2015 Fiscal Year Annual Research Report
分離表象に基づく自己の心的状態モニタリングと他者の心的状態推定の発達モデル
Publicly Offered Research
Project Area | Constructive Developmental Science; Revealing the Principles of Development from Fetal Period and Systematic Understanding of Developmental Disorders |
Project/Area Number |
15H01580
|
Research Institution | Otemon Gakuin University |
Principal Investigator |
乾 敏郎 追手門学院大学, 心理学部, 教授 (30107015)
|
Project Period (FY) |
2015-04-01 – 2017-03-31
|
Keywords | 心的状態推定 / 視点変換 / 多種感覚統合 / 認知発達 |
Outline of Annual Research Achievements |
「自己の心的状態モニタリング」および「他者の心的状態推定」の認知機能を、自他分離表象に基づいた心的状態のベイズ推定として定式化を行った。まず、本研究に対して日本神経回路学会最優秀研究賞を受賞した(2014年度日本神経回路学会最優秀研究賞)。さらに本年度はこの定式化をより厳密な形で行うことができた。また、高次の誤信念課題を解く機能が言語の階層的処理を解く機能と同じ脳部位によるものかどうかを実験的に検討し、それらが異なるプロセスであることを明らかにした(岩渕,乾 2015)。 他者視点取得および視点変換の学習過程のモデル化と実験的検証(北大との共同研究)。他者視点取得時における脳活動をfMRIを使用して調べた結果、右TPJ(側頭頭頂接合部)の顕著な活動がみられたほか、右下前頭回弁蓋部や右EBA(有線外身体領域)の活動がみられた。これは私自身の仮説である視点取得に他者の状態を推定する機能がミラーニューロンによって実現され、それを用いてイメージの変換を行っているという仮説を強く支持するものである。また、正確に言えばTPJの活動部位は前TPJであり前島の活動も見られた。この結果はMars(2011)の解剖学的結合と一致するものである。
|
Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
1)視点取得課題を用い,自己視点(ミラーシステム)を抑制して他者視点(理論説心の理論ネットワーク)を必要とする際の2つのネットワーク問の動的な切り替え機構をfMRIを使って解明する.2)多種感覚と運動指令の統合機能をベイズ最適計画の枠組みで定式化し、側頭頭頂接合部(TPJ)のモデル化を行う.また時系列情報に対する予測機能を持たせることにより他者視点取得課題における同様の統合過程のモデル化を行う.3)他者の多様な行動特性の学習と行動意図を惟定させる行動実験およびfMRI実験を行い,他者行動の内部モデルの学習と意図推定を実現する脳内基盤を明らかにする.また、心の理論の発達過程に関する行動実験の結果をベイジアンネットワークによる意図推定モデルを用いて解析する。4)これまで構築してきた自閉症モデルをより精緻なものとするとともに発達の時間軸を考慮したモデルの検討をおこなう。 これらの課題に関してほぼ目標は達成された。ただし、1)のMRI実験の解析等はまだ問題が残されており、来年度の課題としたい。
|
Strategy for Future Research Activity |
28年度は、視点変換ネットワークに対して、理論と実験を並行して進め、学習を含めた視点変換のモデル化を完成させる.さらにこれを、自己所有感と自己存在感の統合による自己イメージのモデル化に発展させる。自他分離表象の形成と心的状態推定の発達過程のモデル化を、階層的な運動の順モデルと逆モデルの同時学習(Takemura & Inui,2011)の観点から定式化する.
|
Remarks |
受賞:2015年9月4日 日本神経回路学会最優秀研究賞 西尾 直也, 朝倉 暢彦, 乾 敏郎 (2014) 心の理論のベイジアンネットワークモデル.
|
Research Products
(10 results)