2016 Fiscal Year Annual Research Report
電極間伸長固定DNA/光電機能分子単一鎖ネットワークの光電機能
Publicly Offered Research
Project Area | Molecular Architectonics: Orchestration of Single Molecules for Novel Function |
Project/Area Number |
16H00955
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Research Institution | Chiba University |
Principal Investigator |
小林 範久 千葉大学, 大学院融合科学研究科, 教授 (50195799)
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Project Period (FY) |
2016-04-01 – 2018-03-31
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Keywords | 先端機能デバイス / ナノバイオ / 生体材料 / 単一鎖機能 / 分子ネットワーク |
Outline of Annual Research Achievements |
単一鎖レベルで,(光吸収・電荷分離・電荷輸送)過程や(電荷輸送・電荷再結合・発光)過程などの高次機能を有するDNA高次組織体を電極間に伸長固定し,単一鎖レベルでの高次構造と光電機能の関係から,分子レベルでのDNA物性の理解を深め,革新的な光電機能を示す次世代分子デバイス創製を目的としている。 平成28年度は以下の事項を検討し,その結果を得た。1)前年度まで用いてきた電極間隔25μm櫛形電極系では,DNA単一鎖伸長は再現性も含めて可能なものの,単一鎖からなるDNAナノワイヤーの位置選択的構築には困難があった。そこでDNAナノワイヤーの位置選択的形成を可能とし,かつ単一鎖の電気特性を定量的に評価するため,電極間隔3μmの対向尖端形状電極を用い,単一鎖DNAナノワイヤー作成を試みたが,伸張条件の再現性を含め定量的な条件設定が達成できなかった。そこで,電極間隔25μm櫛形電極系に戻し,単分子レベルのDNAナノワイヤーに対し、導電性高分子として知られるPolyaniline (PAn)を複合化することで機能性の向上を図った。光重合法および化学重合PAnの静電付加を用いてDNA/PAn複合化ナノワイヤーを作成し,その電気物性を評価した。一方で,2)領域内での共同研究で電極間に伸張固定させたDNAならびにDNA/Ru錯体の電流電圧特性を評価頂いたが,その両者に明確な差は認められず,また電流値も経時的に減少していることからキャリアとしてはイオン成分と推測された。Ru錯体がDNAのイオン席に対して連続的に相互作用しているとは限らず,電荷キャリア輸送サイトとなるRu錯体のDNA単一鎖上における不連続性が電子的電荷輸送を阻害していることが考えられる。 一応の結果は得られたものの,研究計画の遅れが多少出ており,十分満足いく結果が得られたとは言い難い。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
平成28年度は,1)単一鎖からなるDNA/光電機能分子組織体ナノワイヤーの形状解析と電気物性評価,ならびに2)共同研究を通したDNA/光電機能分子組織体ナノワイヤーにおける電荷輸送機構の物理的解明,を達成目標としてあげた。 結果として, 1)DNA/光電機能分子組織体を電極間隔3μmの電極間に完全単一鎖で静電伸長固定する方法論を確立しようと試みたが,伸張条件の再現性を含め定量的な条件設定が達成できなかった。そこで,1)電極間隔25μm櫛形電極系に戻し,単分子レベルのDNAナノワイヤーに対し、導電性高分子として知られるPolyaniline (PAn)を複合化することで機能性の向上を図った。PAnをDNAに複合化する手法として、光重合法・化学重合法の二つを検討した。光重合法においては電界伸長したDNAナノワイヤーにRu(pby)32+錯体を吸着後,アニリン二量体存在下で光照射することで,また化学重合法では,化学重合したPAnを直接相互作用させることで,DNA/PAnナノワイヤーを作製した。PAn付加前後でAFM形状像や電気特性の合理的な変化は認められており,理論,機構的な裏付けを進めている。 2)に関しては,領域内共同研究を活用し,電極間に伸張固定化させたDNAならびにDNA/Ru(pby)32+錯体ナノワイヤーの電流電圧特性を,高真空下ならびに光照射前後で評価頂いたが,それらに明確な差は認められず,また電流値も経時的に減少していることからキャリアとしてイオンが関与する伝導形態と推測された。Ru(pby)32+錯体がDNAのイオン席に対して連続的に相互作用しているとは限らず,電荷キャリア輸送サイトとなるRu錯体のDNA単一鎖上における不連続性が電子的電荷輸送を阻害していることが考えられる。
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Strategy for Future Research Activity |
今後の研究方針は当初計画から外れてはいないものの,28年度における達成度は十分ではない。その理由としては,3μm電極間でDNAを再現性良く,単一鎖伸長固定できる方法論を確立できなかったことにある。原因として,その後の解析から,3μm電極系電界伸長に利用するDNA溶液の濃度は,通常25μm電極系で用いられる濃度ではかなり高過ぎ,大幅に希薄する必要があることが明らかとなっている。 これらの知見を基に,平成29年度は,以下の二つの観点から光電機能性DNA鎖ネットワークとしての特製評価を行い,本領域4年間のまとめとして貢献したい。 1) まず,電極間隔3μmでの単一鎖DNA電界伸長固定を再現性良く行うため,DNA溶液濃度を大幅に低下し,伸長条件を確立する。さらにこれが達成できない場合も想定し,以下の電極系も構築する。すなわち,電極間隔25μmの対向電極間にDNAを伸長配向した場合,電極間中央部分ではDNA単一鎖伸張固定できるものの,電極表面近傍でのDNA伸張構造はかなり乱雑に乱れる。電極表面上でも単一鎖レベルで引き伸ばされたDNA鎖の物性評価を行うため,静電伸張に用いる電極間の内側に一対のフロート電極を導入した電極系を作成する。これまでの25μm電極系の知見を基に,フロート電極間でDNA単一鎖ナノワイヤーを測定評価できる条件を確立する。さらにRu錯体等を伸長固定DNAに静電吸着させ,その分子ワイヤーとしての電気物性を評価する。 2) 一方で,光電機能性や配向構造の評価をより明確にまた定量的に行うため,単一鎖のみではなくDNA伸張固定鎖が2次元状に連続したDNA/光電機能分子一軸配向ナノシートを作成し,DNAの配向構造を分光学的に解析するとともに,光電特性を評価する。構造と光電特性の相関を明らかにし,領域の先生方との議論・共同研究を通して何らかの形でのDNA鎖分子素子化を目指す。
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Research Products
(9 results)