2018 Fiscal Year Annual Research Report
水素結合ネットワークに基づく精密環化反応場の設計
Publicly Offered Research
Project Area | Precise Formation of a Catalyst Having a Specified Field for Use in Extremely Difficult Substrate Conversion Reactions |
Project/Area Number |
18H04258
|
Research Institution | Kyoto University |
Principal Investigator |
浅野 圭佑 京都大学, 工学研究科, 助教 (90711771)
|
Project Period (FY) |
2018-04-01 – 2020-03-31
|
Keywords | 水素結合 / 精密環化反応場 / 有機分子触媒 / 四置換不斉炭素 / 多点不斉一挙構築 |
Outline of Annual Research Achievements |
一度の反応で複数の不斉炭素を一挙に構築しながら複雑な有機骨格をつくり上げる有機合成手法は、機能性分子合成の短工程化に直結するため重要である。特に、高難度な四置換不斉炭素の構築を伴う分子変換は効果的である。我々は、水素結合による穏和な活性化をもたらす触媒活性部位を分子骨格に複数配置した有機触媒を設計することで、触媒による多点活性化に必然性を与え、分子内環化反応に効果的な不斉環境を提供する触媒的手法を開発してきた。本研究では、この手法を発展させ、四置換不斉炭素を含む複数の不斉炭素を持つ複素環化合物を一段階で高立体選択的に合成する触媒反応の開発に取り組んでいる。その中で初年度は、以下に述べるような精密環化反応とそれを応用した速度論的分割反応を開発した。 ケトンから可逆的に発生させたシアノヒドリンの動的速度論的分割により、四置換不斉炭素を構築しながら環形成する反応を重点的に検討した。これにより、四置換不斉炭素を含む複数の不斉炭素を一挙に構築しながらテトラヒドロピラン誘導体を合成する反応を見いだした。また、6員環アセタールを形成する反応に応用することで、アキラルな基質から2つの不斉炭素を一挙に構築しながらsyn-1,3-ジオール骨格を形成する反応を初めて開発した。さらに、一般的なケトンよりも求電子性が高いアシルシランから不可逆的に生成するシアノヒドリンを利用して同様の環化反応を行うと、片方のエナンチオマーから選択的に環化が進行し、速度論的分割により光学活性アシルシランシアノヒドリンを触媒的に合成する反応も初めて達成した。さらに、gem-ジオールの非対称化を経由する環化反応によりテトラヒドロピラン環に四置換アセタール炭素を不斉構築する反応も開発した。
|
Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
初年度に予定していた研究計画の大部分は遂行でき、これまでに得た研究成果に関して複数の論文を発表した。また、当初の計画以上に進展した研究成果が得られた部分もあった。現在は、初年度の研究成果を基盤にしてさらに研究を発展させており、当初の研究計画よりも研究構想に広がりが見え始めている。一方で、本研究で目指している立体分岐型反応の開発には今後も継続した研究が必要である。以上の状況から、全体として研究はおおむね順調に進展していると考えた。
|
Strategy for Future Research Activity |
有機触媒によるシアノヒドリンの環化反応について、オキサデカリン骨格を与える反応をさらに検討する。既に目的の反応が高エナンチオ選択的に進行することは見いだしており、さらにトランスオキサデカリン骨格とシスオキサデカリン骨格をそれぞれ選択的に合成する反応条件の確立を目指す。また、gem-ジオールの環化反応もさらに研究を展開し、ここでも立体分岐型反応の実現を目指す。
|
Research Products
(31 results)