2015 Fiscal Year Annual Research Report
時間分解蛍光測定を軸とする蛋白質水和と機能発現の相関解析
Publicly Offered Research
Project Area | Novel measurement techniques for visualizing 'live' protein molecules at work |
Project/Area Number |
15H01647
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Research Institution | Keio University |
Principal Investigator |
中迫 雅由 慶應義塾大学, 理工学部, 教授 (30227764)
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Project Period (FY) |
2015-04-01 – 2017-03-31
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Keywords | 蛋白質水和 / 時間分解蛍光和周波測定 / 分子動力学 / X線小角散乱 / ドメイン運動 / 青色光受容 / フォトトロピン / 電子顕微鏡 |
Outline of Annual Research Achievements |
1.蛋白質水和の研究 これまでに開発してきた時間分解蛍光和周波測定装置について、光学系の高度化を行い、トリプトファン溶液について和周波測定を行った。また、トリプトファンの蛍光を正しく見積もるために、電子密度分布を量子化学計算によって推定した。分子動力学計算によってグルタミン酸脱水素酵素のドメイン運動に関わる水和構造変化の詳細を明らかにし、同酵素の親水性ポケットへの水和水分子の段階的な吸着脱離過程と、疎水性ポケットへの水和水分子の周辺水素結合ネットワークに応じた吸着脱離過程の協奏によってドメイン運動が制御されている可能性を指摘した。 2.植物青色光受容蛋白質フォトトロピンの構造研究 シロイヌナズナphototropin1 について、光受容LOV2ドメインとキナーゼドメインで構成された最小機能単位の立体構造をSPring-8 BL45XUでのX線小角散乱実験によって解析し、暗中、青色光照射下での立体構造モデルを得た。モデル形状推定に関わる画像解析問題を検討して新しい解析法を提案し、同アルゴリズムの概要を報告した。光照射によってLOV2ドメインに内に生じる微小構造変化がLOV2とキナーゼの連結部分によって伝達され、キナーゼドメインのLOV2ドメインに対する相対位置が変化することが見出された。伝達にかかわる連結部分の点変異体を測定し、部位特異的な構造変化の役割を検討した。シロイヌナズナphototropin2全長のX線小角散乱実験から、全体構造、青色光照射下での構造変化を明らかにした。phototropin1と同様に、青色光照射によってLOV2-キナーゼの相対配置変化が生じることが明らかとなった。さらに、同分子の高分解能構造解析をめざし、電子顕微鏡観察と結晶化を試みた。クラミドモナスphototropinについては、全長の結晶化を試み、結晶を得てSPring-8のBL32XUにて回折強度測定を行ったが、解析が困難な多結晶であった。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
1.蛋白質水和の研究 これまでに開発してきた時間分解蛍光和周波測定装置の高度化を行い、トリプトファン蛍光の和周波を得つつあり、さらに、それを正しく解釈するべく、トリプトファンの電子密度分布を量子化学計算によって推定している。分子動力学計算によってグルタミン酸脱水素酵素のドメイン運動に関わる水和構造変化に関する研究は、当該分野における水和の重要性認識の向上に貢献している。 2.植物青色光受容蛋白質フォトトロピンの構造研究 シロイヌナズナphototropin1 光受容LOV2ドメインとキナーゼドメインで構成された最小機能単位やシロイヌナズナphototropin2全長について、分子の形状と青色光受容によって書汁立体構造変化を観測できた。その結果から、光照射によってLOV2ドメインに内に生じる微小構造変化がLOV2とキナーゼの連結部分によって伝達され、キナーゼドメインのLOV2ドメインに対する相対位置が変化することが見いだされた。伝達にかかわる連結部分の点変異体を測定し、部位特異的な構造変化の役割を検討した。モデル形状推定に関わる画像解析問題を新しい考えで解決し、同アルゴリズムの概要を報告できた。シロイヌナズナphototropin2全長については、さらに高分解能構造解析をめざし、電子顕微鏡観察と結晶化を試みており、クラミドモナスphototropinについては、全長の結晶化を試み、解析が困難な多結晶であったものの結晶を得てSPring-8にて回折強度測定を行を実施することができた。 このように、本申請の研究課題はおおむね順調に進んでいると考えられる。
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Strategy for Future Research Activity |
本申請の研究課題はおおむね順調に進んでいると考えられるので各研究項目について、下記のように推進してゆきたい。 1.蛋白質水和の研究 これまでに開発してきた時間分解蛍光和周波測定装置の蛋白質分子への適用を開始する。 グルタミン酸脱水素酵素の水和構造研究成果については現在、論文投稿後の改定要求に対して対応中であり、今年度中に出版にこぎつけたい。また、追加の水和構造研究成果についても投稿予定である。 2.植物青色光受容蛋白質フォトトロピンの構造研究 シロイヌナズナphototropin1 光受容LOV2ドメインとキナーゼドメインで構成された最小機能単位やシロイヌナズナphototropin2全長について、分子の形状と青色光受容によって書汁立体構造変化を観測できたことは、二報の論文にまとめて投稿予定である。シロイヌナズナphototropin2全長、クラミドモナスphototropinについては、さらに高分解能構造解析をめざし、電子顕微鏡観察と結晶化を引き続き実施して、より詳細な立体構造の解明と構造変化における水和との関連を明らかにしたい。
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Research Products
(10 results)