2015 Fiscal Year Annual Research Report
増殖する上皮細胞集団の力学が内在する自発的な細胞競合メカニズムの解明
Publicly Offered Research
Project Area | Cell competition: a mechanism for survival of the fittest in the multi-cellular community |
Project/Area Number |
15H01502
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Research Institution | Institute of Physical and Chemical Research |
Principal Investigator |
森下 喜弘 国立研究開発法人理化学研究所, 生命システム研究センター, ユニットリーダー (00404062)
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Project Period (FY) |
2015-04-01 – 2017-03-31
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Keywords | 発生動態 / 理論生物 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究では、『増殖する上皮細胞集団の力学が内在する自発的な細胞競合メカニズムの解明』を研究課題名とし、理論解析、数値シミュレーションによって、[課題1] 均一な細胞集団の増殖系が内在的に有するCell extrusion機構『中立性競合』の解明、[課題2]細胞競合という生物現象にMotivateされた新しい数理の展開を目的としている。
課題[1]に関して:本研究では、従来の生化学的・遺伝学的に不均一な細胞集団で生じる競合を「制御性競合(regulatory competition)」として、均一な細胞集団であっても増殖系が内在的に有する競合を「中立性競合(neutral conpetition)」として分類し、主に後者の中立性競合が起こるメカニズムを主に力学の観点から解析した。細胞の力学・増殖に関する様式が細胞排除率に与える影響を定量的に解析するために、細胞レベルのFitnessと組織レベルのFitnessの定義を提案した。得られた細胞特性と細胞排除率の関係性に基づき、組織の成長効率を向上させる新しいFeedback機構の提案を行った。また、細胞の力学特性がばらつき(表現型ゆらぎ)を持つ状況下では、よりFitnessの高い細胞が組織成長によって選択され、結果として組織レベルでのFitnessが発生過程を通じて向上していきうることを数値シミュレーションによって示した。この研究結果は制御性競合において、異なる細胞種間の力学特性の差がどのようにお互いを排除するかを理解する上での基礎情報を与えると考えられる。 現在この結果を論文にまとめており、近日中に投稿予定である。
課題[2]に関して:組織成長ダイナミクスと生態学におけるレプリケータダイナミクス(集団内における各種のシェアが種間相互作用を通じてどのように時間変化するかを表す方程式系)の関係性の一部が明らかとなった。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
上述のように、主要課題2つのうちの1つに関して結果がでており、論文としてまとめる段階まで来たため。
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Strategy for Future Research Activity |
今後は、上記の課題1に関して論文を投稿するとともに、課題2の理論を深めて論文投稿を目指す。
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