2015 Fiscal Year Annual Research Report
ユビキチン化fine-tuningによるDNA修復制御機構
Publicly Offered Research
Project Area | New aspect of the ubiquitin system : its enormous roles in protein regulation |
Project/Area Number |
15H01183
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Research Institution | Osaka University |
Principal Investigator |
中田 慎一郎 大阪大学, 医学(系)研究科(研究院), 准教授 (70548528)
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Project Period (FY) |
2015-04-01 – 2017-03-31
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Keywords | DNA修復 / DNA損傷応答 / 相同組換え / ユビキチン |
Outline of Annual Research Achievements |
DNA2本鎖損傷応答シグナルの伝達において、ユビキチン化は様々な役割を果たしている。ユビキチン化依存性シグナルのDNA修復制御における役割も最近解明が進みつつある。報告者はE3ユビキチンリガーゼRNF8・RNF168によるユビキチン化と脱ユビキチン化酵素OTUB2による脱ユビキチン化というユビキチン化に関連し、相反する機能によるfine-tuningが、DNA2本鎖切断修復経路選択(相同組換え修復(HR)を用いるか、非相同末端結合(NHEJ)を用いるかの選択)において重要であることを示してきた。この選択機構はDNA修復の中のかなり上流で機能している。一方、DNA修復の下流におけるユビキチン化と修復との関連は明らかにされてこなかった。また、細胞周期とユビキチン化fine-tuningとの関連も明らかでなかった。そこで、本研究では、相同組換え修復の中でも下流となるDNA end resection後のHRの制御について、E3ユビキチンリガーゼXや脱ユビキチン化酵素Yに注目して研究を実施した。DNA損傷の発生機序を複製依存的とし、研究対象をS期の細胞に限定した。脱ユビキチン化酵素Yを過剰発現させた細胞では、DNA end resectionは阻害されないにもかかわらず、その後におこるはずのRPAリン酸化が強く阻害された。また、E3である遺伝子Xの発現をsiRNAで抑制した場合にもRPAのリン酸化は強く抑制された。一方、その下流となるRAD51のDNA損傷部位への局在は遺伝子Xのノックダウンにより増強することが示された。これらの実験結果から、ユビキチン化によるHR制御機構が存在することが示された。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
E3ユビキチンリガーゼXに対するsiRNAを既報のものを含めて3種類を用いてすべて同様の結果を得た。siRNA抵抗性の遺伝子XおよびE3 deadに改変した遺伝子Xをexogenousに発現させ、アドバックを試みた。しかし、野生型の遺伝子Xはほとんど発現せず、表現系の回復を確認することができなかった。一方、E3 deadは大過剰に発現してしまい、発現量を生理的レベルにコントロールできなかった。様々なtagを試みたり、tagなしにする、ウイルスベクターの種類を変えるなど様々な手法を試みたりしたが改善することができなかった。原因としては、遺伝子Xが自己ユビキチン化により分解されるためと考察される。このため、現在得ている表現系が遺伝子Xのどのような機能に依存しているのかを評価することができていない。
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Strategy for Future Research Activity |
遺伝子Xを標的とする複数種類のsiRNAによって、全く同じ結果が得られていることから、off target効果を観察している可能性は低いと考えられる。しかしながら、遺伝子Xのノックアウト細胞を作成して実験を行ったり(致死であるという情報もある)、siRNAやshRNAとは異なる実験手法を用いて遺伝子Xをノックダウンした細胞で実験を行ったりするなどして、siRNAと同様の結果が得られるかを検証していく。また、遺伝子XがHRにおいて担う役割を解明するためにはアドバック実験が必須となるため、昨年度に新たに構築したウイルスベクターを用いてアドバックを再度試みる。最近、班内共同研究者の結晶構造解析により、E3ユビキチンリガーゼZがDNA損傷応答を制御する分子機構が、現在示されているモデルとは異なることを示すデータが得られつつある。そこで、この遺伝子Zに着目し、分子生物学的手法を用いて遺伝子Zの機能を既報よりも詳細に解析し、DNA修復との関わりについて明らかにしていく。
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Research Products
(4 results)