2017 Fiscal Year Annual Research Report
オートファジー始動複合体の作動状態の活写
Publicly Offered Research
Project Area | Novel measurement techniques for visualizing 'live' protein molecules at work |
Project/Area Number |
17H05894
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Research Institution | Microbial Chemistry Research Foundation |
Principal Investigator |
藤岡 優子 (野田優子) 公益財団法人微生物化学研究会, 微生物化学研究所, 研究員 (80399964)
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Project Period (FY) |
2017-04-01 – 2019-03-31
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Keywords | オートファジー |
Outline of Annual Research Achievements |
オートファジーの進行には多数のAtgタンパク質群が必要だが,それらの殆どは飢餓条件下,PAS(pre-autophagosomal structure) に局在し,分解対象を包む膜である隔離膜の形成に働く.Atg1,Atg13, Atg17, Atg29, Atg31からなるタンパク質複合体であるAtg1複合体は,数十コピーからなる高次の多量体を形成することでPASの足場を形成し,オートファジーの始動に働くと考えられているが,その構築基盤は未だ不明である.本研究では,実際にPASの中核として機能する状態のAtg1複合体の動的構造を明らかにすることで,PASの実体および形成メカニズムを明らかにする.Atg1複合体の構成因子は天然変性領域を多く含み,さらに高次多量体を形成することから,従来型の構造生物学の枠を超え,高速AFMの手法を最大限活用する. 本年度はAtg1複合体を構成する個々のタンパク質について,高速AFM像を取得した.まずAtg17の立体構造については,Atg17-Atg29-Atg31複合体,Atg17-Atg31(Atg17との結合領域のみ),Atg17単独の3種類の高速AFM像を高精度で取得した.Atg29の天然変性領域がAtg17と弱い相互作用をすることによって,Atg17-Atg29-Atg31複合体の特徴的なS字構造が維持されていることを明らかにした.またAtg1の立体構造については,その自己リン酸化によって,天然変性領域中に微小な構造が出現することを明らかにした.さらに,高速AFMによって推定した微小な構造が出現する領域について,NMRを用いて構造変化を検出することを試みたが,これまでのところ立体構造の誘起を検出できていない.引き続き実験条件の検討を続ける.
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
上記の通り,本年度はAtg1複合体を構成するタンパク質の,個々の高速AFM像の取得を行った.測定条件の検討を繰り返すことにより,以前に取得した像よりも精度の高い像が得られ,X線結晶構造解析では知ることのできない天然変性領域の情報を得ることに成功している.特に,Atg29の天然変性領域に関する情報や,Atg1の天然変性領域内微小構造の情報は,高速AFMの長所を最大限に生かした情報であり,今後のin vivo, in vitroでの実験で,その重要性を検討していきたい.
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Strategy for Future Research Activity |
計画通り,Atg13にAtg17-Atg29-Atg31複合体を加えた場合,Atg13にAtg1を加えた場合など,2因子間の相互作用を高速AFMで観察する.Atg13の天然変性領域とAtg1との相互作用を高速AFMにより詳細に解析することで,Atg1との結合に際して天然変性領域にアルファ-ヘリックスが誘起される過程の可視化を試みる.続いてAtg13とAtg17-Atg29-Atg31複合体との相互作用を高速AFMで観察し,Atg13がAtg17同士を架橋していく過程をリアルタイムで追跡する.さらにAtg1も添加することで5者複合体全体の高次多量体構造の観察も目指す.各因子に異なる蛍光タグを付加し,領域内で開発が行われる蛍光顕微鏡の高速AFMへの応用技術を活用することで,因子間の区別を明確にした高速AFM測定も試みる. 高速AFMで得られた知見に基づき,in vivo, in vitroでの機能解析を行う.具体的には因子間の結合を減弱もしくは増強する変異,Atg1複合体の運動性に影響を与える変異,Atg1複合体の会合レベルや会合様式を変える変異など様々な視点から変異体を設計し,実際に因子間結合や高次複合体形成に与える影響を生化学的に解析する.さらに酵母を用いて,これらの変異が細胞内でのAtg1複合体の形成能,PASの形成レベル,Atg9など下流因子群のPAS局在,さらにはオートファジー活性に与える影響を解析し,Atg1複合体の動的構造と機能との関係を明らかにする.
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