2016 Fiscal Year Annual Research Report
有機ラジカルのスピンに基づく単分子スピントロニクス素子の開発
Publicly Offered Research
Project Area | Molecular Architectonics: Orchestration of Single Molecules for Novel Function |
Project/Area Number |
16H00962
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Research Institution | Nagoya University |
Principal Investigator |
松下 未知雄 名古屋大学, 理学研究科, 准教授 (80295477)
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Project Period (FY) |
2016-04-01 – 2018-03-31
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Keywords | 有機磁性導電性共存系 / 単分子スピントロニクス / 分子集積回路 |
Outline of Annual Research Achievements |
単一分子スピントロニクスのモデルとして、有機磁性―導電性共存系の単一分子レベルでの磁気抵抗計測を試みた。 (1)傾斜蒸着法や電流印加蒸着法を用いて~5nmのギャップ間隔をもつ金電極を作成し、種々のスピン分極ドナー分子を導入し、低温で導電特性に対する磁場効果の観察を試みた。バルク結晶に比べてより大きな磁気抵抗効果が観察されるとの期待に反し、磁場印加下での抵抗変化は0.1%以下であり、有意な磁気抵抗は観察されなかった。有機磁性―導電性共存系における磁気抵抗効果の由来がこれ以上のサイズに由来することを示す結果であり、従来観察に用いられ、70%程度の磁気抵抗が観察されていた2μmの電極までのスケールにおける磁気抵抗効果に興味が持たれる。 (2)ナノギャップ電極への分子の導入に際し、真空蒸着法の利用を意図し、真空蒸着に耐える典型的な分子として、種々の磁性金属イオンを含むフタロシアニンの蒸着膜の磁気抵抗効果を系統的に検討した。その結果、第4周期遷移金属元素のほとんどは2K~300Kの温度範囲で顕著な磁気抵抗を示さなかったもののマンガンフタロシアニンのみ温度の低下とともに負の磁気抵抗が増大し、2Kでは5Tの磁場の印加下で-90%に達した。室温においても-0.1%の負の磁気抵抗が観察されており、分子スピントロニクスの有用な材料であることが確認された。 (3)シクロファン構造のダイマー型ドナー分子のイオンラジカル結晶において、170K付近で生じる4方晶から単斜晶への構造相転移を利用し、格子変形の方向を電流により制御することを試みた。その結果、170K以下の低温相で、大電流を印加することで、電流の印加方向が低抵抗化し、その直交方向が高抵抗化する変化を、交互に繰り返し観察することに成功した。さらに、結晶溶媒やカウンターイオンが異なる結晶を作成することで、構造相転移を室温で観察することにも成功している。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
分子合成を行う人員を確保することができず、当初予定していたトンネル磁気抵抗効果の単分子モデルの合成を行うことができなかった。そのため、ナノギャップ電極による有機磁性―導電性共存系の単分子測定を進めることとなった。一方、計測グループへの試料の提供のほか、金属フタロシアニン蒸着膜での巨大磁気抵抗の観察、分子結晶における、分子変形に基づく抵抗スイッチング現象の発見など、当初予定していなかったものの、本学術領域の進展に資する成果は得られたと考えている。
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Strategy for Future Research Activity |
(1)ナノギャップ電極を用いた有機磁性‐導電性共存系の少数分子レベルの磁気抵抗効果の測定をさらに進め、分子クラスターサイズと磁気抵抗効果の相関を明らかにする。 (2)ナノカーボンとの複合化等、複数の手法で、より高い発現温度、より大きな磁気抵抗効果の発現を試みる。 (3)シクロファン型ドナーの結晶における、メモリーや初歩的な演算機能の発現を目指す。
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Research Products
(9 results)