2017 Fiscal Year Annual Research Report
NMRを主体としたタンパク質構造推移解析のための複合手法の開発と応用
Publicly Offered Research
Project Area | Novel measurement techniques for visualizing 'live' protein molecules at work |
Project/Area Number |
17H05867
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Research Institution | Hokkaido University |
Principal Investigator |
齋尾 智英 北海道大学, 理学研究院, 助教 (80740802)
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Project Period (FY) |
2017-04-01 – 2019-03-31
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Keywords | ランタノイド / NMR / SAXS / ESR |
Outline of Annual Research Achievements |
本プロジェクトでは,タンパク質の立体構造とその変化を定量的に解析する手法の確立と応用を目指す.生体内においてタンパク質は,その立体構造を大きく変化させながら機能を発揮しているが,多くの場合その詳細なメカニズムは明らかにされていない.特に,複数のドメインから構成されるマルチドメインタンパク質は,ドメインの相対配置を変えるような大きな立体構造変化を伴って機能することが多く,特に解析が困難である.これまでに我々は,常磁性ランタノイドイオンを活用したNMR法によって長距離間の立体構造情報を取得し,マルチドメインタンパク質の立体構造変化を迅速に解析することに成功している.しかし,NMRにおいてはタンパク質のダイナミクスに起因する信号の平均化,すなわち立体構造情報の平均化が大きな問題となっていた.そこで本研究では,ランタノイドイオンを他の手法,特に電子スピン共鳴 (ESR) とX線小角散乱 (SAXS) において活用することによって,動的構造平衡にあるタンパク質の状態とその存在比の情報を取得することによって,NMRにおける平均化問題を解消することを目指した.具体的には,タンパク質上の2箇所に固定したランタノイドイオン間の距離と分布についての情報を取得することによって,リガンドの結合などによるタンパク質の立体構造変化を捉えることを目指した.2017年度はモデルタンパク質である大腸菌MurD上の2箇所にランタノイドイオンを固定し,その距離を計測することを試みた.その結果,ESRによってガドリニウム (III) イオン(Gd3+) 間の距離を測定可能であることを実証し,SAXSによってランタノイドイオン間の散乱をより高感度で観測し,ランタノイドイオン間の距離を正確に求めることに成功した.
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本プロジェクトでは,モデルタンパク質である大腸菌MurDを用いた手法の確立を主眼に,他のマルチドメインタンパク質への応用まで含む研究を展開する.2017年度は手法の確立として (A) ESRと (B) SAXS を用いた実験を計画し,さらに (C) 他のタンパク質への応用のための条件検討についても計画していた.(A) については,2016年度までの研究によって,2箇所のGd3+間の距離が計測可能であることが確認できていたが,2017年度はさらなる分解能向上のため,実験条件の最適化を行った.特に,スピンエコーでのパルス間隔を延長し,より長い時間についてエコー強度を観測することによって,より高分解能な解析を可能にした. (B) については,2016年度までの研究によって,スクロース溶液を用いたコントラスト・マッチ測定によってMurDに固定したルテチウム (III) イオン (Lu3+) 間の散乱を特異的に観測することに成功していたが,感度が低いことが最大の問題となっていた.そこで2017年度は放射光施設を利用し,高輝度X線ビームを用いた測定に着手した.その結果,Lu3+間の散乱をより高感度で観測し,Lu3+間の距離を決定することに成功した.(C) については,本手法を他のタンパク質に応用するため,2種のタンパク質に対してランタノイドイオンの固定のための条件検討を行った.以上のように,当初計画したように,本研究の軸となる3項目すべてについて順調に進行しており,よって研究は概ね順調に進行していると判断した.
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Strategy for Future Research Activity |
今後は当初の計画通り, (A) ESRと (B) SAXS を用いた手法の確立についてモデルタンパク質MurDを用いて行い, (C) 他のタンパク質へと応用する.(A) については,これまでの測定条件の最適化によって高分解能の解析が可能になったが,パルス間隔の延長による感度の低下が問題となっている.今後は,感度向上のための測定条件の最適化を進める.(B) については,放射光施設を用いたコントラスト・マッチ測定によってランタノイドイオン間の距離が計測できることが示されたが,実際の立体構造変化解析に応用するためにはさらに感度を改善する必要がある.そのため,今後はランタノイドの種類やX線の波長を検討し,またより高輝度のビームを使用することなどを計画する.(C) については,これまでに対象タンパク質の発現・精製プロトコルを確立し,タンパク質が高濃度で安定であることが確認できている.ここでは2種類のタンパク質について本手法を適用するが,2種とも複数のマルチドメインタンパク質であり,ドメイン配向の変化を伴う大きな立体構造変化がその機能発現に重要であることが知られている.今後は,ランタノイドイオンの固定をさらに進め,ESRやSAXSの測定に適用する.
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Research Products
(5 results)