2015 Fiscal Year Annual Research Report
操作者の身体特性に自動適合する電動車椅子の適応走行制御システムの開発
Publicly Offered Research
Project Area | Cognitive Interaction Design: A Model-Based Understanding of Communication and its Application to Artifact Design |
Project/Area Number |
15H01623
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Research Institution | National Rehabilitation Center for Persons with Disabilities |
Principal Investigator |
硯川 潤 国立障害者リハビリテーションセンター(研究所), 研究所 福祉機器開発部, 研究室長 (50571577)
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Project Period (FY) |
2015-04-01 – 2017-03-31
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Keywords | 電動車椅子 / ライフログ / 走行評価 / ジョイスティック / 操作量 / 実生活環境 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究では,電動車椅子の安全かつ快適な操作を支援するために,時々刻々と変化する搭乗者の身体特性・状態を認識し,その結果に応じて適切な走行制御値を設定できる,電動車椅子の適応走行制御システムの開発を目的としている.本年度は,搭乗者―車椅子―走行環境間のインタラクションの動的特性を把握し,開発する制御システムの設計要件を明確にすることを試みた.その結果,以下の成果を得られた. i) 長期ライフログを用いた操作特性の定量分析:これまでに開発した電動車椅子ライフログシステムを用いた実生活環境における長期的な走行動態の計測データを用いて,搭乗者が路面状態を認識し,自身の身体特性に合わせて車体挙動を調整する様子を定量的に把握した.具体的には,車体加速度とジョイスティック操作量を統合的に考慮することで,搭乗者が段差や障害物といった路面の危険性を認識している状態を検知できることが分かった.また,2週間以上にわたる同一区域の走行動態のばらつきを評価することで,通行者などの動的な走行阻害因子への反応を検知できた. ii) 搭乗者の認識を反映するために必要な操作情報量の推定:経時的に変化する搭乗者の環境認識を,車体挙動に反映させるために必要な操作情報量を推定するために,ジョイスティック入力のサンプリング周波数と分解能を可変させられる試験機を製作し,走行評価を行った.その結果,操作情報量を大きく削減した場合でも,搭乗者が数回の試行でその変化を適切に認識し,最適な操作戦略を選択し得ることを確認できた.
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
実環境での長期計測データの分析から,先行研究では得られていなかったジョイスティック操作情報を用いた搭乗者の環境認識評価を達成できた.このような操作情報を考慮した走行評価は,世界的に見ても新規性の高いアプローチであり,車椅子と搭乗者のインタラクションに関する重要な知見を提示できた.これは,本研究で目的とする適応走行制御構築に向けての,重要な設計基盤となる成果であり,初年度の目標を十分に達成できたと考える.また,操作情報量を可変させられる試験機の開発を完了し,搭乗者と電動車椅子間のインタラクションに介入するための基礎データを収集できたため,次年度には,より多くの入力情報を用いた適応走行制御システムの開発と評価に,速やかに移行できるものと考える.また,今年度開発した試験機は,同制御システムのテストベッドとしても活用可能である.
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Strategy for Future Research Activity |
前年度に得られた知見に基づき,適応走行制御アルゴリズムを開発し,有用性を評価する.適応走行制御アルゴリズムには,身体特性に応じたフィードフォワード (FF) 部に加え,身体状態を最適化するフィードバック (FB) 部を実装する.さらに,両アルゴリズムを実装した電動車椅子を試作し,走行実験を通じて操作性の変化を評価する. (1) 適応走行制御アルゴリズムのフィードバック制御部:走行・操作ログにもとづいて推定される身体状態を監視し,走行制御設定値を調整する.単純に車椅子の運動性を落とすだけでなく,探索的に制御設定値を上下させ,身体状態が悪化しない最大限度まで運動性を高めることを目指す.なお,最適値探索時の制御値範囲は,身体特性に応じて FF 的にデータベースから算出される仕様とし,安全性を担保する. (2) アルゴリズムの実装と動作検証:構築したアルゴリズムを実装した電動車椅子を試作し,健常被験者による試走を通じて制御設定値などの妥当性を確認する.さらに,緩やかに変化する身体特性と,短時間に変化する身体状態への適応を両立させるために,FF・FB 制御部それぞれの時定数を実験的に最適化する. (3) 試用評価による操作性向上の検証とインタラクション変化の評価:車椅子ライフログを実装した自身の電動車椅子と,試作機との走行結果を比較する.走行・操作ログやアルゴリズム内部の制御ログなどを検証することで,本システムの介入が車椅子-搭乗者間のインタラクションにもたらした変化を同定し,制御システム設計への指針として知識化する.
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Research Products
(2 results)