2015 Fiscal Year Annual Research Report
緑膿菌の低酸素環境適応に関わる酸素高親和性呼吸酵素の機能解析
Publicly Offered Research
Project Area | Oxygen biology: a new criterion for integrated understanding of life |
Project/Area Number |
15H01393
|
Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
新井 博之 東京大学, 農学生命科学研究科, 助教 (70291052)
|
Project Period (FY) |
2015-04-01 – 2017-03-31
|
Keywords | 呼吸 / 微生物 / エネルギー代謝 / 酸化ストレス |
Outline of Annual Research Achievements |
(1) cco遺伝子群の発現制御解析 cbb3酵素複合体のサブユニットをコードする2個の完全遺伝子群(ccoN1O1Q1P1, ccoN2O2Q2P2)と2個の不完全遺伝子群(ccoN3Q3, ccoN4Q4)のうち、ccoN3Q3とccoN4Q4の転写を制御する調節因子を探索した。調節遺伝子の欠損株、および、相補株のプロモーターアッセイの結果から、ccoN3プロモーターは亜硝酸に応答するLysRタイプの調節因子、ccoN4プロモーターはシアンに応答するGntRタイプの調節因子によって制御されることを明らかにした。 (2) cbb3酵素複合体形成機構の解析 CcoQはcbb3酵素複合体のアセンブリーに関与すると推定されているが、その具体的な役割は不明である。緑膿菌の4個のcco遺伝子群にはそれぞれccoQ遺伝子が存在するため、cbb3酵素アイソフォームの形成にそれぞれのccoQ遺伝子産物が関与していると考えられた。CcoN1O1P1またはCcoN2O2P2のみを発現し、ccoQ1またはccoQ2を欠失した発現プラスミドを用いた場合には、シトクロムc酸化活性を示さなかったため、CcoQ1とCcoQ2は活性型酵素の形成に必要であることが示された。しかし、ccoQ1を別の発現プラスミドで相補した場合に活性が回復しなかったため、遺伝子クラスターの構造や発現順序が酵素複合体の形成に必要と予想された。 (3) ハイブリッド酵素の酵素学的解析 各ハイブリッドcbb3複合体アイソフォームを唯一の末端酸化酵素として発現する組換え菌株を用いて、呼吸のATP生産効率に関わるプロトン排出効率、および、酸素に対する親和性を調べた。いずれのアイソフォームもプロトン排出効率に大差は無く、エネルギー生産に関する機能的な差は認められなかった。また、いずれのアイソフォームも酸素に対するKm値が低く、高親和性酵素であることが示された。
|
Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
(1)については、当初の計画通りccoN3とccoN4プロモーターを制御する新規の転写調節因子を特定することができた。さらに、それぞれの転写調節因子のエフェクター分子が亜硝酸とシアンであることを特定した。この点については、当初の予定以上の進展が見られた。 (2)については、ccoQ遺伝子を欠失した発現プラスミドの構築に想定以上の時間がかかり、4個のccoQイソサブユニットのうち、2個の役割を調べるに留まった。その原因として、活性型酵素が発現しない場合には相補株が好気的生育できず、嫌気培養菌体での組換え効率が悪かったことが上げられる。この点を克服するために、キノール酸化酵素を発現して好気生育する菌株を宿主とし、シトクロムc酸化活性を指標として活性型cbb3複合体の形成をアッセイする実験系を開発した。 (3)については、当初の予定通りにプロトン排出効率と酸素に対する親和性を測定した。 以上のように、計画項目により進捗の差はあったが、全体としては概ね予定通りに進捗していると判断した。
|
Strategy for Future Research Activity |
(1) cco遺伝子群の発現制御解析 ccoN3とccoN4プロモーターを制御する新規の亜硝酸およびシアン応答転写調節因子について、それらが制御するレギュロンの解析、エフェクター認識機構の解析を行う。 (2) cbb3酵素複合体形成機構の解析 4個のcbbQがcbb3酵素複合体の形成に果たす役割について引き続き解析を行う。特に、CcoQ3とCcoQ4については、形成された複合体からCcoNサブユニットの置換に関わる可能性について検証を行う。 (3)各cbb3アイソフォームの機能と緑膿菌の表現型との相関 16種類のcbb3型酵素アイソフォーム、および、3種の低親和性酵素(aa3, bo3, CIO)の発現条件、および、それらの酵素学的特徴から予想される機能をもとに、各酵素を持つこと、あるいは、欠損することが、緑膿菌の表現型に与える影響を解析する。具体的な実験として、各酵素の遺伝子欠損株、および、各酵素を唯一の末端酸化酵素として発現する組換え菌株を用いて、活性酸素や活性窒素などのストレスや抗生物質に対する耐性、各種栄養源の利用性、バイオフィルム形成などの変化を調べる。特にcbb3型酵素アイソフォームについては、低酸素条件での緑膿菌の強靱化に寄与する可能性について重点的に解析を行う。
|
Research Products
(11 results)