2016 Fiscal Year Annual Research Report
稲作農耕社会の発展を背景とした人とカモ科鳥類の関係史
Publicly Offered Research
Project Area | Rice Farming and Chinese Civilization : Renovation of Integrated Studies of Rice-based Civilizations. |
Project/Area Number |
16H00742
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Research Institution | Hokkaido University |
Principal Investigator |
江田 真毅 北海道大学, 総合博物館, 講師 (60452546)
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Project Period (FY) |
2016-04-01 – 2018-03-31
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Keywords | 家畜化 / ガチョウ / 動物考古学 |
Outline of Annual Research Achievements |
長江下流域において、稲作農耕の発展を背景にカモ科鳥類と人のかかわりがどのように変化したかを明らかにするために以下の調査・研究をおこなった。 1.田螺山遺跡(約7,000-6,500年前)の各層から出土したガン亜科遺体を抽出し、窒素と炭素の安定同位体比分析をおこなった。その結果、C4植物を採取したと考えられる資料は認められなかった一方、窒素の安定同位体比が先史時代のニホンジカより明らかに高い資料が認められた。またガン亜科の幼鳥の可能性が高い資料をわずかながら検出した。これらの資料がガン亜科の幼鳥であれれば、長江下流域では約6,500年前までにガン亜科の家畜化が始まっていたことになると考えられる。 2.良渚遺跡(約5,500-4,200年前)の鐘家港地点および卞家山地点出土資料を調査し、カモ科(ガン亜科、ハクチョウ属、マガモ属、カモ亜科を含む)、ツル科、タカ科の3目3科を確認した。いずれの地点でも出土した鳥類はカモ科が9割以上を占めて主体的であり、他の分類群は稀であった。またカモ科鳥類のうち、鐘家港地点ではガン亜科のみが出土しており、卞家山地点では約半数がカモ亜科であるのと対照的であった。 3.スミソニアン博物館、ハーバード大学・比較動物学博物館、山階鳥類研究所において現生骨格標本を調査し、中国に生息するカモ科鳥類の同定基準作成に努めた。また、中国におけるカモ科鳥類の出土状況や利用形態、出土した骨の形態との比較のために、加曽利貝塚(千葉県千葉市・縄文時代)、養安寺遺跡(千葉県大網白里市・縄文時代)、本郷遺跡(東京都文京区・江戸時代)から出土した鳥類遺体を調査した。 4.これまでの調査結果を整理・考察し、中国の遺跡出土の鳥類をテーマに国際学会で発表した。また、比較のために調査した加曽利貝塚、養安寺遺跡、本郷遺跡についてそれぞれ論文あるいは報告書を執筆した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
1: Research has progressed more than it was originally planned.
Reason
田螺山遺跡と良渚遺跡の鳥類遺体の分析から、理科学分析に利用可能なガン亜科の骨を抽出できた。また田螺山遺跡資料についてはその一部について窒素と炭素の安定同位体比分析を実施し、コラーゲンの抽出および同位体比の測定が可能なことを確認できた。さらにガン亜科の幼鳥の可能性が高い資料をわずかながら検出できたことから、長江下流域では約6,500年前までにガン亜科の家畜化が始まっていた可能性が指摘できたため。
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Strategy for Future Research Activity |
跨湖橋遺跡(約8,000-7,000年前)の鳥類遺体を調査し、より古い時代におけるカモ科鳥類の利用を明らかにする。また田螺山遺跡、良渚遺跡、跨湖橋遺跡のガン亜科資料の窒素と炭素の安定同位体比分析を進め、ガン類の食性の変化の有無を検討する。さらに、ガン亜科の幼鳥の骨標本を調査し、田螺山遺跡から出土した資料がガン亜科の幼鳥のものであるかどうかを検討する。
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