2015 Fiscal Year Annual Research Report
抗癌剤により死滅した癌細胞に対する自然免疫応答の解析
Publicly Offered Research
Project Area | Homeostatic Regulation by Various Types of Cell Death |
Project/Area Number |
15H01381
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Research Institution | Nara Institute of Science and Technology |
Principal Investigator |
河合 太郎 奈良先端科学技術大学院大学, バイオサイエンス研究科, 准教授 (50456935)
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Project Period (FY) |
2015-04-01 – 2017-03-31
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Keywords | 自然免疫 / 細胞死 / 炎症 / 腫瘍 / 樹状細胞 |
Outline of Annual Research Achievements |
癌細胞に対する自然免疫応答の詳細を明らかにすることを目指し、死滅した癌細胞より放出される自然免疫応答を惹起する内在性リガンドの探索ならびに、それを認識する自然免疫受容体の同定を目指した。癌細胞から放出される内在性リガンドを同定するためスクリーニングを行った。様々な抗癌剤を癌細胞株(HeLa:子宮頸癌、LLC:肺癌、E0771:乳癌)に作用させ死滅させた後、培養上清をマウス骨髄由来樹状細胞へ移した。炎症性サイトカインIL-6の産生を指標としたスクリーニングを行った結果、トポイソメラーゼI阻害剤トポテカンで処理した癌細胞の上清中にIL-6産生を誘導する活性が認められた。マイクロアレイを用いた網羅的な解析を行ったところ、樹状細胞からはIL-6以外にもインターフェロンβやケモカインCXCL-10の発現が誘導されることが判明した。さらに、樹状細胞の表面上にCD86やMHC class IIの発現が誘導されることも確認した。これらのことから、トポテカンで死滅した癌細胞からは、樹状細胞活性化を誘導する何らかの内在性因子が含まれていると考えられた。次に、トポテカン処理した癌細胞の培養上清を熱で処理した場合においても、樹状細胞からのIL-6産生に影響はなかったことから、サイトカインのような蛋白質成分以外の関与が示唆された。また、これまで内在性リガンドとして知られているHMGB1の中和抗体を用いた場合でもIL-6産生に影響はなかった。以上のことから、脂質、糖鎖、核酸等の内在性因子の関与が示唆された。興味深いことに、E0771細胞から放出される内在性リガンドは代表的な自然免疫受容体であるToll-like receptor(TLR)ファミリー非依存的に樹状細胞を活性化したことから、未知の受容体システムにより認識されている可能性が示された。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
トポテカン刺激により死滅した癌細胞より自然免疫応答を誘導する未知の内在性リガンドが含まれていること、さらに乳癌細胞の場合、その内在性リガンドがTLRファミリー非依存的に樹状細胞を活性化することを見いだすことができた。また、この内在性リガンドは、HMGB1以外の未知の成分であり、脂質、糖鎖、核酸等が考えられた。また、この内在性リガンドは、IL-6以外にも抗腫瘍免疫の発動に重要な役割を果たすI型インターフェロンの産生を誘導した。さらに、予備的ではあるが乳癌細胞を移植したマウスにトポテカンを投与すると腫瘍の退縮とともに、CD8陽性キラーT細胞の浸潤を認めた。したがって、トポテカンは癌細胞を死滅すると同時に、内在性因子放出による自然免疫の活性化を起点とした抗腫瘍免疫の発動を促すことが考えられた。また、トポテカン処理により乳癌細胞から放出される内在性因子の認識に関わる自然免疫受容体としてTLR以外の受容体が考えられる。I型インターフェロン産生が誘導されることから、核酸が関与する可能性が強い。核酸認識には、RNA型ウイルスセンサーであるRIG-I-like receptors (RLRs)やDNA型ウイルスセンサーであるcGASが関わっている。既に、これら受容体あるいは下流シグナル伝達分子の欠損マウスを入手しており、トポテカンに対する応答性の検討を行っている。その結果、DNA型ウイルスセンサーの関与を示唆することができた。以上のことから、おおむね順調に研究が進展しているといえる。
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Strategy for Future Research Activity |
トポテカン刺激後に乳癌細胞内在性のDNAが放出され、これが樹状細胞活性化に関与することを示唆することができたことから、今後はDNAの種類(ミトコンドリアDNAか核内ゲノムDNAか)を特異的プライマーを用いたPCRにより判定する。また、自然免疫誘導活性を示すDNAの長さについても、フラクション化することにより検討を行う。さらに、IL-6産生もDNAにより制御を受けているのか同時に検討を行う。また、DNAセンサー経路に位置する制御因子を欠損したマウスに乳癌細胞を移植させた後にトポテカンを投与し、癌組織退縮や浸潤しているマクロファージ、樹状細胞、好中球、ヘルパーT細胞、キラーT細胞を含む免疫細胞の数と活性化状態を検討することで、これら経路の抗腫瘍免疫誘導における役割を明らかにする。トポテカン刺激後放出される因子が同定された場合、それらの合成核酸を用いて、まずin vitro で樹状細胞活性化誘導可能かどうかIL-6やI型インターフェロン産生を指標に検討を行う。活性化誘導が認められた場合、これらが実際に抗腫瘍免疫誘導可能なアジュバントとして機能するか癌細胞移植マウスモデルを用いて検討を行う。
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Research Products
(6 results)
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[Journal Article] IPS-1 differentially induces TRAIL, BCL2, BIRC3 and PRKCE in type I interferons-dependent and -independent anticancer activity.2015
Author(s)
Kumar S, Ingle H, Mishra S, Mahla RS, Kumar A, Kawai T, Akira S, Takaoka A, Raut AA, Kumar H.
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Journal Title
Cell Death Dis.
Volume: 6
Pages: e1758
DOI
Peer Reviewed / Open Access / Int'l Joint Research
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