2015 Fiscal Year Annual Research Report
植物-植物相互作用における細胞外空間の可塑的動態
Publicly Offered Research
Project Area | Plant cell wall as information-processing system |
Project/Area Number |
15H01237
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Research Institution | Osaka Prefecture University |
Principal Investigator |
青木 考 大阪府立大学, 生命環境科学研究科(系), 教授 (30344021)
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Project Period (FY) |
2015-04-01 – 2017-03-31
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Keywords | Cuscuta / 細胞壁 / 維管束 / 寄生植物 |
Outline of Annual Research Achievements |
平成27年度の研究においては、第一に宿主茎組織中でのネナシカズラ寄生根伸長の時間的変化の再確認を行なった。計画立案の段階では、寄生根が宿主ダイズ茎組織に侵入する際に「一旦形成層より先に進んで、その後形成層まで後退して維管束と接続を作る」という観測をしていたが、今年度この寄生根の挙動について寄生部位横断切片を作製し、今年度購入した生物顕微鏡を用いて確認を行なった。すると、上述した挙動は典型的ではないことがわかった。典型的には、寄生根の先端が形成層付近で停止しその後寄生根先端が形成層に沿って茎の円周方向に拡がる、という挙動が見られることが明らかとなった。よって今後の研究はこの観測に基づいて遂行することにした。第二点目として、寄生部位における細胞壁構成成分の時空間的分布を6種類のエピトープ特異的抗体を用いて観測した。併せてフロログルシノール染色によってリグニン化の進んだ細胞壁の分布を観測した。この中で、フコシル化キシログルカン特異的抗体であるCCRC-M1抗体を用いたところ、寄生初期ではネナシカズラ茎の表皮に集積が見られたが、寄生後期では寄生根周辺の宿主ダイズの側後生師部の細胞壁に集積が見られた。また宿主細胞壁のリグニン化は、寄生根の先端側で抑制され寄生根の円周方向側で顕著に進むことが明らかになった。逆に寄生根内部の細胞壁ではリグニン化はほとんど見られなかった。第三点として、準備研究の段階で行なった寄生部位の寄生段階別RNA-Seqの結果の中から、細胞壁分解合成関連遺伝子と維管束形成関連遺伝子に関して、実際に発現しているcDNAのクローニングを進め、本年度購入したリアルタイムPCR装置を用いてRNA-Seqの結果の検証に着手した。維管束形成制御遺伝子の一部のものに関して、センスおよびアンチセンス両方の転写産物が生産されていることを明らかにした。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
当初計画で労力配分が大きいと考えられていた細胞壁構成成分の免疫染色による観測と、遺伝子クローニングと発現再確認がほぼ計画通りに進行していることに加え、それらの過程でさらに発展的に寄生機構を説明できると思われる作業仮説を設定できるような実験事実が得られたため。
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Strategy for Future Research Activity |
H28年度においては、まず細胞壁構成成分の免疫染色から、寄生根の侵入に伴って宿主ダイズの師部および木部の細胞壁構成が影響を受けている可能性が示唆されたので、この点に関する検証を進める。師部細胞マーカー遺伝子であるAPLやSEORを用いてフコシル化キシログルカン含有細胞壁が増加している細胞を特定し、寄生根侵入との因果関係を明らかにする。また木部リグニン化が抑制された変異体等を用いて、寄生根から木部リグニン化制御因子が出ている可能性を検証する。第二点目としては、維管束形成制御に関与するセンス転写物およびアンチセンス転写物の寄生根内部での発現場所を特定するとともに、LNAを用いたストランド特異的にRNA干渉をかける技術を用いて、アンチセンス転写物の寄生過程への必要性を検証したい。また更なる研究の効率化を図るためCuscuta campestrisとシロイヌナズナのペアからなる寄生系へ移行を進める。
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Research Products
(9 results)