2015 Fiscal Year Annual Research Report
精神疾患のプレシナプスエンドフェノタイプの形成・維持機構の解析
Publicly Offered Research
Project Area | Unraveling micro-endophenotypes of psychiatric disorders at the molecular, cellular and circuit levels. |
Project/Area Number |
15H01296
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Research Institution | Nippon Medical School |
Principal Investigator |
小林 克典 日本医科大学, 医学部, 准教授 (10322041)
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Project Period (FY) |
2015-04-01 – 2017-03-31
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Keywords | 神経科学 / 脳神経疾患 / 生理学 / 行動学 / シナプス |
Outline of Annual Research Achievements |
本年度は主にプレシナプスエンドフェノタイプ(プレシナプス機能の障害)を示す新たなモデルマウスのスクリーニングを行った。生後3日~28日齢のマウスに薬物投与又は電気痙攣刺激を用いて神経興奮を増強又は抑制する処置を行い、その後に海馬スライス標本を作製して電気生理学解析を行った。電気生理解析においては、歯状回顆粒細胞を刺激して顆粒細胞-CA3錐体細胞間シナプスにおけるシナプス前機能を検討した。
1. GABA受容体及びAMPA受容体のアロステリックモジュレーターを用いて、薬物投与による発達期の神経興奮増強の効果を検討したが、明らかな効果が見られない、もしくは毒性が強過ぎてモデル作製には適さなかった。 2. 2週齢以上のマウスでは電気痙攣刺激が可能であることが分かったため、処置の時期をシステマティックに変化させたところ、プレシナプスエンドフェノタイプの誘導効果が3週齢から出現することを示唆する結果を得た。エンドフェノタイプの形成メカニズムを検討するため、3週前後における顆粒細胞の入出力シナプス伝達及びその修飾について詳細に検討したところ、入力シナプスにおける長期増強の誘導、出力シナプスにおけるモノアミン等の修飾作用などに変化が見られた。入力シナプスにおけるグルタミン酸受容体のサブユニット構成や発現量の変化を予想したが、現時点では明らかな変化は見られていない。 3. 塩素イオントランスポーターの阻害薬を用いて、より幼若な発達段階におけるGABAシナプス機能の変化の効果を検討したが、現時点では明らかな結果は得られていない。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
当初の計画通り、薬物投与や電気痙攣刺激などを用いて、発達期の興奮性操作の効果を検討し、臨界期と予想した2~4週齢の間で処置の効果が検出された。この時期に効果が検出されるかどうかが本研究の重要なポイントだったため、おおむね予定通りに進んでいると言える。効果が検出されなかった処置もあるが、本研究はモデルのスクリーニングからスタートしているため、全ての効果が検出される必要はない。
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Strategy for Future Research Activity |
今後は効果が検出されたモデルを用いてメカニズムの解析と行動解析を行い、表現型のレスキューを試みる。さらに、歯状回遺伝子発現を網羅的に解析し、本研究開始以前に同定した歯状回成熟異常モデルの歯状回遺伝子発現変化と比較する。シナプス成熟度の明らかな変化が見られるモデルのみに共通する遺伝子発現変化を抽出して、プレシナプスエンドフェノタイプのマーカーセットを絞り込む。同様のシナプス成熟度の変化を示すモデルでも遺伝子発現パターンは多様であるため、全てのモデルを用いて歯状回の遺伝子発現パターンの類似性を再検討し、遺伝子発現パターンによるモデルのグループ分けを行い、各グループを特徴付けるバイオマーカーセットを同定する。この解析結果に基づいて、同じグループに属するモデルが、同じ処置によって表現型レスキュー可能かどうかを検討する。以上の解析結果に基づいて、バイオマーカー解析に基づいた適切な表現型レスキューの適用が可能かどうかを検討する。
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Research Products
(2 results)