2015 Fiscal Year Annual Research Report
正確な24時間リズムを生み出す時計タンパク質の安定化と分解のメカニズム
Publicly Offered Research
Project Area | New aspect of the ubiquitin system : its enormous roles in protein regulation |
Project/Area Number |
15H01173
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Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
深田 吉孝 東京大学, 理学(系)研究科(研究院), 教授 (80165258)
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Project Period (FY) |
2015-04-01 – 2017-03-31
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Keywords | サーカディアンリズム / 生物時計 / CRY / タンパク質分解 / ユビキチン / USP7 / TDP-43 / UBE3A/E6AP |
Outline of Annual Research Achievements |
FBXL3とFBXL21は互いに最も近縁なF-box型E3リガーゼであるが、それぞれ、時計タンパク質CRYの分解促進と安定化という拮抗的な作用を示す。Fbxl3の遺伝子欠損マウスは、輪回し行動リズムの測定実験において、恒暗条件下での自律的な行動リズム周期が約28時間と野生型に比べて顕著に長くなる。その一方で、Fbxl3とFbxl21との二重欠損マウスを作製すると、この異常な長周期性が緩和され、約26時間という行動周期で行動する。興味深いことに、二重欠損マウスの一部は恒暗条件で飼育すると徐々にリズム性を失い、活動・休息の日周変動が観察されなくなることを2013年に報告した。我々は最近、この二重変異マウスの遺伝的背景をより均一にするためにC57BL6との交配を続けた結果、ほぼ全ての個体で行動リズムが消失することを見出した。このことから、FBXL3による分解とFBXL21による安定化というCRYに対する拮抗的な作用は、自律的な時計振動の維持に必須であることが判明した。今後、このリズム性の消失が個々のニューロンの細胞リズムが停止していることに由来するのか、各ニューロンの細胞リズムの脱同調によるのかを明らかにし、時計機構におけるCRYの分解と安定化の生理的役割に迫りたい。 また本研究では、FBXL3とFBXL21による拮抗作用のバランスを制御する分子の候補として脱ユビキチン化酵素USP7を同定した。また、CRYの新しい相互作用分子としてTDP-43を同定した。TDP-43の過剰発現はCRYを安定化するが、この安定化作用はFBXL3を同時に機能阻害することにより観察されなくなるため、TDP-43はFBXL3と拮抗的に、おそらくCRYのユビキチン化を介して安定性を制御していると考えられた。これに対してUSP7によるCRYの安定化は、FBXL3を機能阻害しても変わらず観察されたため、FBXL3だけでなく他のE3リガーゼによるCRYのユビキチン化を広くリセットする強力な制御機能を持つと考えられた。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
これまでFbxl3とFbxl21の二重欠損マウスの一部の個体において観察されていた行動リズムの減弱が、C57BL6との戻し交配を重ねた結果、産まれた全個体において観察された。これは、本研究の重要性をより強く示す知見と言える。今後、FBXL21によるCRYの安定化という新しいユビキチン化の生理作用の分子機序を明らかにすることができれば、広い研究分野にインパクトを与え得る。また、CRYタンパク質とのインタラクトーム解析により同定した脱ユビキチン化酵素USP7とTDP-43に対して、FBXL3との機能的な連関を明らかにすることができた。このように本研究はおおむね順調に進展している。
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Strategy for Future Research Activity |
FBXL21がCRYを安定化するメカニズムの解明を目指して研究を展開する。この目的に向けて、FBXL21によるCRYユビキチン鎖の結合様式を決定する。これと並行して、BMAL1やDBPなどの時計タンパク質の安定性制御メカニズムにも分子レベルで切り込みたい。
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Research Products
(8 results)