2015 Fiscal Year Annual Research Report
内臓脂肪組織内の免疫空間ニッシェの攪乱とT細胞老化
Publicly Offered Research
Project Area | Analysis and synthesis of multi-dimensional immune organ network |
Project/Area Number |
15H01160
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Research Institution | Keio University |
Principal Investigator |
佐野 元昭 慶應義塾大学, 医学部, 准教授 (30265798)
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Project Period (FY) |
2015-04-01 – 2017-03-31
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Keywords | 細胞老化 / 肥満 / T細胞 |
Outline of Annual Research Achievements |
内臓脂肪における慢性炎症には、T細胞の量的変化だけでなく、質的な変化が関与していることが想定されるが、その分子メカニズムは解明されていない。我々は、高脂肪食負荷後にPD-1陽性の記憶型CD4 T細胞が増加、PD-1陽性の記憶型CD4 T細胞はオステオポンチンを大量に分泌し、加齢関連CD4 T細胞と同様な表現型を呈することを明らかにした。この結果は、PD-1陽性細胞を単なるT細胞疲弊した細胞としては片付けられず、SASPの表現型を持つ細胞老化した細胞であることを意味する。しかし、PD-1は抗原刺激によっても一過性に発現することが知られているし、細胞疲弊と細胞老化を見分けるマーカーではない。そこで、細胞老化したCD4 T細胞を見分ける特異的なマーカーを探索し、CD153を同定した。 CD153陽性細胞は、CD4 T細胞に限られ、Th2, Th17, Treg とは差別化できた。T-bet 陽性であることから、Th1 lineage の細胞との関連が示唆された。CD153陽性細胞の内臓脂肪へのadoptive transfer によって、内臓脂肪の慢性炎症と全身インスリン抵抗性が再現できたことから、肥満における内臓脂肪内でのT細胞老化が肥満に伴う慢性炎症とインスリン抵抗性の病態形成に深く関与していることが示唆された。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
1: Research has progressed more than it was originally planned.
Reason
肥満した内臓脂肪組織の慢性炎症には様々な免疫細胞が関与しているが、我々は、CD4 T細胞の細胞老化に着目して研究を行った。高脂肪食負荷後に内臓脂肪組織においてPD-1陽性の記憶型CD4 T細胞が増加、PD-1陽性の記憶型CD4 T細胞はオステオポンチンを大量に分泌し、加齢に伴って脾臓などの2次リンパ組織で増加する加齢関連CD4 T細胞と同様な表現型を呈することを明らかにした。抗体療法でPD-1陽性の記憶型CD4 T細胞を除去することによって内臓脂肪組織の慢性炎症と全身インスリン抵抗性が改善すること、PD-1陽性の記憶型CD4 T細胞を内臓脂肪組織にadoptive transfer することで通常食下で脂肪組織の慢性炎症と全身インスリン抵抗性を誘導できることから、PD-1陽性の記憶型CD4 T細胞の出現、すなわち、CD4 T細胞の細胞老化が内臓脂肪における慢性炎症が全身のインスリン抵抗性の病態に深く関与していることが明らかになった。さらに、PD-1は抗原刺激によっても一過性に発現することが知られているし、細胞疲弊と細胞老化を見分けるマーカーではない。我々は、細胞老化したCD4 T細胞を見分ける特異的なマーカーを探索し、CD153を同定した。
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Strategy for Future Research Activity |
(1)PD-1陽性の記憶型CD4 T細胞は、ヘテロな集団であり、アネルジーを起こしたT細胞や細胞老化を呈したT細胞が混在していると考えられる。PD-1とCD153がダブルポジティブであるCD4 T細胞集団には細胞老化を呈するCD4 T細胞が濃縮していることが明らかになった。PD-1とCD153がダブルポジティブであるCD4 T細胞集団の性質を詳細に解析する。 (2)B細胞の欠落したマウスでは、高脂肪食負荷による肥満を誘導しても、内臓脂肪の炎症は抑えられ、インスリン感受性も保たれる。我々は、B細胞の欠落したマウスでは、PD-1とCD153がダブルポジティブであるCD4 T細胞集団が出現しないことを見出した。この結果は、高脂肪食負荷によるT細胞老化にB細胞との細胞間相互作用が必要不可欠であることを意味する。この分子機序をさらにつめる。 (3)細胞老化の形質を示す記憶型CD4 T細胞集団は、オステオポンチンを大量に分泌する。オステオポンチンの内臓脂肪における慢性炎症における役割をオステオポンチンのノックアウトマウスを用いて解析する。
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Research Products
(9 results)