2015 Fiscal Year Annual Research Report
大型二本鎖DNAウイルス:多因子・多層制御による宿主感染機序の理解を目指して
Publicly Offered Research
Project Area | Molecular basis of host cell competency in virus infection |
Project/Area Number |
15H01263
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Research Institution | Okayama University |
Principal Investigator |
植木 尚子 岡山大学, その他部局等, 助教 (50622023)
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Project Period (FY) |
2015-04-01 – 2017-03-31
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Keywords | 大型二本鎖DNAウイルス / 感染メカニズム / RNA |
Outline of Annual Research Achievements |
当研究は、MimivirusやChlorovirusの例が知られる大型二本鎖DNAウイルス(Giant dsDNA virus, 以下G-DNAV)の感染機序の理解を目的とする。G-DNAVは、300-kb~1.2-Mbというウイルスとしては巨大なdsDNAをゲノムとする。ゲノム上には数百のORFと共に、長い遺伝子間領域、さらに10種類以上のtRNAコード領域等、新奇な特徴が見られる。また、G-DNAV遺伝子の相当数は、感染と宿主の死滅には必要とされないことが知られている。古典的には、ウイルスとは、小さなゲノムに限られた数の遺伝子を持ち、それらをフル活用することで宿主細胞機構を利用して感染・増殖を果たす『半生命体』とされてきた。G-DNAVは、この理解に相反するかのような存在といえる。当研究は、G-DNAVの3大特徴―多数の遺伝子、発現制御領域として機能可能な長い遺伝子間領域配列、ウイルスtRNA―によるウイルス生活環制御機構の解明を目指している。 私たちは、これまでに、HaVゲノム配列の解読を終了すると共に、その遺伝子アノテーションを完了した。さらに、HaVに感染するヘテロシグマのうち、感染によって死滅する株と、ウイルスに感染しても症状を見せず、低いレベルでウイルスを蓄積する潜在株におけるウイルス増殖の時系列的解析を終了した。これらの情報に基づき、ヘテロシグマの死滅株および潜在株におけるHaV感染過程のRNAseqを行い、宿主株による感染過程の比較を開始した。HaVと同じPhycodnavirusに属するクロレラウイルスPBCV1の感染過程では、大量のウイルス由来mRNAが生成することが知れれている。一方で、HaV感染した死滅株では、ウイルス由来mRNAの生成は極めて低く、ほとんどがnon-polyA RNAとして生成されることが示唆された。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
実験計画を立案した時点では、HaVの同族であるPBCV1感染過程において、大量のpolyadenylated RNAが生成されることから、HaVにおいても同様の結果を予想しており、そのためにpolyA selectionを行い、polyA-RNAに焦点を絞った解析を行った。しかし、予想に反して、HaV感染した死滅株では、ウイルス由来mRNAの生成は極めて低く、ほとんどがnon-polyA RNAとして生成されることが示唆された。私たちが得た結果は、PBCV1の同族であるHaVがPBCV1とは異なるメカニズムによって宿主への感染を確立することを示唆している。この知見は、当初予期していたものとは大幅に異なるものである一方で、大型ウイルスの多様性を示唆する知見として、価値のあるものと考えている。
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Strategy for Future Research Activity |
上記のRNAseqによる解析は死滅株については完了したが、一方で潜在株の解析はいまだ進行中である。同じウイルスが、異なる宿主株において異なるタイプのRNAを介して感染を確立する可能性についても念頭において、解析を完了する。また、死滅型=non-polyA RNAを生成する株においてのウイルス遺伝子発現の時系列解析については、マクロアレイ法を採用して引き続き解析を行う。 この点以外の解析については、当初の計画通りに研究を進める。
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Research Products
(2 results)