2015 Fiscal Year Annual Research Report
生体組織の音響特性と構造的特徴の相互理解による質的迅速細胞診断
Publicly Offered Research
Project Area | Multidisciplinary computational anatomy and its application to highly intelligent diagnosis and therapy |
Project/Area Number |
15H01107
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Research Institution | Chiba University |
Principal Investigator |
山口 匡 千葉大学, フロンティア医工学センター, 教授 (40334172)
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Project Period (FY) |
2015-04-01 – 2017-03-31
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Keywords | 計測工学 / 超音波 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究では、申請者らがこれまでに研究開発しノウハウを蓄積してきた「細胞単位での生体物性解析」と、「組織構造単位または臓器単位での特徴解析」とを計算機モデルを介して「病理学的知見」と結びつけることにより、統合的な生体物性モデルを作成し、臨床応用において「非侵襲な細胞診断」を実現することを究極的な目標とする。特に本課題では、その中から「細胞レベルでの質的病理診の具現化」に特化し、断総合的生体物性モデルを介して薄切標本から音波のみで質的・形態的特徴を同時判定可能(または既存の病理検査結果から質的評価が可能)な新規の病理診断法を創出することを目的としている。 具体的には、主として肝臓を対象として、薄切標本において細胞レベルでの音響特性計測・解析を行い、同標本の病理診断結果と対応させて検討することで、単なる音響物性についての解析結果の積み上げではなく、組織種の違いや細胞変性と物性との関係性を踏まえた生体物性モデルを構築している。肝臓はマウス・ラットモデルをベースにしてNASHを軸にして検討を行った。NASH は疾患進行度に応じた線維化と多種の脂肪沈着を含むため、必然的に初期から重度の肝炎、肝硬変および脂肪肝が対象に含まれている。 解析結果において、生体組織の種別による音響特性の差異に加え、疾患に伴う細胞変性による音響特性の変化についても認められている。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
申請者が研究室に所有する、超高周波対応に改良した生体超音波顕微鏡システムを用いて、マウス・ラット肝臓の物性計測を行った。超音波の周波数は250 MHz とし、1 枚の標本について 4μm の空間分解能で二次元スキャンすることで広範囲について計測し、その結果から音速と音響インピーダンスを算出した。計測後の標本について、コントロールと脂肪肝はHE 染色、それ以外は Azan 染色またはMT 染色を施すことで、同一標本の物性分布と病理像を得ている。 対象とした肝臓は、コントロール、肝炎・肝硬変モデル、単純脂肪肝モデルおよび NASH モデルの四種類のマウス・ラットであり、コントロールは普通食、肝炎・肝硬変モデルについては四塩化炭素投与、単純脂肪肝モデルについては高カロリー食、NASH モデルはメチオニン・コリン欠乏食による飼育とし、マウスモデルは業者が、ラットモデルは研究室で作成した。また、研究を推進する中で、NASHモデルのマウスを安定して作成する別の手法が企業により公開されたことを受け、そちらのモデルマウスでの検討も追加で行っている。 本年度は、取得した二次元の音響特性分布像と病理像との位置関係を既存の画像処理法を用いて併せ込み、病理像上で確認できる細胞小器官の各構造や線維および脂肪組織がそれぞれ有する生体特性について音響特性分布像から読み取ることを試みた。その結果、肝臓の細胞組織であっても正常肝、脂肪肝、NASHおよび線維症の肝臓ではそれぞれ音響特性が異なることが確認された。
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Strategy for Future Research Activity |
二次元での検討結果を踏まえ、5 種の各モデルを三次元に拡張して新たなモデルを作成する。ここでいう三次元モデルとは、二次元モデルを空間的に連続配置したものではなく、標本作製時の薄切間隔などを考慮して、例えば散乱体サイズを算出する時点で三次元計算を行うことを意味している。 二次元像を基にした三次元像の再構成に関しては、本課題と同じ新学術領域において研究を推進している研究者と連携して、それらの新規提案技術を組み込むことも想定している。 作成された総合的生体物性モデル(解析データが増える毎に逐次更新される)を用いて、モデル作成に用いていない薄切標本の音響物性値から染色像で確認される細胞および構造の変性と形態的特徴を推定し、実際の染色結果を用いた病理検査結果と比較することで、モデルを用いた診断法の妥当性を検証する。同様に、染色結果を用いた病理検査結果のみを既知の情報として、モデルを介して音響物性値をブラインドで推定し、その結果について音響物性値の解析結果と比較することで逆方向の検証を行う。
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Research Products
(8 results)