2015 Fiscal Year Annual Research Report
レプトン数の破れから探る宇宙バリオン数生成機構の解明
Publicly Offered Research
Project Area | Revealing the history of the universe with underground particle and nuclear research |
Project/Area Number |
15H01031
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Research Institution | Niigata University |
Principal Investigator |
淺賀 岳彦 新潟大学, 自然科学系, 准教授 (70419993)
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Project Period (FY) |
2015-04-01 – 2017-03-31
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Keywords | ニュートリノ / 宇宙バリオン数 |
Outline of Annual Research Achievements |
宇宙における物質と反物質の数の差、宇宙バリオン数の起源を説明する新しい素粒子の枠組みを探索した。特に、これまであまり検討されてこなかった「軽い右巻きニュートリノ」による宇宙バリオン数生成機構を考え、地上実験による生成機構の解明を目指した。特に本課題では、「軽い右巻きニュートリノ」が引き起こすレプトン数を破る現象について研究を行った。
今年度科研費の補助の下研究が進展した結果、研究論文を合計6編発表した。うち3編は査読付き雑誌で発表され、2編は雑誌に投稿中であり、1編は会議の紀要である。また、積極的に研究成果を発信するため研究会・会議にて多数発表を行った。特に、国内会議2回、国際会議2回の招待講演を行った。
今年度の注目すべき研究成果として、論文”Seesaw mechanism at electron-electron collider”が上げられる。これまでレプトン数を破る過程としてニュートリノを伴わない2重ベータ崩壊が広く議論されてきた。本研究ではその逆過程である「電子+電子->Wボソン対」を検討した。電子電子衝突はILC計画の一つの可能性として議論されており、将来この過程が測定される可能性がある。我々は、シーソー機構を実現する右巻きニュートリノにより引き起こされるこの反応に対する最大の断面積を定量的に評価した。この最大値は、模型に導入する右巻きニュートリノの数に強く依存することが判明した。特に、右巻きニュートリノの数が3つ以上になると最大断面積が大きくなることが可能となり、将来実験で検証可能な大きさになり得ることを示した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
今年度、6編の論文を発表し、多数の研究成果発表を行った事から、研究はおおむね順調に進展していると判断できる。特に、右巻きニュートリノが引き起こすレプトン数を破る過程として「電子+電子->Wボゾン対」についての研究は、将来の電子・電子衝突実験での検証可能性を指摘するなど重要な帰結が得られた。さらに、本研究を実施している最中に着想した問題点、右巻きニュートリノの相互作用が強くなりすぎる問題について検討した結果、新たに論文”Perturbativity in the seesaw mechanism”を発表した。このように想定外の発展があり、順調に研究が進められていると思う。
ただし、右巻きニュートリノが引き起こすレプトン数を破る過程「ニュートリノを伴わない2重ベータ崩壊」についての研究の進展が遅く、論文を発表できていない点を問題視している。研究のスピードを上げ、今年度中に論文発表を行いたい。
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Strategy for Future Research Activity |
本研究では、宇宙物理で重要な「軽い右巻きニュートリノ」が引き起こすレプトン数を破る素粒子反応について検討をさらに進める。この反応は素粒子標準模型の枠内では起こらないため、新しい物理の決定的なシグナルとなる。今後、以下の2つの課題について研究を進める。
(1)「軽い右巻きニュートリノ」とニュートリノを伴わない二重ベータ崩壊:ニュートリノを伴わない二重ベータ崩壊に対する「軽い右巻きニュートリノ」の寄与の大きさとして許される大きさを評価する。これまでの実験探索からの制限、および宇宙バリオン数生成を実現する領域における崩壊率の予言領域を提示し、実験での検証可能性について検討を行う。
(2)「軽い右巻きニュートリノ」とレプトン数を破る中間子崩壊:荷電中間子崩壊から右巻きニュートリノが生成されると、右巻きニュートリノがマヨラナ粒子の場合、その崩壊はレプトン数を保存しない。このような反応は、標準模型を超える物理の決定的な証拠となる。ここでは、KEKで行われるSuperKEKB実験を想定し、荷電B中間子の崩壊について研究を進め、レプトン数の破れの探索感度を評価する。
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Research Products
(10 results)