2015 Fiscal Year Annual Research Report
MAMP受容体を介した細胞壁での防御応答機構
Publicly Offered Research
Project Area | Plant cell wall as information-processing system |
Project/Area Number |
15H01240
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Research Institution | Meiji University |
Principal Investigator |
賀来 華江 明治大学, 農学部, 教授 (70409499)
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Project Period (FY) |
2015-04-01 – 2017-03-31
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Keywords | 細胞壁 / 植物免疫 / 受容体 / キチン |
Outline of Annual Research Achievements |
植物と病原菌は細胞表層・アポプラストにおいて,侵入しようとする菌の検出と植物側の防御応答の起動を巡ってさまざまな形で攻防を行っている。我々はこれまで真菌類の代表的な微生物分子パターン(MAMP)であるキチンの断片に対するキチン受容体(CEBiP型 およびCERK1型)を同定し,その受容体の活性化機構を解明してきた。本研究では, 植物の細胞表層における植物の病原菌認識が分子レベルでどのように行われ,下流のシグナル伝達活性化につながるか,また,どのようにして細胞壁レベルでの防御応答に結びつくかを明らかにすることを目指している。本年度は,キチン受容体を中心に,受容体の細胞表層における局在性と動態を明らかにし,リガンドによる受容体活性化機構の解明を行った。そのため生物活性を保持した受容体の適正な蛍光タグの導入位置の探索および異種発現系を用いた目的タンパク質の発現とそれを利用した機能解析についての検討を行い,またリガンド依存的に受容体活性化の動的変動についても解析を進めた。 植物は菌の侵入に対して局所的に物理的障壁としてカロースを主成分とするパピラ形成することが知られている。我々はキチン誘導性カロース蓄積機構の解析が,パピラ形成のメカニズムの理解につながると考え,事実,我々はこれまでエリシター処理時のカロース蓄積を顕微鏡下で観察されるスポット像に基づいて定量的に解析するプログラムを開発し,この解析法による変異体を利用した解析から,キチンエリシター処理によるカロース合成は,病原菌感染時のカロース合成で中心的な役割を担うGSL5/PMR4によることを確認している。このキチンの認識が細胞表層レベルでの防御応答であるカロース蓄積にどのようにしてつながるのかを受容体下流でカロース蓄積制御に関わるシグナル伝達系上流因子の同定と機能解析を行うとともに,病原菌感染やエリシター刺激時の局所的カロース蓄積に関わる膜交通系因子の同定を目指す。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
キチン受容体の細胞表層における局在性、リガンドを介した受容体の動態の変化及びその制御の解析をおこなうために、ベンサミアナタバコ一過的発現系を用い、キチン結合活性を保持したCEBiP にGFPを導入する位置を決定した。またCEBiPと高い構造類似性をもち、キチン結合能をもつCEBiP2がCEBiPと異なる局在性を示すことにより異なる機能を持つ可能性を示し、植物のもつキチン防御応答系の意義の解明につながることが示唆された。しかしCEBiP-GFPを導入したCEBiP欠損変異体を用いた予備実験では、GFPの蛍光観察ができていない課題点が残っている。一方、シロイヌナズナでは、キチンオリゴ糖処理により、ユビキチン化されたCERK1の膜画分での一過的増加とその後の大幅な減少が見られることから、リガンドにより活性化されたCERK1の特異的なダウンレギュレーション或は再配置が起きている可能性が示唆された。 MAMP受容体直下でカロース蓄積を正に制御する因子として、E3ユビキチンリガーゼであるPUB4が見いだされた。pub4変異体の解析により、キチン誘導性活性酸素生成及びカロース蓄積の低下が確認されたが,これらに反してMAPKの活性化や防御応答関連遺伝子の発現誘導が亢進していることが明らかになり、植物ホルモンの関与が示唆された。また菌の侵入に伴うパピラ形成のモデルとして、キチン誘導性カロース蓄積機構を用いて検討を行った。さまざまな膜交通系因子変異体のキチン応答・カロース蓄積について検討した結果、RAB5に分類されるARA7とRHA1の変異体ではキチン誘導性のカロース蓄積が著しく低下するが、活性酸素生成などの他の防御応答指標には明確な影響が見られなかった。これらの結果から、特定のRAB5がキチン誘導性のカロース蓄積に関わる分子の輸送に寄与することが示唆された。
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Strategy for Future Research Activity |
キチン受容体の細胞表層における局在性、動態と機能の解析を行うため、種々の蛍光タンパク質のCEBiP受容体への付加および発現等の条件の再検討を行い、その情報に基づいて形質転換体を作製する。形質転換体における蛍光付加した目的受容体タンパク質の発現や生物活性の保持を確認後、受容体活性化及び機能の解析を進める。また活性化された受容体がどのようにダウンレギュレーションおよび再配置されるのかについての解析は、蛍光標識CERK1受容体を導入した形質転換体を作製し、リガンドの存在及び非存在下における受容体の動態解析、及び種々のユビキチンの特異抗体を用いた生化学的解析や阻害剤による薬理学的な実験を組み合わせて分析をおこなう。 受容体を介したカロース蓄積制御に関わる受容体下流因子の探索を継続するとともに、すでに同定されたカロース蓄積を正に制御するPBL27を含めたシグナル伝達系上流因子とMAPKカスケードの関係、カロース蓄積との関係を調べる。一方、菌の侵入に伴う物理的障壁的役割をもつパピラ形成のモデルとして、キチン誘導性カロース蓄積の制御過程に関与する膜交通系因子を明らかにするため、さまざまな膜交通系因子変異体でのキチン応答・カロース蓄積についてさらに検討を重ねる。またパピラ形成に関わるカロース合成酵素GSL5/PMR4および膜交通系因子の動態を観察するため、GFP融合タンパク質を発現するコンストラクトおよび形質転換体作出を行い、解析を進める。
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Research Products
(17 results)
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[Presentation] Identification and functional analysis of phosphorylation sites in Arabidopsis CERK2016
Author(s)
K. Suto, M. Suzuki, M. Shibuya, H. Shimada, N. Motoyama, S. Takahashi, I. Yoshida, S. Matsui, M. Nakashima, M. Ohnishi, K. Kito, Y. Desaki, H. Kaku and N. Shibuya
Organizer
第57回日本植物生理学会年会
Place of Presentation
岩手大学
Year and Date
2016-03-18 – 2016-03-20
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