2015 Fiscal Year Annual Research Report
リシール細胞技術を用いた複数タンパク質の細胞内導入法とその局在化法の開発
Publicly Offered Research
Project Area | Novel measurement techniques for visualizing 'live' protein molecules at work |
Project/Area Number |
15H01631
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Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
村田 昌之 東京大学, 総合文化研究科, 教授 (50212254)
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Project Period (FY) |
2015-04-01 – 2017-03-31
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Keywords | バイオテクノロジー / 蛋白質 / 組織・細胞 |
Outline of Annual Research Achievements |
われわれは、細胞膜を透過性にして細胞質交換を可能にした「セミインタクト細胞リシール技術」を開発し、細胞内への生体物質導入法や導入した物質の様々な細胞内生命現象への影響などを光学顕微鏡下で可視化解析するシステムを構築している。この細胞内操作システムは、多種類のタンパク質成分や膜不透過性の(天然)化合物を、同時に定量的に細胞内に導入することが可能であり、かつオルガネラや細胞骨格の構造とトポロジーが保持されているため、導入されたタンパク質(群)の様々な動的平衡状態を「真の細胞環境内に近い状態で」計測できる。今年度は、in cell NMR測定に必要と思われる浮遊状態の細胞(基質からトリプシン処理により遊離させたHeLa細胞、T細胞系の株化細胞や個体から調製した血球系細胞など)をターゲットにしたリシール細胞法の基本プロトコルを作成した(ゲル包埋型バイオリアクターを利用したin cell NMR測定への応用を目指す)。この他、(1)導入物質の分子量の多様化、 (2)導入物質の細胞内での機能解析系の構築などに加え、リシール細胞に導入する細胞質の調製法としてできるだけ大量の細胞から均質な細胞質を調製する手法開発など、リシール細胞技術を、多様な性質と分子量のタンパク質・膜不透過性物質の細胞内導入に利用するための基本的プロトコルと、導入したタンパク質・膜不透過性物質の細胞内機能解析のための汎用的解析システムを構築した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
今年度は、in cell NMR測定に必要と思われる浮遊状態の細胞(T細胞系のEL4株化細胞や個体から調製した血球系細胞など)に対するリシール細胞法の基本プロトコルを作成した。具体的には、主に遠心法を用い浮遊細胞のセミインタクト細胞化とリシール操作を行い、作成したリシール細胞の正常性の保持を主に細胞のリシール直後の生存率や増殖率を指標に検討し、高生存率・増殖率を保持できるリシール法を構築した。また、基質付着性細胞(HeLa細胞など)をトリプシン処理にて基質から浮遊状態にし、細胞質導入後にリシール操作を加え、再び播種し基質に付着・生育させ、その生存率と細胞増殖率を同様に検討することで、付着性細胞のリシール法の基本プロトコルを作成した、これら成果は、in cell NMRに使用されるゲル包埋型バイオリアクターの応用を目指すものである。この他。(1) 導入物質の分子量の多様化:機能性ペプチド・核酸(~10kDa)からIgG分子(~150kDa)までの様々な膜不透過性物質を高効率で導入するためのリシール細胞法及びその改変法を開発した。(2)導入物質の細胞内での機能解析系の構築:リシール細胞の利点の一つに、導入されたタンパク質やペプチド、または、それらとともに導入された低分子化合物などが様々な細胞機能に与える影響を解析できることがある。今年度は、生命活動に関わる情報伝達系として中心的な役割を果たすキナーゼネットワークに焦点を絞り、導入物質がキナーゼネットワークに与える影響を定量的に解析するプロトタイプ解析系を構築した。それは蛍光顕微鏡とその画像解析手法を組み合わせた単一細胞のキナーゼ活性測定法である。これを。従来の平均的なキナーゼ活性を定量化できる生化学的手法(~100,000個の細胞からの平均値)と組み合わせることで、信頼性のある細胞内キナーゼ活性の解析が可能となった。
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Strategy for Future Research Activity |
平成27年度までに、「細胞環境下でのタンパク質分子の動的構造測定技術」における細胞内導入法として、「リシール細胞法」の基本プロトコルを構築できたと考えている。また、そのプロトコルで作成されたリシール細胞の増殖率や本来の細胞機能の保持力なども形態的解析を中心に確認できた。平成28年度は、このリシール細胞の機能保持力をさらに生化学的・生物物理学的手法を駆使して確認するとともに、これまでに確立した手法・条件を基に、予定していた「解析標的タンパク質の細胞質・オルガネラ・核内の特定遺伝子座やドメインへの局在化法の開発」を行う。特に、オルガネラターゲティングとしては、細胞の代謝環境制御に重要な役割を果たすミトコンドリアターゲティングシステムを中心に開発を行い、また、核内移行シグナルを付加した制御性のタンパク質核内局在化法の開発と特定遺伝子座へのタンパク質の局在化法としてCRISPR-Cas9システムの応用などを試みる。そして、昨年度、予備的な研究結果を既に得ている「病態細胞質」(例えば、糖尿病態細胞質など)の導入による細胞内導入タンパク質の局在や機能変化の解析法開発を試みる。
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Research Products
(10 results)
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[Journal Article] Yip1A, a Novel Host Factor for the Activation of the IRE1 Pathway of the Unfolded Protein Response during Brucella infection2015
Author(s)
Taguchi, Y., Imaoka, K., Kataoka, M., Uda, A., Nakatsu, D., Horii-Okazaki, S., Kunishige, R., Kano, F., Murata, M.
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Journal Title
PLOS Pathogens
Volume: -
Pages: -
DOI
Peer Reviewed / Open Access
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[Journal Article] L-cysteine reversibly inhibits glucose-induced biphasic insulin secretion and ATP production by inactivating PKM22015
Author(s)
Nakatsu, D., Horiuchi, Y., Kano, F., Noguchi, Y., Sugawara, T., Takamoto, I., Kubota, N., Kadowaki, T., Murata, M.
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Journal Title
Proc. Natl. Acad. Sci. USA
Volume: -
Pages: -
DOI
Peer Reviewed / Open Access
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