2015 Fiscal Year Annual Research Report
化学進化を促進する古代金属タンパク質の構築
Publicly Offered Research
Project Area | Hadean Bioscience |
Project/Area Number |
15H01066
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Research Institution | Osaka University |
Principal Investigator |
藤枝 伸宇 大阪大学, 工学(系)研究科(研究院), 助教 (00452318)
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Project Period (FY) |
2015-04-01 – 2017-03-31
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Keywords | 原始金属酵素 / 自己組織化ペプチド / 小分子活性化 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究では、ペプチドが本質的に持っている凝集特性及びその金属配位能に着目し、触媒活性や反応場としての機能性解明から、ペプチドや簡単なタンパク質をベースとする初期段階生命の形状や機能にアプローチし、当該領域がめざす「冥王代生命学」に新たな切り口を提案する。特に申請者は冥王代において比較的簡単に合成される小さなペプチドと金属イオンの接合による錯体触媒の存在が科学進化を大きく前進させたと考える。 本研究では、β-sheet構造を持つ小さなタンパク質に加え、100°C以上でも安定なアミロイド繊維を形成するオリゴペプチド(鎖長10以下)に対して金属結合部位を導入し、それらの金属結合能と触媒活性を確認する。特に、N、C末端それぞれにAspやHis等の金属配位能を持つアミノ酸残基を導入し、原始金属タンパク質の再現を図る。現代の天然金属タンパク質では未だ見られていないが、錯体化学の観点から見ると、高温下で反応を行えば、第五・六周期の遷移金属を含む種々の金属イオンがアミノ酸残基に結合すると期待される。また、冥王代における熱水等の極限環境における溶存金属の分布は我々の住んでいる温和な環境とは全く異なると考えられることから、様々な金属と設計したペプチド・タンパク質の組み合わせを試すことでその反応性発現機構を検討する。この観点から、β-sheet構造からなる単純なタンパク質を探し、代表例として用いる。不溶性のオリゴペプチドの凝集体と可溶性の短いペプチドおよびβ-sheetタンパク質を調整し、各種分光分析と反応性評価を行った。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
1: Research has progressed more than it was originally planned.
Reason
β-sheet構造を持つタンパク質としては114からなるキュピンタンパク質を選び、様々な金属イオンが結合できることを証明した。特に、第三周期の遷移金属(V, Cr, Mn, Fe, Co, Ni, Cu, Zn)だけでなく第四、五周期の重い遷移金属(Ru, Rh, Pd, Os, Ir, Pt)が結合し、タンパク質骨格を安定化することをしめした。また、それらの結晶構造を決定したところ、明確にアミノ酸残基に配位子非特異的な吸着ではないことが明らかとなり、冥王代における原始金属酵素の可能性を示した。 一方で、アミロイドタンパク質などに見られるコア配列(LVFFA)の末端にAsp, Glu, Hisなどを結合した6-9残基のペプチドを用いるとアミロイド形成が見られた。さらにこのアミロイド形成は二価の銅イオン添加により、促進され、かつESRスペクトルにより、主に特定部位に結合していることが明らかとなった。さらにマイケル付加反応等のC-C結合形成反応を加速することが明らかとなり、年度計画としては良好な進捗を示した。
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Strategy for Future Research Activity |
このように、本年度達成された結果をもとに次年度はさらに計画を進展させる。不溶性のオリゴペプチドの凝集体と可溶性の短いペプチドおよびβ-sheetタンパク質それぞれに対してさらに広範囲に検索を行う。それぞれの金属錯体のCO2, HCOOHの還元反応、CO2の水和反応やH2Oの光酸化反応など小分子の活性化反応にも挑戦し、立体選択性を比較しながら最小単位の古代金属酵素復元を目指す。鋳型効果(配列の再現性)を比較し、自己複製能の可否を判別する。これらに加えて、乳酸やアラニン(Ala)を例に取り、エステルおよびアミド結合形成能における立体選択性と鋳型効果に焦点を当て、ポリマー合成反応を検討する。ペプチド合成に用いるアミノ酸についてD体とL体の両者から合成したペプチドを用いて、その立体選択性の発現機構にアプローチする。さらにペプチド配列に含まれるアミノ酸(Gly, Ala, Asp, Val)を混合し、合成を行って配列の再現性を確認する。
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Research Products
(6 results)