2015 Fiscal Year Annual Research Report
サブナノ空間の官能基化による球状π造形
Publicly Offered Research
Project Area | pi-System Figuration: Control of Electron and Structural Dynamism for Innovative Functions |
Project/Area Number |
15H00993
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Research Institution | Kyoto University |
Principal Investigator |
村田 靖次郎 京都大学, 化学研究所, 教授 (40314273)
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Project Period (FY) |
2015-04-01 – 2017-03-31
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Keywords | 水分子 / 二量体 / 水素結合 / フラーレンC70 / 内包フラーレン |
Outline of Annual Research Achievements |
水は生命にとって最も身近かつ重要な物質であり、水分子H2Oから構成され、水素結合によって結ばれている。水に関する研究は長らく行われてきたが、一個あるいは二個の水分子を選択的に取り出し、その基礎的物性を明らかにした研究例はほとんどない。我々はこれまでに、フラーレンの炭素骨格の変換反応を機軸として、水一分子を内包したC60の有機化学的な合成法を開発してきた。本研究では、C60より大きな内部空間をもつフラーレンC70に対してこの手法を適用し、水分子を一個または二個内包したC70の合成に取り組んだ。 C70とピリダジン誘導体との熱反応では、α結合またはβ結合で反応した8員環α開口体 (40%)と8員環β開口体 (6%)が得られ。今回、β開口体を出発原料として2段階の反応により、13員環開口体を合成した。この化合物をトルエン中水存在下で加熱すると、水単分子が86%の内包率でC70内部に挿入でき、さらに2段階の反応により開口部を完全に閉環することに成功した。1H NMR (CDCl3/CS2 = 1/1) 測定の結果、内包された水単分子由来のシングレットのシグナル (-27.1 ppm) に加えて-25.3 ppmにシングレットが観測された。リサイクルHPLCを用いて精製した結果、後者のシグナルは水二量体を内包したC70に対応することが明らかとなり、H2O@C70と(H2O)2@C70の生成比は積分比より98 : 1と見積もられた。内包された水二量体の化学シフトは、内包された水単分子と比較して大きく低磁場側にシフトしていることから、水二量体はC70骨格内部で水素結合を形成し、NMRのタイムスケールを超える速さで交換が起きていることがわかった。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
1: Research has progressed more than it was originally planned.
Reason
当初予想していなかった、水分子の二量体をフラーレン内部に閉じ込めることができたため。
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Strategy for Future Research Activity |
二分子の水がフラーレン内部に挿入されることを見出すことが出来たため、異種2分子をフラーレン内部に閉じ込める手段を開発する。
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Research Products
(10 results)