2015 Fiscal Year Annual Research Report
リボソームとトランスロコンの協調による新生鎖の膜組み込み機構の解明
Publicly Offered Research
Project Area | Nascent-chain Biology |
Project/Area Number |
15H01541
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Research Institution | University of Hyogo |
Principal Investigator |
阪口 雅郎 兵庫県立大学, 生命理学研究科, 教授 (30205736)
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Project Period (FY) |
2015-04-01 – 2017-03-31
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Keywords | 小胞体 / トランスロコン / 膜タンパク質 / リボソーム |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究では、リボソームとトランスロコンの協調による新生鎖の膜組み込み機構の解明を目指して、下記項目の研究を進めた。いずれもリボソームから伸長している途上のポリペプチド鎖「新生鎖」の振る舞いの解明に向けたもので有意な進展を見た。【1】合成途上のポリペプチド鎖の細胞質における滞留状況を定量的にかつ安定的に検出する手法を設定した。リボソームから伸長途上でも容易に構造形成し活性を発揮するウイルス(SFV)のカプシドプロテアーゼ(CP)を使って、このドメインが小胞体やミトコンドリアへのオルガネラ膜透過以前にフォールドできるかどうかを検討し、透過以前の細胞質での滞留を定量化に成功した。これによって、動物細胞小胞体の膜透過以前には、新生鎖はほとんど滞留しないことが明らかになった。一方、ミトコンドリアやペルオキシソーム膜透過以前に、CPはフォールドしプロテアーゼ作用を発揮することが明らかになった。これで、新生鎖の伸長と膜透過との共役程度を定量的に検出可能となった。【2】小胞体トランスロコンの疎水性鎖の扱い、特に脂質膜に移行しがたい程度の不十分疎水性配列( mH)の存在状況を明らかにした。mHセグメントは脂質層に移行できないにもかかわらず、トランスロコン主要構成因子Sec61aと相互作用でき、さらに後続の疎水性膜貫通配列の膜組み込みを許容できることを示した。さらに、トランスロコンに保持されたmHセグメントは水の存在する環境にあることを示した。これらは、トランスロコンにはmHセグメントを一過的に保持するが、膜透過チャネルトンネルとは異なる部位(第2部位と略称している)が存在することを示した。【3】膜タンパク質の新生鎖に結合し、小胞体標的化を抑制する作用因子の存在を実証した。ペルオキシソーム膜タンパク質の局在化研究に新しい考え方をもたらした。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
【1】CPを用いた透過挙動解析系の設定。カプシドプロテアーゼ(CP)が動物細胞、酵母細胞、大腸菌細胞いずれでもきわめて効率よく自己切断すること確認し、オルガネラ指向性シグナルを融合した場合にも活性は影響を受けないことを見出し、当初の計画の妥当性が確認された。その後、動物培養細胞でのオルガネラ局在を評価するため、細胞質とオルガネラ膜とを簡便かつ迅速に分離できる方法(ピーリング法と命名)を開発し、ミトコンドリア局在以前にフォールドできることを実証した。小胞体系に適応すべく、糖鎖付加型リポーター融合体を構築し、これも期待通りに稼働することを確認した。新奇な膜透過・フォールディングプローブとして有意義であることが確認され、論文発表した。発表後すぐに、海外の研究者から分与の依頼が届いている。【2】不十分疎水性配列(moderately hydrophobic segment, mH)の存在状況の研究では、トランスロコン因子Sec61aとの化学架橋実験は順調に進行し、考えられるほとんどの膜組み込み中間状態での挙動を追うことに成功した。水環境の検出にも成功し、トランスロコンの新たな機能部位の提案として評価されている。【3】新生鎖小胞体表的化抑制(ETS)については、まずその新奇概念を多様なデータで実証できた。綿密な改変導入によって特異配列が必要なことを示し、精製したETS-GST融合タンパク質による拮抗阻害作用から、作用因子の存在を確定した。化学架橋反応で作用因子の存在を確証した。これらは、膜タンパク質新生鎖に作用する因子として、新奇な概念を提案するものである。
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Strategy for Future Research Activity |
ここで確立したCP-フォールディングプローブを発展的に駆使して、小胞体トランスロコンの機能状態を定量的に評価し、①荷電配列の透過状況、②疎水性度の透過状況に対する効果、③トランスロコン関連因子(遺伝子)の効果を定量的に調べていく。これまで、この研究分野には、新生鎖伸長と膜透過との共役を確定できる方法論が存在しなかった。この実験系はそれを可能にするものとして期待される。現在、このプローブを駆使して、シグナルのアミノ酸配列と共役程度との関連を精査することに取り掛かっている。さらに、酵母細胞の関連遺伝子の一連の破壊株を入手し、研究展開の準備は整っている。この解析で、各因子がシグナル配列による標的化様式にどう影響するか、正荷電配列の認識にどう影響するか、疎水性配列の識別のどう影響するか、リボソームの保持にはたす役割はいかなるものか、などを定量的に解析できるものと期待する。③トランスロコンにおける新生鎖の動態解析を、mHセグメントを軸に展開する。mHは、脂質層に移行しないにもかかわらず準安定な状態でトランスロコンに保持される。この保持状況と、近接の因子接するトランスロコンチャネルの部位を特定する。
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Research Products
(13 results)