2015 Fiscal Year Annual Research Report
π-集積型ピラードレイヤー構造による格子・空間物性制御
Publicly Offered Research
Project Area | pi-System Figuration: Control of Electron and Structural Dynamism for Innovative Functions |
Project/Area Number |
15H00983
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Research Institution | Tohoku University |
Principal Investigator |
宮坂 等 東北大学, 金属材料研究所, 教授 (50332937)
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Project Period (FY) |
2015-04-01 – 2017-03-31
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Keywords | πー集積体 / 金属錯体格子 / 電子ドナー・アクセプター / 電子・スピン物性 / ホストーゲスト相互作用 / 磁気圧力依存性 / 分子磁性体 / 多孔性分子磁性体 |
Outline of Annual Research Achievements |
I) [Fe(Cp*)2][{Ru2}2TCNQ]系におけるD2A層状格子のπ軌道制御による電荷秩序相制御 本研究者は、[Fe(Cp*)2]+をピラー部位に用いることで、πースタック型ピラードレイヤー格子(π-stacked PLF)を構築することを見出し、その化合物がTc = 82 Kのフェリ磁性体になることを報告した(Angew. Chem. Int. Ed. 2015, 54, 569-573)。この磁気挙動は、ピラーのスピンにも因るが、D2A層内の電荷移動にも密接に関係しており、その電荷移動・電子移動が磁性体構築の鍵となる。そこで、電子ドナー性の異なる3種類の[Ru2II,II]ユニットを用いることで、[Ru2II,II]-(TCNQ-)-[Ru2II,II]と[Ru2II,II]-(TCNQ2-)-[Ru2II,III]+の2種類の電荷秩序状態を同様な構造で合理的に合成することに成功した。前者は、フェリ磁性体であり、後者はTCNQ2-を含むため、常磁性体になる。これらの電子移動の制御は、用いるDとTCNQのHOMO/LUMOエネルギー差で説明できることが明らかとなった。 II) [M(Cp*)2][{Ru2}2TCNQ] (M = Mn, Cr, Ni)開発と高温磁性体開発 ピラーに[Fe(Cp*)2]+を用いたものでは、Tc = 82 Kであり、それに圧力をかけることによって、12.5 kbarで107 K程度まで相転移温度を上げることに成功した。次に、ピラーとしてスピン多重度の大きい[Cr(Cp*)2]+を用いた同構造の化合物を合成し、大気圧Tc = 89 Kまで相転移温度を上昇させることに成功した。今後圧力下での測定を行う計画である。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
現在の所、本年度に計画した内容について首尾よく進んでおり、また、上記の成果以外の新たなπ造形格子の設計と合成にも成功している。また、最近では、これらπ-stacked PLF構造が多孔性分子磁石になることも見出しており、ガス吸着やリチウムイオン電池による充放電により磁性体制御ができる可能性が出てきた。非常に面白い展開になっており、今後に期待できる。
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Strategy for Future Research Activity |
平成28年度は、上記の計画II)の圧力による磁性体制御に加え、下記の計画III)とIV)を実行するが、特に、計画IV)について、重点的に行う。 III) D’[{Ru2}2TCNQ] (D’ = [Fe(Cp*)2]+誘導体)の開発と物性制御 現在までにπ型ピラーとして用いた[FeCp*2]フェロセン誘導体については、現在までに多様な誘導体が合成されており、多くの情報がある。そこで、TCNQRxとの電荷移動・電子移動を考慮しつつ、本系に組み込むことを行う。これにより、エネルギーレベルを調整できることと同時に、TCNQRxとのπスタック様式が僅かに変わり、磁気的な相互作用を制御できる。 IV) 多孔性π-PLF構造を用いた分子吸脱着とホスト・ゲスト相互作用を利用した物性制御 π-PLF構造は比較的安定であり、空隙に存在する溶媒分子を除いてもその細孔を残したままPLF構造を保持すると考えられる。この細孔にガス性分子を挿入し、構造転移による誘電応答、磁気変換、伝導度変換を行う。ガスをハンドリングする装置は既設であり、物理測定を行うクライオスタット、及び米国カンタムデザイン社のPPMS、MPMSへの挿入とプローブ設計に関しては、現在までにほぼ完成しており、それらを使用(及び改良)して測定する。
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Research Products
(23 results)