2015 Fiscal Year Annual Research Report
結晶中での極性芳香族分子の運動と制御による誘電機能の創出
Publicly Offered Research
Project Area | pi-System Figuration: Control of Electron and Structural Dynamism for Innovative Functions |
Project/Area Number |
15H00980
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Research Institution | Hokkaido University |
Principal Investigator |
原田 潤 北海道大学, 理学(系)研究科(研究院), 准教授 (00313172)
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Project Period (FY) |
2015-04-01 – 2017-03-31
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Keywords | 分子性固体 / 誘電体物性 |
Outline of Annual Research Achievements |
結晶中で分子は3次元の周期性を持って規則正しく,かつ,密に集合しているため,ほとんど静止しているのではないかと誤解されがちであるが,決して分子は静止している訳ではない.これまで,様々な研究により特定の種類の分子運動なら結晶中でも比較的容易に起こることが分かってきている.しかしながら,結晶中での分子運動を物質の機能と結びつける研究はごくわずかなものに限られている.本研究では,極性芳香族分子を用いて電荷移動錯体(CT錯体)結晶を設計し,極性分子の運動を誘導・制御することで,強誘電性などの結晶の誘電機能を創出することを目的とする.本年度は,大きな双極子モーメントを持つテトラブロモ無水フタル酸(TBPA)あるいはテトラクロロ無水フタル酸(TCPA)などをアクセプターとし,ドナーとしてヘキサメチルベンゼン,コロネン,ペリレンのような,無極性の多環芳香族炭化水素を用いてCT錯体の単結晶を作製した.これらの結晶について単結晶X線構造解析,DSC測定,誘電率測定を行ったところ,その多くにおいてアクセプター分子の配向の乱れと面内回転運動およびそれに由来する相転移が観測された.そしてその相転移は極性アクセプター分子の配向の秩序-無秩序化に由来するものであった.相転移を示す結晶では,相転移温度よりも高温領域では極性分子の回転に由来する配向分極のために大きな誘電率を示し,相転移点で誘電率は突然減少し,低温領域では小さな誘電率を示した.
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
多くのCT錯体結晶において,極性芳香族分子が面内回転運動を行い,それに由来する誘電応答と相転移を示すことが分かった.従ってこのタイプのCT錯体結晶は極性分子の回転と相転移による分子環境の対称性変化が比較的容易に起こり,強誘電体結晶探索の有望なターゲットであることが明らかとなった.
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Strategy for Future Research Activity |
既にいくつかのCT結晶において,強誘電性あるいは反強誘電性を示すことが期待される相転移が観測されている.そのような結晶について分極-電場ヒステリシス測定を行う.また,高速な分極反転が出来ず,ヒステリシス測定を行うことが出来ない結晶については焦電流測定あるいは直流電場印加による結晶構造の反転をX線結晶解析によって観測することにより強誘電性を証明する.
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Research Products
(12 results)