2015 Fiscal Year Annual Research Report
金属酵素の感応性化学種を鍵とする新型鉄錯体酸化触媒の設計開発
Publicly Offered Research
Project Area | Stimuli-responsive Chemical Species for the Creation of Functional Molecules |
Project/Area Number |
15H00963
|
Research Institution | Doshisha University |
Principal Investigator |
人見 穣 同志社大学, 理工学部, 教授 (20335186)
|
Project Period (FY) |
2015-04-01 – 2017-03-31
|
Keywords | 酸化反応 / 選択酸化 / 過酸化水素 |
Outline of Annual Research Achievements |
申請者はこれまで単核オキソ鉄(V)種を発生することの可能なユニークな窒素5座配位カルボキサミド単核非ヘム鉄錯体Fe(dpaq_R)を触媒とし、過酸化水素を酸化剤とする不活性アルカンの位置選択的なヒドロキシル化を達成してきた。本研究では、Fe(dpaq_R)をもとに、外部基質との反応によって高い選択性を有する単核オキソ鉄(V)種を発生することの可能な単核非ヘム鉄錯体触媒の開発を進めた。その結果、窒素5座配位カルボキサミド単核非ヘム鉄錯体Fe(dpaq_R)から一つのピリジン配位子を取り除いた窒素4座配位カルボキサミド単核非ヘム鉄錯体Fe(propaq)が、過酸化水素を酸化剤とするアダマンタンのヒドロキシル化に対し、従来までに当研究室で開発した何れの窒素5座配位カルボキサミド単核非ヘム鉄錯体Fe(dpaq_R)よりも高い第三級C-H結合選択性を示すことを見出した。この選択性は、酢酸添加によって濃度依存にして更に向上し、鉄錯体としては最も高い選択性を示すことが判明した。更に、基質適用範囲を探索した結果、アダマンタン以外の不活性第3級C-H結合をヒドロキシル化しないことが判明した。この結果は、窒素4座配位カルボキサミド単核非ヘム鉄錯体Fe(propaq)がカルボン酸の存在下、極めて活性の低い、すなわち、極めて選択性の高いオキソ鉄(V)種を発生していることを示唆している。更に、基質適用範囲を探索した結果、N-保護プロリンエスエルは酢酸存在下においても酸化されないが、N-保護プロリンを基質として用いた場合、選択的にN-保護グルタミン酸に変換されることを見出した。この結果は、N-保護プロリンのカルボン酸がトリガーとなり、選択性の高いオキソ鉄(V)種が発生し、N-保護プロリンの窒素に隣接するメチレン部位が酸化された結果であると考えられる。
|
Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
生体触媒と同じく鉄オキソ種を活性種とし、位置選択的なだけでなく基質選択的な酸化反応を行うことのできる酸化触媒を開発することができた。
|
Strategy for Future Research Activity |
本研究で開発した窒素4座配位カルボキサミド単核非ヘム鉄錯体Fe(propaq)は、カルボン酸を有する基質を用いた場合、カルボン酸部位との反応がトリガーとなり、極めて選択性の高い酸化活性種オキソ鉄(V)種を発生する。しかし、その触媒回転数は実用触媒としては低い。そのため、今後は、Fe(propaq)を基本に電子的、立体的に観点から触媒耐性の向上を目指した分子設計を行う。また、分光学的研究を進め、活性種の構造と反応性の解明を行う。
|