2015 Fiscal Year Annual Research Report
肺炎マイコプラズマの接着滑走マシナリーの微細構造解明と構成タンパク質の構造解析
Publicly Offered Research
Project Area | Harmonized supramolecular machinery for motility and its diversity |
Project/Area Number |
15H01337
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Research Institution | National Institute of Infectious Diseases |
Principal Investigator |
見理 剛 国立感染症研究所, その他部局等, 室長 (80270643)
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Project Period (FY) |
2015-04-01 – 2017-03-31
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Keywords | Mycoplasma pneumoniae / 肺炎マイコプラズマ / 細胞接着 / 接着器官 / P1 タンパク質 / 滑走運動 / 細胞骨格 / 蛍光タンパク質 |
Outline of Annual Research Achievements |
M. pneumoniae の病原性に必須な接着器官の表面には、細胞接着タンパク質(アドヘジン)複合体が多数存在しており、内部には細胞骨格様構造がある。アドヘジン複合体はP1 アドヘジン、P90、P40タンパク質からできている。また、接着器官の先端部分に存在するP30も細胞接着と滑走運動に必要である。これらのタンパク質の構造解析を進め細胞接着と滑走運動性のメカニズムを考察することが、本研究課題の目標の1つである。今回は、合成遺伝子を使用して大腸菌でP90とP40を大量発現させることに成功した。これで、細胞接着と滑走運動に必須なP1 アドヘジン、P90、P40、P30が全て大量生産可能になった。しかし、P90とP40は溶解性が低く、今後、可溶化と精製条件の検討が必要である。P1アドヘジンは高純度サンプルの大量調製が可能になっており、結晶化スクリーニングを進めているが、まだ結晶は得られていない。 一方、接着器官内部の細胞骨格様構造(core)についても研究を進めた。今回、coreの詳しい組成分析を行ったところ、MPN066、MPN332、MPN387タンパク質が新たな構成成分として同定された。また、分子量が約215 kDaのHMW2 タンパク質はcoreの主要な構成成分と考えられてきたが、HMW2 のN末端とC末端に蛍光タンパク質を連結して、その位置を観察するとHMW2 のN末端とC末端は、約250nm離れて存在していた。N末端は M. pneumoniae の菌体末端側に、C末端は基部側に位置していた。この距離はcore の長さとほぼ同じであり、HMW2 は、coreを貫いて並行に配置していると考えられた。Core は滑走運動の動力の発生、および、動力をアドヘジン複合体に伝える働きをしていると考えられている。Core の構造と機能の解明は M. pneumoniae の滑走運動性メカニズムの理解に大きな情報を与える。HMW2がcoreの中でどのようなfolding で存在しているかを解析することは、今後重要な問題になると考えられる。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
M. pneumoniae の接着器官の表面に存在し、細胞接着性と滑走運動性に必須な4つのタンパク質 P1、P90、P40、P30 の大量調製に成功した。しかし、P90、P40については、可溶化と精製条件について今後さらに検討する必要がある。P1についてはこれまでの結晶化スクリーニングでは結晶が得られていないので、条件を変えたスクリーニングをさらに進める必要がある。一方、接着器官内部の core構造について研究の進展が見られた。Core 構造の新たな構成成分として、MPN066、MPN332、MPN387 を同定した。また、蛍光タンパク質タグ法によって HMW2 がcore 構造の骨格となっていることを明確にした。今後、core 構造の構成タンパク質についても、大量調製や構造解析を視野に入れて研究を進める。
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Strategy for Future Research Activity |
本研究課題の大きな目標として、P1アドヘジンの立体構造解明がある。しかし、これまで、高純度に精製した組換えP1タンパク質を使用して結晶化スクリーニングを実施しても、P1結晶は得られていない。P1の結晶を得るため、さらにスクリーニングの条件を検討する。M. pneumoniae の臨床分離株の研究からP1には1型と2型があることがわかっている。1型と2型のP1では2つのドメインでアミノ酸配列が異なっている。これまで1型のP1について結晶化を試みてきたが、今後は2型のP1についても結晶化の検討を試みる。P1の結晶化がどうしても困難な場合は、総括班に支援を依頼し、電子顕微鏡観察などの方法によるP1タンパク質の構造解析を検討する。一方、接着器官内部の細胞骨格様構造(core)の研究として、HMW2 が欠損した M. pneumoniae を作製しているので、この株に遺伝子改変を行った HMW2 を導入し、その表現型を観察する一連の遺伝学的実験を行う。Core 構造の構築に重要なHMW2 のドメインを調べ、coreの内部でHMW2 がどのようにfolding されているかを考察する情報とする。また、HMW2 やHMW1 など、core 構造の構成成分についても組換えタンパク質の大量生産が可能か検討する。
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Research Products
(7 results)
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[Presentation] Structure and function of P1 adhesin, leg in Mycoplasma pneumoniae gliding2016
Author(s)
松本 優, 川北 祥人, 見理 剛, 森 茂太郎, 浜口 祐, 木下 実紀, 川本 晃大, 加藤 貴之, 難波 啓一, 宮田 真人
Organizer
日本細菌学会
Place of Presentation
大阪
Year and Date
2016-03-23 – 2016-03-25
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