2015 Fiscal Year Annual Research Report
高性能ガスセンサー実現のための活性表面の作製と評価
Publicly Offered Research
Project Area | 3D Active-Site Science |
Project/Area Number |
15H01053
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Research Institution | National Institute for Materials Science |
Principal Investigator |
鈴木 拓 国立研究開発法人物質・材料研究機構, 機能性材料研究拠点, 主席研究員 (60354354)
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Project Period (FY) |
2015-04-01 – 2017-03-31
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Keywords | ガスセンサ / 光電子回折 / 光電子ホログラフィー / 酸化亜鉛 / イオン散乱分光 |
Outline of Annual Research Achievements |
ガスセンサーは工業原料や排気ガスに含まれるガスの検知に広く用いられており、近年では、環境エネルギー分野での高性能ガスセンサーの重要性が増している。ガスセンサーの性能向上には、異種元素のドーピングが有効であることはよく知られている。ドーピングによるセンサー特性の向上は、センシング材料表面に特有の活性サイトが出現する結果である。したがって、センシング材料の開発においては、そのような活性サイトを有する表面(ここでは活性表面と呼ぶ)の原子配列を同定することは極めて重要である。本研究では、低速イオン散乱分光と光電子回折・ホログラフィーを相補的に組み合わせ、活性表面の原子配列を精緻に同定する。これにより最終的には、産業応用に直結するガスセンサーの早期実現を目指す。 本年度では、最表面の原子配列が既知の酸化物半導体(ZnO極性面)の表面への光電子回折・ホログラフィーの適用の検討を開始した。またそれと平行して連携研究者と共同でZnOへのさまざまな異種元素のドーピングと、そのセンサー特性を調べた。その結果、タングステンをドープしたZnOにおいて優れたガスセンシング特性が見出された。このことから光電子回折・ホログラフィーを利用した表面構造解析を行うべき試料として、W-ZnOを選定した。そしてこのW-ZnOに関して、Spring-8のBL25SUを用いた光電子回折実験を2回行った。これらの実験で得られた結果は、既に予備的に行った低速イオン散乱分光による最表面構造解析の結果と符合した。すなわち、W-ZnO試料を加熱することでWは最表面に偏析し、この析出したWは表面第二原子層のZn置換サイトに位置することが明らかとなった。さらに、W-ZnO最表面は酸素で終端していることも明らかとなった。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
当初の計画では、低速イオン散乱分光による最表面構造解析の精度を上げるために、測定中に試料を保持する装置(マニピュレータ)を整備する予定であった。これに対し、実際にそのようなマニピュレーターを整備し、低速イオン散乱分光による高精度な原子配列解析が可能な表面分析装置の開発に成功した。 さらに当初の計画では光電子回折・ホログラフィーを利用した構造解析を行うべき試料として、表面活性に起因する優れたガスセンサー特性を示す試料を選定することとしていた。これに対し、連携研究者と共同でZnOへのさまざまな異種元素のドーピングと、そのセンサー特性を調べ、その結果、タングステンをドープしたZnOにおいて優れたガスセンシング特性を見いだした。そしてこのW-ZnO系を光電子回折・ホログラフィー実験の試料として選定した。 上記のように、当初の計画に沿って研究はおおむね順調に進展している。
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Strategy for Future Research Activity |
光電子回折・ホログラフィーの酸化物半導体への適用を広げ、低速イオン散乱分光との相補性を検討する。また低速イオン散乱分光による解析の精度を上げるために、測定系を改良する。具体的には、低速イオン散乱分光用ビームラインの排気系を改良し、作動排気特性を向上させる。ビーム強度は動作時の真空度に依存するため、この様な改良によってビーム強度の向上、つまり測定精度の改善が見込まれる。 さらに、前年度に行ったZnO極性面やW-ZnO系の光電子回折・ホログラフィーによる解析の検討を進める。具体的には、W-ZnO系において見いだされたWの表面偏析に関して、偏析したWの位置、欠陥構造、ガスセンサー特性との関係をより詳細に検討する。
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Research Products
(24 results)
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[Journal Article] Depth profiling analysis of solar wind helium collected in diamond-like carbon film from Genesis2015
Author(s)
K. Bajo, C. T.Olinger, A. J.G.Jurewicz, D. S.Burnett, I. Sakaguchi, T.T.Suzuki, S. Inoue, M. Ishihara, K. Uchino, R. Wieler, H. Yurimoto
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Journal Title
Geochem. J
Volume: 49
Pages: 559,566
DOI
Peer Reviewed
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[Presentation] 二次元光電子分光による、WドープZnO半導体の表面構造解析2016
Author(s)
深見駿, 鈴木拓, 安達裕, 渡邉賢, 坂口勲, 田口宗孝, 辻川大地, 吉田泰輔,橋本雄介, 李美希, 室隆桂之, 松下智裕, 松井文彦, 大門寛
Organizer
日本物理学会 第71回年次大会
Place of Presentation
東北学院大学
Year and Date
2016-03-19 – 2016-03-22
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[Presentation] 二次元光電子回折法によるWドープZnO単結晶の表面終端構造解明2016
Author(s)
深見駿, 鈴木拓, 安達裕, 坂口勲, 渡邉賢, 橋本由介, 岡本隆志, 田中一光,米田允俊, 太田紘志, 嶽太輔, 吉田喜紀, 室隆桂之, 松下智裕, 田口宗孝, 松井文彦, 大門寛
Organizer
3D活性サイト科学成果報告会
Place of Presentation
名古屋工業大学
Year and Date
2016-03-07 – 2016-03-09
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[Presentation] 酸化亜鉛薄膜のガスセンサ特性2015
Author(s)
安達裕, 渡邉賢, 齋藤紀子, 鈴木拓, 坂口勲, 大橋直樹
Organizer
第76回応用物理学会秋季学術講演会
Place of Presentation
名古屋国際会議場
Year and Date
2015-09-13 – 2015-09-16
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[Presentation] Measurement for a regolith particle recovered from asteroid Itokawa by Sputtered Neutral Mass Spectrometry with tunneling ionization2015
Author(s)
K. Bajo, I. Sakaguchi, T. Suzuki, S. Itose, M. Mtsuya, M. Ishihara, K.Uchino, M. Kudo, K. Nagao, Y. Seto, H. Yurimoto
Organizer
SISS-17
Place of Presentation
成蹊大学
Year and Date
2015-06-25 – 2015-06-26
Int'l Joint Research
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