2015 Fiscal Year Annual Research Report
細胞競合の哺乳類成長での役割と染色体異常症への治療応用
Publicly Offered Research
Project Area | Cell competition: a mechanism for survival of the fittest in the multi-cellular community |
Project/Area Number |
15H01486
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Research Institution | Shiga University of Medical Science |
Principal Investigator |
森 雅樹 滋賀医科大学, 神経難病研究センター, 特任准教授 (10602625)
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Project Period (FY) |
2015-04-01 – 2017-03-31
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Keywords | 細胞競合 / 臓器成長 / 心臓 / 肝臓 / 細胞死 |
Outline of Annual Research Achievements |
細胞競合が、哺乳類の成長過程で重要な役割を果たすかどうかは十分に理解されていない。ヒト成人は約37兆個の細胞から成り、多数の細胞の間に、同種の細胞であっても、遺伝子発現レベルや細胞状態に、細胞競合のトリガーになるような異質性(heterogeneity)が存在する可能性は高い。今年度は、Fucciマウスを用い、哺乳類の生理的成長プロセスにおいて細胞競合が果たす役割を解析した。Fucciシステムは、リアルタイム細胞周期リポーターシステムであり、増殖活性のある細胞を緑色蛍光色素(mAG-Gem(1/110)等)で視認できる。哺乳類での生理的成長における細胞競合を観察するため、Fucciマウスの各成長段階 (P0, P1, P2, P7, P14, P56)で肝臓および心臓を含む全身臓器の組織切片を作成し、細胞の増殖および細胞死について検討した。その結果、新生児期の肝臓および心臓において細胞死 (活性化型Caspase-3陽性) およびオートファジーを示唆する所見(Beclin-1陽性)が認められ、さらに心筋組織では増殖性のFucciシグナルを呈する細胞に隣接して細胞死マーカーが検出された。この結果は、若年の心臓では細胞間に何らかの異質性が存在して、それに基づいて細胞のセレクションが起こる可能性を示唆した。この細胞死を基盤となっている分子機構を解明するため、培養細胞系の実験システムを構築した。この系では、マウス由来の初代肝細胞およびヒト由来の培養肝細胞を用い試験管内で異質な細胞を共存させることにより、細胞間の競合の有無とその分子機序を解析するものである。同系において特定の変異を有する遺伝子により特異的な細胞死が誘導されることを既に見出しており、今後、この実験系において、哺乳類細胞の競合系における分子機構の解明に進む。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
研究計画において、「哺乳類の成長プロセスにおける細胞競合の解析」として、「Fucciマウスの導入と解析」、「P1 (生後1日目), P2, P4, P7, P14, P56における解析」、「全身臓器の解析」、「細胞死の解析 (活性型Caspase-3)」、「オートファジーの解析 (Beclin)」、「細胞死がどのような細胞種で起きるかの解明」を目標とした。今年度において、上記の項目は全て実験的に検証することができた。 さらに、「生理的細胞競合が隣接性を必要とするか」という項目については、死細胞と増殖性細胞が隣接するという結果が得られたが、これは予想を上回る興味深い結果であった。 また、Fucciマウスシステムについても、詳細な検討により、システムの持つ特性を理解することができ、計画において可能性のある一案として挙げていた皮膚および褐色脂肪組織での解析には適さないと判断し、さらに心臓が最良の解析対象臓器であることを同定できた。当初の予定通り、次年度において分子機構の解析の段階へ進むことができる。
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Strategy for Future Research Activity |
今年度の研究により、細胞競合を示唆する細胞死が心臓と肝臓で認められた。それが細胞競合によるものかどうかを検証する方法は、分子基盤を明らかにしてそれを操作することにより、現象として捉えられた細胞死が影響を受けるか試すことである。その目的に即し、今後は、分子基盤を詳細に検証できる細胞培養系での実験検証を行う。そのための実験系の樹立は本年度に既に完成しており、同細胞死現象の分子基盤の解明につなげる。
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Research Products
(5 results)