2015 Fiscal Year Annual Research Report
物理的刺激で光や信号を発する有機π共役系化合物の創出とメカニズムの解明
Publicly Offered Research
Project Area | Stimuli-responsive Chemical Species for the Creation of Functional Molecules |
Project/Area Number |
15H00959
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Research Institution | University of Hyogo |
Principal Investigator |
西田 純一 兵庫県立大学, 工学(系)研究科(研究院), 准教授 (70334521)
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Project Period (FY) |
2015-04-01 – 2017-03-31
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Keywords | 構造・機能材料 / 分子性固体 / 誘電体物性 / 有機化学 / 超分子化学 |
Outline of Annual Research Achievements |
物質に機械的な刺激を加えた場合に発光する現象はトリボルミネッセンス (TL)と呼ばれている。力による刺激を光信号に変えることができ、刺激に対するセンサーや発光を取り出す素子等に応用されている。TLは固体の圧電特性と関係し、TLを与える有機化合物を設計する場合には対称心のない分子配列を設計する必要がある。さらに大きな双極子を有する化合物を同じ方向に向けて配列させることができれば強いTL特性を獲得すると期待される。私達は、これまでにトリフルオロメチルフェニル (CF3Ph) 基を有する一連のイミド化合物が同一方向を向き揃った結晶系を与え、青色のTLを与えることを報告している。この系のフタルイミドユニットに様々なアリールユニットを導入した化合物も同様なタイプの結晶を形成し、固体の発光量子収率の向上やTLの発光波長の制御ができる。 これまでにチオフェン、フラン、セレノフェン、ベンゼン、ナフタレン環等を導入したフタルイミド化合物を主に合成している。これらの化合物の中で、ナフチル基が導入された化合物は一番強いTLを示す。この化合物の単結晶X線構造解析に成功し、対称中心がない集合体が安定化される理由を明らかにすることができた。この研究成果は論文として報告している(J. Org. Chem. 2016, 81, 433-441)。 また、フタルイミド化合物合成の重要な鍵化合物であるブロモ置換体に、ジメチルアミノ基を有する化合物を少しだけ混ぜることでその固体から遅延発光が観測されることを発見した。N-フェニル側の置換基は固体の集合様式や発光性に影響を有し、CF3基、シアノ基、また無置換の化合物で比較したところ、CF3基を持つ化合物で一番長い寿命(0.3 s)を観測している。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
これまでにトリフルオロメチルフェニル (CF3Ph) 基を有する一連のフタルイミド化合物のイミドユニットに様々なアリールユニットを導入した化合物の合成を行ってきた。これらは多くの場合に同様なタイプの結晶を形成し、固体の発光量子収率の向上やTLの発光波長の制御ができることを明らかにしている。 チオフェン環を導入した化合物からは、チオフェン環の数を増やすことによって発光波長が長波長にシフトすることを明らかにしている。チオフェン環をフランやセレノフェン環に置き換えた場合の検討も行い、原子のサイズによって固体発光性が変化することを見出した。フラン環の場合には、固体中でブロード発光を示し、より安定な捩じれ型の励起状態を形成していることが示唆された。ベンゼン系のアリールユニットを導入した化合物を合成し、メトキシフェニルやジフェニルエーテルユニットを導入した化合物で発光効率が大きく向上した。縮環系のナフチル基を導入した化合物もTL発光強度が大きく増加することを見出している。 ナフチル基が導入された化合物は結晶中、イミド部分とナフチル部分が揃った同様な対称心のない層構造を形成し、ナフチル基どうしはヘリングボーン型の密な相互作用をしている。さらに電子受容性のCF3基がついたベンゼン環の水素原子と隣接するイミドの酸素原子との間に水素結合が観測され、対称中心がない集合体が安定化されることが明らかになった。 フタルイミド化合物合成の重要な鍵化合物であるブロモ置換体に、ジメチルアミノ基を有する化合物を少しだけ混ぜることでその固体から遅延発光が観測されることを発見しているが、これらの発光寿命の温度依存性や固体集合体との相関についての考察を現在行っている。またCF3Ph基を4-ピリジル基に置き換えた化合物でも同様な遅延発光を示す固体が得られることを明らかにした。
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Strategy for Future Research Activity |
これまでの研究を継続し、より強いTLを示す化合物の研究を行う。これらの研究の過程でCF3Ph基を4-ピリジル基に置き換えた化合物でも対称中心のないTLを示す固体が得られることを発見している。4-ピリジル基を有するイミド化合物を合せて合成し、固体発光性について考察を行う。ピリジル基は配位することができる官能基であり、薄膜にしたときにCF3Ph基と比べてどのような差が得られるか検討を行う。TL特性に重要な固体の圧電性と帯電についての検討実験を行う予定である。 一方、これらの対称中心のない極性結晶の特徴として、分子内分極が容易に起きる可能性が考えられる。この性質を利用して、分子性固体の分極と帯電に由来する物性の開発を検討する。例えば現在優れた電子供与体であるテトラチアフルバレン(TTF)をこれらのイミドユニットに導入した化合物の合成を検討している。固体内での分極は物理的な力だけでなく、温度によって変化する可能性があり、温度によって固体の電気抵抗が大きく変化するような電気伝導性化合物を創出できないか合せて検討することを考えている。
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Research Products
(17 results)