2017 Fiscal Year Annual Research Report
体節時計をモデルとしたマウスとヒトの時間スケール種差を生み出す原理の解明
Publicly Offered Research
Project Area | Interplay of developmental clock and extracellular environment in brain formation |
Project/Area Number |
17H05777
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Research Institution | Institute of Physical and Chemical Research |
Principal Investigator |
松田 充弘 国立研究開発法人理化学研究所, 生命システム研究センター, 研究員 (10709752)
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Project Period (FY) |
2017-04-01 – 2019-03-31
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Keywords | 体節時計 / 種差 / 時間 |
Outline of Annual Research Achievements |
体節時計の周期はマウスでは2時間だがヒトでは6時間である。Hes遺伝子の自己抑制回路という同じ仕組みによりながらも、生物種間で違う時間を持つ。これ違いの原因を理解することが本研究で取り組む課題である。ES,iPS細胞から体節時計を有する未分節中胚葉様細胞を誘導する系を確立する。その系を用いて、2つの仮説1.マウスとヒトではHes遺伝子領域自体が異なるのか、それとも2.遺伝子自体は同じで周りの細胞内環境(場)の違いが遺伝子の振る舞いを変えるのか明らかにする。同時に、遺伝子発現や抑制過程、タンパク分解といったどの素過程の時間に種差があるのか調べる。 本年度はES,iPS細胞から未分節中胚葉様細胞を誘導し、体節時計を再現し、観察する方法をマウス、ヒトともに確立した。 本年度のもう一つの実績は、種間の時間の違いがHes遺伝子領域自体によるとの仮説のもとに、ヒトとマウス間でHes遺伝子領域を組み替えて時間が変わるか調べたところ、種に固有の時間はほとんど変わらなかった。これはHes遺伝子領域は配列はわずかに異なるが、機能的には相同であることがわかった。これはもう一方の仮説の「遺伝子自体は同じで周りの細胞内環境(場)の違いが遺伝子の振る舞いを変える」を示唆している。今後はその仮説にしたがって解析を行う予定である。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本年度は本研究の重要な点である、ES,iPS細胞から体節時計の性質を有している未分節中胚葉様細胞を誘導し、体節時計を再観察する方法をマウス、ヒトともに確立し、2種間の時間を比較することができた。さらに、種間の時間の違いがHes遺伝子領域自体によるとの仮説のもとに、ヒトとマウス間でHes遺伝子領域を組み替えて時間が変わるか調べたところ、種に固有の時間はほとんど変わらなかった。これはHes遺伝子領域は配列はわずかに異なるが、機能的には相同であることがわかった。この成果も、本研究の対立する2つの仮説の一方を棄却することができたので、非常に大きな成果と言える。以上のように、ヒトとマウスの時間における種差を解析する系を手にすることができたこと、対立仮説の一方を棄却できたことから本研究課題はおおむね順調に進展しているとした。
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Strategy for Future Research Activity |
本年度は本研究の対立する2つの仮説の一方の「マウスとヒトではHes遺伝子領域自体が異なる」を棄却することができた。そこで今後はもう一方の仮説の「遺伝子自体は同じで周りの細胞内環境(場)の違いが遺伝子の振る舞いを変える」について検証する。具体的には遺伝子発現や抑制過程、タンパク分解といった遺伝子発現振動のどの素過程の時間に種差があるのかを明らかにする。さらには細胞の大きさや代謝、細胞内輸送速度といった細胞環境のどの部分が異なることで時間差が生じるのか、根本原因を同定する。 加えて、体節時計をモデルとして、神経発生をはじめとした様々な発生現象の時間スケール種差にも同様の仕組みが存在するかを調べる。あわせて、本研究で得られる知見を活かして、時間を操作する技術の開発を目指す。
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Research Products
(1 results)