2015 Fiscal Year Annual Research Report
限られたアミノ酸のみから原始タンパク質が構築できるか?
Publicly Offered Research
Project Area | Hadean Bioscience |
Project/Area Number |
15H01064
|
Research Institution | Kanazawa University |
Principal Investigator |
小田 彰史 金沢大学, 薬学系, 准教授 (50433511)
|
Project Period (FY) |
2015-04-01 – 2017-03-31
|
Keywords | 原始タンパク質 / 二次構造 / タンパク質フォールディング |
Outline of Annual Research Achievements |
本年度は、限られたアミノ酸のみを含むアミノ酸鎖をコンピュータ上でランダムに作成し、分子シミュレーションによってその立体構造を推定した。アミノ酸セットとしてはグリシン・アラニン・アスパラギン酸・バリンのGADVセットと、GADVのバリンをセリンに置き換えたGADSセットを用いた。これらのアミノ酸は原始地球環境下で非酵素的に合成可能であったと考えられており、地球上での生命の起源に関与するアミノ酸であると考えられている。シミュレーションの結果、GADVのみを含むアミノ酸鎖では二次構造を形成する能力がある程度確保できることが示された。GADSでは二次構造形成能は低いものの、水溶性を保ったまま何らかの立体構造を構築することが可能であることが示唆された。これらの結果は、限られたアミノ酸のみでもタンパク質として機能する高分子鎖が構築可能であることを示している。また、これらのアミノ酸鎖のアミノ酸残基をランダムにD-体に置き換えたペプチドについても作成したが、D-体を含有する鎖では二次構造形成能が著しく低下することが分かった。 これらの計算に先立って、分子シミュレーションが短いアミノ酸鎖の立体構造予測に使用できるかどうかのベンチマークテストについても行った。これまでに実験的に立体構造が解明されている小さいタンパク質に対して分子シミュレーションを行い、実験構造を再現できるかどうかについて評価を行った。その結果、20残基程度のタンパク質であれば少なくとも二次構造形成については再現できることが示された。従って本研究で用いた手法の妥当性が指示されたことになる。
|
Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本年度においては、アミノ酸を限定した場合の高分子鎖において二次構造がどれだけ形成されうるかを推定した。さらに限定アミノ酸セットを変えたときの二次構造形成能や水溶性の変化についても見積もり、原始タンパク質を構成する要素についての推測を行った。また、現在タンパク質を構成するアミノ酸のみならず、現存するタンパク質では構成要素と見なされていないD-アミノ酸についても鎖に含む場合を検討し、それらが生体の構成要素から除外された理由について考察した。これらの計算に際して、用いた手法の妥当性についても評価しており、研究結果の信頼性を確保するための操作も行っている。そのため研究はおおむね順調に進展していると考えられる。
|
Strategy for Future Research Activity |
今後の研究については、まず本年度の成果をふまえてさらに拡張していく予定である。限定アミノ酸セットについて、これまでに検討していないセット(例えばグルタミン酸を加えたセットなど)についても計算し、二次構造形成能を向上させるような組み合わせを探索する。また現在存在するタンパク質の用いていないアミノ酸についての検討も進め、現在の約20種類のアミノ酸がタンパク質形成に果たす役割について推定する。また、これまでに行ってきたランダムにアミノ酸をつないだタンパク質の計算に加え、現存するタンパク質を元にアミノ酸を減らして作成した人工タンパク質のシミュレーションも行う。このようなタンパク質は複数報告されているが、これらに対してシミュレーションを行うことでタンパク質としての立体構造および機能を確保するために必要な相互作用ネットワークを見出す。
|
Research Products
(25 results)