2015 Fiscal Year Annual Research Report
ヘモグロビンの四次構造変化を許容する結晶を用いた時分割構造解析法の開拓
Publicly Offered Research
Project Area | Novel measurement techniques for visualizing 'live' protein molecules at work |
Project/Area Number |
15H01646
|
Research Institution | Jichi Medical University |
Principal Investigator |
柴山 修哉 自治医科大学, 医学部, 教授 (20196439)
|
Project Period (FY) |
2015-04-01 – 2017-03-31
|
Keywords | ヘモグロビン / アロステリー / X線結晶構造解析 / ダイナミクス / 動的構造解析 |
Outline of Annual Research Achievements |
平成27年度は、1)ヘモグロビン試料の調製・結晶化、2)結晶中タンパク質構造変化開始技術の確立、3)結晶中ヘモグロビンの構造変化速度の計測、を行った。 1)ヘモグロビン試料の調製と結晶化: 研究代表者が開発した試料調製法と結晶作製法[Shibayama N. et al. (2014) JACS 136, 5097]を用いて、COが2個結合した金属置換架橋混成ヘモグロビンを調製し、ヘモグロビンの大規模な四次構造変化を許容する単結晶を作製した。置換金属としては、デオキシヘムのモデルとなるニッケルヘムを使用し、二量体交換反応を防ぐ目的で、2個のベータ鎖82番リジン間にフマル基架橋を施した。 2)結晶中タンパク質構造変化開始技術の確立: 溶液置換法を基礎とした、結晶中ヘモグロビン分子の構造変化を開始させる技術を確立した。具体的には、ポリエチレングリコールのみで結晶化した試料(pH7.6)の母液に、10mMリン酸緩衝液(pH6.9)を添加する方法と、アロステリックエフェクターとして知られるBezafibrate(pH7.0またはpH6.3)を4mM添加する方法で、結晶を壊さずに構造変化を開始させることに成功した。 3)結晶中ヘモグロビンの構造変化速度の計測: 結晶試料中のニッケルヘムの吸収スペクトルは、ヘモグロビン四次構造の良いプローブとなることがわかっている。これを利用して、上の方法で構造変化を開始させた結晶中ヘモグロビンの構造変化を現有の顕微分光光度計で時間追跡した。構造変化の速度は当初の予想以上に速いことがわかった。結晶性の保持は構造変化後の結晶のX線回折点(ブラッグ反射点)で確認した。
|
Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
当初掲げた研究課題は全て遂行された。結晶中ヘモグロビン分子の構造変化の速度は当初の予想以上に速いことがわかったが、これについては対応可能である(下記参照)。
|
Strategy for Future Research Activity |
当初の研究計画では、結晶中ヘモグロビン分子の構造変化を一斉に開始させ、設定した複数の時間後に逐次結晶を液体窒素で急速冷却(構造変化を凍結)することにより、構造変化の道筋に現れる一連の中間状態を追跡する予定であった。しかし、平成27年度の研究から、結晶中ヘモグロビン分子の構造変化の速度が当初の予想以上に速い(拡散による結晶内部環境変化よりも速い)ことがわかった。このため、結晶を浸す溶液条件を系統的に複数準備して(例えばpHを少しずつ下げる等)構造変化の行き先を連続的にふる方法に方針を変更した。このようにして系統的にタンパク質構造を動かした複数の結晶を液体窒素で急速冷却後保存する。これらの結晶のX線構造解析を行い、一連の四次構造を並べたアニメーションを作製する。
|
Research Products
(1 results)