2015 Fiscal Year Annual Research Report
軸糸微小管翻訳後修飾による軸糸ダイニンの運動活性変化
Publicly Offered Research
Project Area | Harmonized supramolecular machinery for motility and its diversity |
Project/Area Number |
15H01316
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Research Institution | Hamamatsu University School of Medicine |
Principal Investigator |
池上 浩司 浜松医科大学, 医学部, 准教授 (20399687)
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Project Period (FY) |
2015-04-01 – 2017-03-31
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Keywords | 生体分子 / 蛋白質 / 酵素 / 翻訳後修飾 / 分子モーター |
Outline of Annual Research Achievements |
本年度は当初計画していたマウス気管上皮から単離した繊毛軸糸を用いた軸糸ダイニン分子によるグライディングアッセイが計画どおりに進まず、ポリグリシン化修飾の有無による軸糸ダイニン活性の変化を解析できなかった。この遅れについては、次年度の研究計画を見直して対応する。 一方で、鞭毛軸糸ポリグルタミン酸化修飾の変化による鞭毛運動の変化を発見した。鞭毛軸糸のポリグルタミン酸化修飾が50%程度低下する酵素ノックアウトマウスを解析し、9本存在する軸糸外周微小管のうち特定の微小管で顕著にポリグルタミン酸化修飾が低下することを見出した。この特定の微小管におけるポリグルタミン酸化修飾の低下と符合するように、鞭毛の運動が当該微小管の位置でストールすることを見出した。これらの発見から、ポリグルタミン酸化修飾の低下により軸糸ダイニン活性のスイッチングが阻害されることが示唆された。この成果は、他の生物種で示唆された知見とは異なる現象を示すものであり、軸糸微小管の翻訳後修飾の変化により軸糸ダイニンの動作に多様性を生み出すことを研究対象とする本研究にとって、非常に重要なものとなった。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
研究実施計画で挙げたマウス気管上皮から単離した繊毛軸糸を用いた軸糸ダイニン分子によるグライディングアッセイが予想外に難航し、研究の核心部分であるポリグリシン化修飾の有無による軸糸ダイニン活性の変化を解析できなかった。この点では当初計画から遅れいていることになるが、一方で、ポリグルタミン酸化修飾の減少による軸糸ダイニン活性のスイッチング阻害を見出したことで、総合的には「やや遅れている」と評価した。
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Strategy for Future Research Activity |
本年度の計画で難航した点を改善し、in vitroでポリグリシン化した精製微小管を材料に実験系を組みなおす。具体的には以下の2点を実施する。 1)成体マウスの脳よりチューブリンを精製し、特殊なベクターを用いて哺乳類培養細胞で大量に発現させ精製したポリグリシン化修飾酵素とin vitroで反応させ、純粋なポリグリシン化微小管を調製する。対照には、酵素と反応させていない未修飾微小管を用いる。ガラス表面を繊毛虫Tetrahymenaより精製したnative軸糸ダイニン複合体、あるいは、TtBCCPと融合させた組換え軸糸ダイニン複合体でコートし、その上を上述の精製微小管を滑らせるグライディングアッセイを行う。 2)上記1)が順調に進んだ場合、ガラス表面に散布した精製微小管(未修飾、ポリグリシン化修飾)上でGFP融合組換軸糸ダイニン、あるいは、TtBCCP融合組換え軸糸ダイニンを移動させ、一分子の軸糸ダイニンの運動活性に対するポリグリシン化修飾の効果を検証する。 これらと並行し、前年度に得られたポリグルタミン酸化修飾による軸糸ダイニン活性のスイッチング制御に関する知見を学術雑誌に公表する。また、ポリグリシン化修飾によるダイニン活性の制御についても、本研究着想の基となったポリグリシン化修飾の消失による繊毛および鞭毛運動の亢進に関する知見を学術雑誌に公表する。
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Research Products
(4 results)