2015 Fiscal Year Annual Research Report
鳥類の羽毛内微細構造より発生する非虹色の構造色とその発生機構の多様性
Publicly Offered Research
Project Area | Innovative Materials Engineering Based on Biological Diversity |
Project/Area Number |
15H01603
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Research Institution | Yamashina Institute for Ornithology |
Principal Investigator |
森本 元 公益財団法人山階鳥類研究所, その他部局等, 研究員 (60468717)
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Project Period (FY) |
2015-04-01 – 2017-03-31
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Keywords | 鳥類 / 構造色 / 羽毛 / 発色 / 羽枝 / 小羽枝 / バイオミメティクス / 生物規範工学 |
Outline of Annual Research Achievements |
生物と工学の学際的研究分野である「バイオミメティックス(生物規範工学)」の一分野である「構造色」の研究を行った。鳥類の構造色は、昆虫や魚類とは異なる微細構造で発色することが知られている。本研究は、このユニークな鳥類型の構造色の中でも、非虹色の構造色に着目する。その発色の源である羽毛内の微細構造について、色が異なる複数の鳥種を対象に色と羽毛構造の関係を調査し、構造色発色の基盤情報をカタログ的に充実させる。これは「色彩に影響する羽毛内の微細構造の変化」と「それに伴う色の変化」の関係性を明らかにする研究であり、鳥類における非虹色の構造色の発色メカニズムを解明することを目的としている。 2年計画の1年目である本年度は、1) 野外での野鳥からの羽毛サンプルの収集と、2) 分光測定・顕微鏡計測手法の確立、3) 特定種における羽毛内微細構造の解明、に重点を置き研究を進め、4)その他の活動も実施した。 1)のサンプリングについては、野外からの材料(羽毛)の採集に加えて、飼育鳥からの羽毛の採集を実施した。 2)分光測定・顕微鏡計測手法の確立では、実験装置を構築し羽毛の微小範囲測定による色彩評価手法をほぼ確立できた。 3)本年度は、採集した羽毛の中でも飼育個体での特徴的な発色(構造色の出現と色変化)に着目して、羽毛内微細構造と構造色発色に関する生物学的研究を実施した。その成果について複数の学会発表を行った。 4) 本研究の代表者は、次年度に本領域研究(生物規範工学)および国立科学博物館が主催者となって上野国立科学博物館にて開催されるバイオミメティクス研究の一般向けの展示企画展である「生き物に学び、くらしに活かす―博物館とバイオミメティクス」にて、鳥類部門の展示担当者として、同領域の複数のメンバーと連携し準備にあたった。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
1)サンプリングについては、野外での野生鳥類からの羽毛採取では、計画以上に進展した鳥種がある一方で、捕獲の不調により羽毛採取ができていない種があった。また、飼育鳥の特徴的な羽毛については、動物病院の協力を得て予想以上に順調に作業が進んだ。以上、本項について計画以上に研究が進んだ面と計画通りでない両面があった。総合的には予想の範囲内であり、順調に進展したと評価できる。 2)羽毛の微小レベルに着目した色の定量的な計測・分光測定技術を確立すべく、計測装置の構築と技術開発を試み、試行錯誤の結果、羽毛を微細スケールで計測するための基本的な測定技術をほぼ確立した。また、走査型電子顕微鏡分析においては、本研究に必須である羽毛の内部構造の観察を実施する為の断面観察手法を確立した。いずれも順調に進展したといえる。 3)これらの測定技術を適用し、特徴的な構造色発色を示す飼育鳥と野鳥の羽毛を対象として、羽毛内微細構造解明のための研究を集中的に実施した。これらの研究結果について、複数の国内学会発表と国際学会発表を行った。さらにバイオミメティクス書籍への執筆、および関連論文を執筆し投稿した。本項については、計画以上に進展できた。 4) その他:バイオミメティクス研究の成果を社会還元するために、本領域と国立科学博物館などが主体となり、2016年度にバイオミメティクス展「生き物に学び、くらしに活かす―博物館とバイオミメティクス」展を国立科学博物館(東京都上野)にて実施することとなった。この展示担当者4名中の1人(鳥類展示担当)として、本領域の研究者と連携して準備にあたった。得に鳥類の発色に関するバイオミメティクス研究の展示を担当した。加えて、こうした1-4の活動を通じて、領域研究者と新たな共同研究に発展しつつあることも新たな成果である。これらについては、当初の計画以上に進展したといえよう。
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Strategy for Future Research Activity |
本研究は概ね順調に進展しているだけでなく、当初の計画以上に進展している部分もある。次年度においては、この流れを加速して、本研究の目的である鳥類の非虹色構造色発色の基本メカニズムを概観する研究成果へと結びつけたい。 以下、各項目について詳述する。 1) サンプリングについては、引き続き、野外での野鳥からの自然状態での羽毛採集を重視し、前年度に未採集のサンプルの回収に重点を当てる。 2) 既に分析中の特定種に関する羽毛の分析をさらに進める。加えて、追加採集する他種についても同様に分析を進める。また、進行中の分析結果についての成果を論文として発表する。 3) 本領域(新学術領域・生物規範工学)内外の研究者と協力して学際的な研究を推進する。初年度に発展した協業内容を、次年度に成果発表に結びつける。 4) 社会へのアウトリーチ活動を重視し、国立科学博物館におけるバイオミメティクス展「生き物に学び、くらしに活かす―博物館とバイオミメティクス」の実施や、他の積極的な社会への情報発信を通じて、本研究成果の社会還元に努める。
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Research Products
(5 results)