2015 Fiscal Year Annual Research Report
グリア細胞からみる精神疾患
Publicly Offered Research
Project Area | Unraveling micro-endophenotypes of psychiatric disorders at the molecular, cellular and circuit levels. |
Project/Area Number |
15H01300
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Research Institution | National Institute for Physiological Sciences |
Principal Investigator |
和氣 弘明 生理学研究所, 発達生理学研究系, 准教授 (90455220)
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Project Period (FY) |
2015-04-01 – 2017-03-31
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Keywords | ミクログリア / 統合失調症 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究では2光子顕微鏡による生体イメージングの手法を用いて、ミクログリアがシナプスに直接接触することでその活動を修飾することを示し、さらにその修飾機構によってシナプスの可塑的変化、シナプス後部(スパイン)の位置、数を制御し、機能的神経細胞間結合を規定し、神経回路活動の空間的制御に寄与することを明らかにすることを目的とする。そこで平成27年度は以下の研究を行った 炎症性疾患時におけるミクログリアの生理機能の喪失による学習障害 成熟動物におけるミクログリアのシナプス活動による作用を可視化するためにミクログリア特異的にEGFPの発現しているマウスの神経細胞にアデノ随伴ウィルスを用いて、GCaMPおよびtdTomatoを発現させた。覚醒下において2光子顕微鏡を用いて、大脳皮質運動野のミクログリア接触時のシナプス活動の変化を観察したところ、ミクログリア接触時にシナプスのカルシウム応答の頻度が上昇することがわかった。さらにミクログリアをLPSの腹腔内注入によって活性化させると接触によるシナプス活動の上昇は阻害されることがわかった。次にこの生理機能の神経回路活動に及ぼす作用を検証するためにミクログリアの複数の突起が複数のシナプスに同時に結合する可能性につき検証した。対物レンズにピエゾ素子を装着することによって高速の3次元イメージングを可能にし、観察を行ったところ、ミクログリアが同時に結合していることある神経細胞由来の樹状突起は接触していないペアよりも神経細胞活動の同期性が高いことがわかった。さらに神経回路特性を詳しく検証するためにLPSを腹腔内注入し、ミクログリアを活性化したマウスの大脳皮質運動野の2/3層の神経細胞集団の発火パターンを解析したところ、これらの群では正常群に比して神経細胞活動の協調性の距離依存性が喪失していることがわかった。(in prepaeration)。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
1: Research has progressed more than it was originally planned.
Reason
当初予定しているよりも研究が進捗したため順調に進んでいる。
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Strategy for Future Research Activity |
Schnurri-2 欠損マウスは中枢神経系において炎症反応の惹起が認められることがこれまでの研究でわかっている。そこでその炎症反応が惹起されることによる中枢神経系免疫機構の変化それに伴うシナプス、髄鞘維持機構の変化を捉える。 まずミクログリアの変化およびそれによる神経系の変化を捉えるために、ミクログリアの形態を可視化し、ミクログリアの活性化レベルを調べる。またミクログリアの活性化によるシナプス維持機構、髄鞘維持機構の変容を探るためにSchnurri-2 欠損マウスからミクログリアをMACS systemを用いて分離、抽出し、ミクログリア内におけるシナプス維持機構分子であるCX3CR1, C3Rなどの分子、貪食における鍵となる分子であるP2Yレセプターなどの発現を調べる。 さらに学習中の神経細胞集段の活動をGCaMP6fによって同一部位の同一細胞集団を、連日観察し、発火パターンを解析する。通常では発火細胞集団の特異性が高まると考えられるが、統合失調症モデルマウスではその特異性の低下とともに非特異的神経細胞の発火が起こることが予想される。またその際に同時に個体運動タイミング等を計測することによりパフォーマンスとの相関を検証する。さらにこれらの課題におけるシナプスの可塑的変化を検出するため、GFPをコードするAAVを同領域に注入し、連日観察することで構造的な可塑的変化の違いを正常群と比較する。 次に、単一シナプスレベルで学習課題下のシナプス強化がどのように変化するかを検討するため、シナプスのカルシウム応答をGCaMP6fで、形態的変化を赤色蛍光タンパクであるmCherryで、AAV によって大脳皮質運動野に導入し2光子顕微鏡にて覚醒下でのイメージングをシナプス集団に対し長期に行い、訓練下での応答するシナプスの数の増減および反応の安定性をシナプス形態と比較する。
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Research Products
(3 results)