2015 Fiscal Year Annual Research Report
森林に降下した放射性セシウムの初期遮断率の広域評価
Publicly Offered Research
Project Area | Interdisciplinary Study on Environmental Transfer of Radionuclides from the Fukushima Daiichi Nuclear Power Plant Accident |
Project/Area Number |
15H00969
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Research Institution | University of Tsukuba |
Principal Investigator |
加藤 弘亮 筑波大学, 生命環境系, 准教授 (90732636)
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Project Period (FY) |
2015-04-01 – 2017-03-31
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Keywords | 福島第一原子力発電所事故 / 放射性セシウム / 森林 / 樹冠遮断 / 移行状況 |
Outline of Annual Research Achievements |
本年度は、福島県内の森林の放射能汚染状況を把握するために、林野庁及び福島県により測定された森林放射能汚染状況の広域測定データを収集し整理した。さらに広域測定データと航空機モニタリングデータ等を利用して、各測定地点での樹冠遮断率及び木材中の放射性セシウム濃度の解析と地図化を行った。その結果、樹種によって樹冠遮断率が異なることが明らかになり、また地域によって樹冠遮断率と木材中の放射性セシウム濃度が異なる可能性を示した。さらに、福島県伊達郡川俣町山木屋地区のモデル調査森林における放射性セシウム移行状況のモニタリング調査を定期的に実施した。 以上の研究成果について、欧州地球科学連合2015年大会(平成27年4月12~17日、ウィーン・オーストリア)、地球惑星科学連合2015大会(平成27年5月24日~28日、幕張・千葉)、アメリカ地球物理連合2015年秋大会(平成27年12月14~18日、サンフランシスコ・アメリカ)において発表報告を行い、多くの専門家と議論及び意見交換を行った。また、平成28年2月2日~2月7日の期間にフランス原子力安全研究所(カダラシュ・フランス)及びStefan Bengtsson博士(ストックホルム・スウェーデン)を訪問し、森林内の放射性セシウム移行状況の調査結果についての解析方法について議論するとともに、学術専門誌への投稿論文の準備の打ち合わせを行った。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
福島県内の森林の放射能汚染状況について、林野庁及び福島県の広域測定データの収集・整理が順調に進んでいる。広域測定データを用いた樹冠遮断率及び木材の放射性セシウム濃度の算出・地図化についても概ね順調に進行している。福島県伊達郡川俣町のモデル調査森林における放射性セシウム移行状況の観測調査も定期的に実施し、雨水や落葉等の採取が順調に進んでいる。原発事故から時間が経過していることから放射性セシウム濃度が低下しており、当初の予定よりも放射性セシウム濃度の測定に時間を要しているが、来年度期間に繰り越して測定を行うことで測定が完了する見込みである。 研究成果のとりまとめと学会等での発表が予定通りに進行しており、平成27年度調査成果について学術専門誌への論文投稿の準備も順調に進んでいる。
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Strategy for Future Research Activity |
本研究では前述した目的を達成するために、昨年度に引き続き、林野庁及び福島県により測定された森林放射能汚染状況の広域測定データ(平成27年度以降の測定データ)を収集・整理する。広域測定データの解析に基づいて、福島県内の森林の放射能汚染状況を全体的に把握し、樹冠遮断率や木材等の放射性セシウム濃度の空間分布をGISにより地図化する。また、最新の研究成果(計画研究班A01班及びA02班、さらにフランス原子力安全研究所の研究成果を含む)を利用して沈着形態の空間分布の情報を更新し、樹冠遮断率や木材等の放射性セシウム濃度の地域性との関連について調査する。これにより、地域毎の森林の放射能汚染状況を評価するとともに、地域的な差異の発生要因を解明する。 これまでに森林内の放射性セシウム移行量のモニタリングを実施してきた福島県伊達郡川俣町山木屋地区のモデル調査森林において、樹冠から林床への放射性セシウムの移行モニタリングを継続する。それにより、森林内での放射性セシウム沈着量の空間分布と樹冠構造等の関連性について解析を行う。 以上、広域測定データに基づく福島県内の森林の放射能汚染状況の解析結果と、モデル調査森林における放射性セシウムの移行メカニズムの調査結果を総合的に解析し、福島県内の森林の放射能汚染状況の一般化を行うとともに、樹種毎の放射性セシウムの初期遮断率や移行状況の差異、スギ材に含まれる放射性セシウム濃度の地域差を明らかにする。
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Research Products
(13 results)