2015 Fiscal Year Annual Research Report
インタラクションを介した発達過程における外受容・内受容感覚の統合動的モデル
Publicly Offered Research
Project Area | Constructive Developmental Science; Revealing the Principles of Development from Fetal Period and Systematic Understanding of Developmental Disorders |
Project/Area Number |
15H01583
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Research Institution | Toyota Technological Institute |
Principal Investigator |
浮田 宗伯 豊田工業大学, 工学(系)研究科(研究院), 教授 (20343270)
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Project Period (FY) |
2015-04-01 – 2017-03-31
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Keywords | 発達障害 / 幼児計測 / 母子間インタラクション |
Outline of Annual Research Achievements |
発達障害の多様性を吸収したモデル化を実現するため,大きく分けて2種類の「幼児が他者に向ける注意や他者とのインタラクションの影響」を調査した. 1つめは,他者の振る舞いを注視する視線運動である.発達障害の多様な症状の1つに「他者の心を読み取る困難さ」がある.本調査では,発達障害者はどのような情報に注目(注視)して他者の意図を推論するのかをモデル化することを目標とした. 多様な発達障害の症状の中から、特徴的な性質を見つけ出すために、全被験者群から、発達障害群内で共通する注視パターンを持つ参加者群と,定型発達群内で共通する注視パターンを持つ参加者群を絞り込んだ.絞り込みは,注視パターンを特徴量とした機械学習(Support Vector Machine)によって実行した.この絞り込みにより,共通的な特徴に注目したデータ解析が可能になり,絞り込みをしない場合と比べて,発達障害群と健常者群の間でいくつかの注視項目において有意差を発見することが可能となった. 2つめは,母子間インタラクションにおける,幼児が母親の行動をどのように模倣するか,その模倣の繰り返しが幼児の運動・動作にどのように影響を与えるかの調査である. 従来の研究で計測・解析されてきた幼児の簡易な運動表現(例:リーチングにおける右手の座標だけ)とことなり,両手の手首,肘,肩の動きを統合的に解析することで,運動レベルでのインタラクション解析を目標とする.そのため,全身や上半身全体の動きの同時計測が必要になるが,幼児に対しては一般的な動作計測装置(例:モーションキャプチャシステム)を使用することが困難であるため,専用の着衣と計測手法を開発した.
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
雇用内定していたポスドク候補が,一身上の都合で母国に帰国することになってしまい,進捗に遅れが出てしまった.その結果,予算を次年度に繰り越す処理も行うこととなった. 研究実績の概要で述べた1つめの研究項目,他者行動の注視パターン解析においては,これまで明らかになっていなかった「他者が予想外の行動をとった場合でも,当初の行動予想,および,ヒトの動きよりもモノの動きに対して注視が集中する」という事象を発見した.これは,発達障害児が「目標指向な推論モデル」を持つことを示唆していると考えることができる. 2つめの研究項目,母子間インタラクションの解析においては,幼児のカラダ全体の動きを計測するシステムが開発できた.当初の研究方針では,画像情報に基づいた動き計測方も統合することも検討していたが,幼児が母子間インタラクションに集中できる環境整備などの理由から,余分な機器を計測環境に持ち込まないようにするため,幼児に着てもらう着衣に工夫を施すことで問題解決することにした. また,この幼児計測システムを開発する過程で,いくつかの母子間インタラクション課題をテストして,最終的に,1.動くビデオプロジェクション映像への指差し行動,2.音楽に合わせた手拍子,3.ボール遊びにおける投球動作,の3つを計測・解析対象とすることに決定した.
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Strategy for Future Research Activity |
1つめの研究項目,他者行動の注視パターン解析は,十分な成果が得られたこと,また,もともと本来の研究目標である母子間インタラクション課題に取り組む前に,コントロールされた解析しやすいデータで発達障害児の研究に触れるという事前検討課題であったので,ここまでの成果で終了とする. 2つめの研究項目,母子間インタラクションの解析は,今後,共同研究者である京大・明和研究室からの支援を密に受けつつ,解析に必要な数の計測データを獲得していく.目標データ数(参加母子ペア数)はN=20とする.
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