上に局在している状態、両ユニット間を熱的に移動している状態、そして共有(非局在化)している状態の3通りが考えられる。そのいずれの状態にあるかについてESRスペクトルの温度依存性を測定することで調べることができる。最後に目的化合物を用いて、有機還元試薬および電解還元用の触媒としての応用の可能性について検討する。サンドイッチ種では1つのプロトンと1つの電子を温和な条件下で他分子へ供与できる可能性がある。そこで領域内の研究者と協力してアルデヒドやケトン類との反応性について検討する。
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Research Products
(3 results)