2015 Fiscal Year Annual Research Report
木部分化制御の厳密性を規定する細胞外シグナル統合の解析
Publicly Offered Research
Project Area | Plant cell wall as information-processing system |
Project/Area Number |
15H01226
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Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
近藤 侑貴 東京大学, 理学(系)研究科(研究院), 助教 (70733575)
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Project Period (FY) |
2015-04-01 – 2017-03-31
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Keywords | 植物 / シグナル伝達 / 発生・分化 |
Outline of Annual Research Achievements |
(1)TDIFシグナルとBRシグナルの木部分化制御におけるクロストークの解析 顕著な二次細胞壁肥厚を伴う木部細胞分化は、正の制御因子ブラシノステロイド(BR)そして負の制御因子TDIFによってコントロールされる。BRもTDIFシグナルも共通にGSK3キナーゼ群を標的とすることから、細胞内での両シグナルのクロストークを介して木部分化が厳密に制御されると考えた。まず、リガンドTDIFと受容体TDRの相互作用に関して立体構造を決定し、CLEペプチドと受容体の結合様式を明らかにした。更にこのTDIF-TDRシグナルの下流で働く、転写因子BESIに焦点をあて、木部分化制御におけるシグナル統合の解析を進めた。CRISPR/Cas9 を用いたBES1ホモログとの多重変異体の作出、そして相補実験の解析から、BES1が冗長的に幹細胞の木部分化に関与することを明らかにした。 (2)篩部分化系の構築と分化制御に関わる因子の探索にむけて 維管束幹細胞は木部細胞だけでなく篩部細胞を生み出す多分化能性をもつ。私たちの維管束分化誘導系において、篩部様の細胞が形成されることが明らかとなってきた。この新規篩管要素分化誘導系の確立に関して、論文を投稿した(Kondo et al., revised)。この系を用いた詳細な解析から、篩管要素分化が起こる際には①細胞分裂を必要とすること、②1次細胞壁が肥厚することを見出した。また、トランスクリプトームデータを用いたネットワーク解析から、実際に細胞分裂・細胞壁関連の遺伝子群が篩部分化過程で発現誘導されてくることが明らかとなった。今後は、木部道管細胞の二次壁形成機構だけでなく、篩管要素の細胞壁構築に関して、分子遺伝学アプローチが可能になることが期待される。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
当初の計画通り、新規に確立したシロイヌナズナ篩部分化誘導系が実際に有用なツールであることを示すことができ、他の研究者らも容易に使えるような分化系として近々発表できると考えている。これまで篩部研究は著しく遅れをとっていたことから、今後この分化系が篩部の研究コミュニティーに対して、大きな貢献をもたらすと期待される。一方で、細胞内のシグナル統合に関しては、BES1の遺伝的冗長性という問題から解析に時間がかかっており、本年度は、研究の基盤を整えるにとどまった。次年度、BES1を中心とした幹細胞のシグナル伝達の研究を中心に解析を進めていく。
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Strategy for Future Research Activity |
正の制御因子BRと負の制御因子TDIFのシグナル統合を担う転写因子BES1にフォーカスして研究を進めていく。これまでに作出したBES1関連の形質転換体を用いて、BES1に対する生化学的、順遺伝学的アプローチからシグナル統合に関わる因子の網羅的同定を目指す。また、新規に確立したシロイヌナズナ篩部分化誘導系とトランスクリプトームデータを駆使し、分化制御を担う因子だけではなく、細胞壁肥厚に関連する因子の単離・同定を目指す。
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Research Products
(13 results)