2015 Fiscal Year Annual Research Report
C型肝炎ウイルスの組織親和性の解析
Publicly Offered Research
Project Area | Molecular basis of host cell competency in virus infection |
Project/Area Number |
15H01261
|
Research Institution | Osaka University |
Principal Investigator |
松浦 善治 大阪大学, 微生物病研究所, 教授 (50157252)
|
Project Period (FY) |
2015-04-01 – 2017-03-31
|
Keywords | フラビウイルス / 分泌性膜結合蛋白質 |
Outline of Annual Research Achievements |
C型肝炎ウイルス(HCV)の肝臓指向性を規定する重要な因子として、アポリポ蛋白質が知られており、発表者らはアポリポ蛋白質の両親媒性ヘリックスを介した小胞体膜結合性が、感染性粒子の成熟に重要であることを明らかにしてきた。一方、フラビウイルスのNS1蛋白質やペスチウイルスのErns蛋白質は小胞体由来膜への結合性を持つ分泌蛋白質である。本研究では、アポリポ蛋白質とNS1およびErnsがウイルス粒子の成熟過程において同様の機能を持つことを明らかにし、その進化学的意義を解明することを目的とした。 アポリポ蛋白質B(ApoB)およびApoEを同時に欠損させたHuh7細胞と293T細胞を用いて、HCVの粒子産生におけるアポリポ蛋白質とNS1、Ernsの役割を検討した。また、Ernsを欠損させた豚コレラウイルス(CSFV)を作製し、ペスチウイルスの粒子産生におけるErnsの機能をアポリポ蛋白質が代替しうるかを検討した。 Huh7細胞でのHCVの粒子産生はアポリポ蛋白質の欠損により有意に低下したが、デングウイルス等の様々なフラビウイルスのNS1や、CSFV等の様々なペスチウイルスのErnsの発現により、HCVの粒子産生は回復した。また、アポリポ蛋白質を発現しない293T細胞では、アポリポ蛋白質、NS1およびErnsの発現によってHCV粒子が産生された。以上の成績から、HCVの粒子産生において、NS1やErnsはアポリポ蛋白質と同様の機能を持つことが示唆された。 Ernsを欠損させたCSFVゲノムを導入したSK6では、ウイルスゲノムの複製は起こるものの粒子産生が認められなかったが、アポリポ蛋白質を発現するSK6細胞では感染性粒子が産生されたことから、ペスチウイルス粒子産生におけるErnsの機能をアポリポ蛋白質が代替しうることも示された。
|
Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
今回の検討によって、フラビウイルスの粒子産生において、アポリポ蛋白質、Erns、およびNS1が同様の機能を持つことが示唆された。ヘパシウイルスはフラビウイルスやペスチウイルスと異なり、分泌性ウイルス蛋白質を持たない。HCVがアポリポ蛋白質を高発現する肝臓に強い指向性を持つことを考慮すると、進化の過程で分泌性ウイルス蛋白質が不要になり欠失した可能性も考えられる。
|
Strategy for Future Research Activity |
ウイルスは様々な宿主因子を利用して、細胞へ侵入し、自分の遺伝子を増幅し、感染性粒子を量産する。当該領域の研究に於いて、種々のウイルスの組織親和性の決定機構を横断的に解析することにより、ウイルスの病原性発現機構の新しいパラダイムの発見に繋がることが期待される。このような考え方は今までにないものであり、新たな研究領域の創出につながると考えられる。
|
Research Products
(7 results)
-
-
-
[Presentation] Apolipoproteins and viral secretory glycoproteins participate in the infectious particle formation of Flaviviridae2015
Author(s)
Takasuke Fukuhara, Tomokazu Tamura, Mai Shiokawa, Chikako Ono, Satomi Yamamoto, Hiroyuki Mori, Takeshi Kurihara, Toru Okamoto, Hiroshi Aoki, Yoshihiro Sakoda, and Yoshiharu Matsuura
Organizer
第63回日本ウイルス学会学術集会
Place of Presentation
福岡
Year and Date
2015-11-22 – 2015-11-24
-
-
-
-