2016 Fiscal Year Annual Research Report
脱着可能な分子-電極接合法の確立と応用
Publicly Offered Research
Project Area | Molecular Architectonics: Orchestration of Single Molecules for Novel Function |
Project/Area Number |
16H00966
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Research Institution | Kyoto University |
Principal Investigator |
奥山 弘 京都大学, 理学研究科, 准教授 (60312253)
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Project Period (FY) |
2016-04-01 – 2018-03-31
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Keywords | 分子接合 / 走査トンネル顕微鏡 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究課題では1.走査トンネル顕微鏡の探針とベンゼン環の可逆脱着制御の技術を利用して、分子伝導度の精密計測を達成し、これまで検出不可能であった微弱な効果を観測すること、2.合成グループとの共同研究を通じて機能性有機分子の表面蒸着、単分子観測、さらに分子伝導計測を行うことを目的とした。 1の項目に関しては、電極の酸化が分子伝導に与える影響を捉えることに成功している。酸素原子と分子の距離や位置関係を原子レベルで制御しながら、伝導計測を行うことで、これまで見過ごされてきた電極酸化の影響が明らかとなった。将来、大気中で動作する分子デバイスでは、電極は概ね酸化されており、その影響を理解することは分子デバイスの制御にとって本質的である。本研究成果は世界で初めてその影響を検出し、調べたものといえる。現在、理論計算によりその起源について詳細に調べている。 2の項目に関しては、ポルフィリン多量体およびポルフィリン‐イミドの連結分子の提供を受け、前者について表面蒸着と単分子観察まで行った。これら巨大分子に関しては、表面に真空蒸着することは困難であることから、エレクトロスプレーイオン化法を新たに導入することで、単分子観察を行うことが可能となった。また、ロタキサン型共役分子にフェロセンを官能基として装着した分子を金表面に立てて、STM観察を行った。大気中と真空中の異なる環境で観察を行い、両者において表面に吸着した1つ1つの均一な分子の観察に成功した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
目的1. 走査トンネル顕微鏡の探針とベンゼン環の可逆脱着制御の技術を利用して、分子伝導度の精密計測を達成し、これまで検出不可能であった微弱な効果を観測すること、については酸素原子を銅基板上に配置し、フェノキシ分子との相対関係を制御しながら、分子伝導を計測することで、伝導度への影響を検出している。具体的には、酸素原子の近傍において伝導度が約20%減少することを見出した。現在は理論計算との共同研究により、伝導度減少の起源について調べている。 目的2. 合成グループとの共同研究を通じて機能性有機分子の表面蒸着、単分子観測、さらに分子伝導計測を行うこと、についてはロタキサン型分子の金表面における吸着状態について大気、および真空下でSTM観察を行っている。表面への蒸着方法について最適な方法を検討している。ポルフィリンーアミド連結分子については、真空蒸着の方法を検討中である。
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Strategy for Future Research Activity |
分子伝導に対する電極酸化の影響をさらに詳細に調べるため、表面水酸基の共吸着実験を進める。水分子を表面に露出し、水酸基を低温に冷やした基板上でSTMを用いた分子操作によって作製する。水酸基はモノマーの他に、ダイマーなど多量体を形成することが知られており、特にダイマーのスイッチングによる伝導度の制御を試みる。加えて光誘起による分子接合のスイッチングの制御、およびスイッチングダイナミクスの時間分解測定の可能性について検討する。 金表面に蒸着したロタキサン分子のSTM観察を進めてきたが、均一な吸着構造になっていない可能性が高いことがわかった。そこで、表面への蒸着方法について溶媒の種類や濃度を再検討して、均一な吸着構造の形成を目指す。さらに探針増強ラマン装置を立ち上げ、大気中で蒸着構造のラマンマッピングを進める。STMで得られない分子固有の振動計測により基板上における分子の分布について明らかにする。
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