2018 Fiscal Year Annual Research Report
二次イオン質量分析法とイオン注入法を融合した軽元素定量分析及び同位体比分析
Publicly Offered Research
Project Area | Interaction and Coevolution of the Core and Mantle: Toward Integrated Deep Earth Science |
Project/Area Number |
18H04367
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Research Institution | Kyoto University |
Principal Investigator |
伊藤 正一 京都大学, 理学研究科, 准教授 (60397023)
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Project Period (FY) |
2018-04-01 – 2020-03-31
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Keywords | 二次イオン質量分析法 / 同位体イメージング / 定量分析 / 同位体分析 |
Outline of Annual Research Achievements |
マントルの状態や対流に大きな影響を与える「水」を含む揮発性物質の循環を明らかにすることは固体地球のダイナミクスと進化の理解に不可欠である.しかし、揮発性であるが故に分析困難であった固体試料中の定量分析や同位体比分析は,未踏の分析領域であった.本研究では,高温高圧実験生成物や天然マントル試料のあらゆる鉱物及びガラスに対応した二次イオン質量分析計による水素定量分析及び同位体分析法を融合し、構造物性班、同位体班、元素分配班,技術開発班の実験試料、天然試料の微量水素定量分析を行い、軽元素地球深部物質循環の解明に新展開をもたらす事を目指す. 連携研究者とは,水素同位体比及び水素同位体マッピングにより,高圧実験条件(温度,圧力,時間)の評価に成功し,オリビンーワズレアイトの水素同位体分別の評価を行った。高温高圧実験条件を水素の二次元分布を用いることで保持時間などを評価することに成功した。現在、オリビンとワズレアイトの間で水素同位体分別係数を求めるために、温度圧力条件を変化させて、明らかにしつつある。 同位体班とはダイヤモンド標準試料の炭素同位体分析手法を確立し、高圧合成試料の測定を行った.標準試料としてヒメダイヤが適しているかどうかを全岩同位体組成と虹イオン質量分析法による局所分布を組み合わせ、1‰以下で均一な同位体組成となっていることを評価することに成功し、論文投稿段階となった。 技術開発班とは,金属鉄-ケイ酸塩液相間の炭素分配係数を制約するため,標準試料の測定法開発に成功し、合成試料のケイ酸塩ガラスの微量な炭素濃度を測定することに成功し、投稿論文査読中である。 構造物性班とは、DACによる地球コア圧力条件における鉄の拡散係数を推定するために、約20ミクロンの微小な試料の同位体分析法及び深さ方向分析の開発を行うことに着手した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
計画した研究内容は4つあり、いずれも計画通りに分析法の開発から行い、すべて順調に進行していると判断できる。 投稿論文として現在査読中であるため、当初受理されている予定だったが1年では完了していないため、当初の計画以上に進行しているとは評価できないと判断した。 高温高圧実験において、高温高圧が実現される試料サイズ及び圧力や温度の均一性の評価は、これまで試料サイズが小さいために評価が困難であったが、開発した同位体イメージング分析法により、保持時間や空間的な温度や圧力の均一性を評価したことで、保持時間が足りていない実験条件があることがわかり、当初より時間がかかっている。しかしながら、すでに投稿論文用のデータの蓄積がほぼ完了しつつあるため、来年度の最終年度内にすべての研究課題を完了する予定が整っている。 今年度より、開発に着手したDAC試料の鉄同位体マッピングによる拡散係数の推定のための試料調整はほぼ完了し、実験試料の数を増やしてアレニウス図による拡散係数の決定を試みている。
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Strategy for Future Research Activity |
高圧合成試料の鏡面研磨表面作成 高温高圧実験により作成される結晶サイズは、数~数十マイクロメートルと非常に小さく脆いため、結晶の表面を前もって鏡面研磨する技術の確立が必要となる.手研磨によるダメージの低減を京大設置の段差計により評価した研磨方法を適応し、すべての高温高圧試料の作成方法を引き続き検討する。 二次イオン質量分析計による水素・炭素分析手法の開発 京大設置の二次イオン質量分析計(Cameca ims4f-E7SIMS)により微小領域の水素定量分析を行い、イオン注入した標準試料の濃度均一性、イオン注入深さと加速電圧のシミュレーション(SLIM)との比較、相対感度係数のデータベース構築を行う.高温高圧実験試料を常温常圧に戻して回収した際に生じる対象結晶の水素や炭素の拡散挙動を把握しなければ、深部情報を保持しているか不明瞭な結晶も存在する.特に格子欠陥に存在する水素の場合、結晶水に比べ、著しく水素拡散係数が速い報告例が存在する.そのため,微小なマイクロメートルスケールでの拡散の有無を明らかにしなければ,元素分配等を評価することはできない。結像光学系イオンイメージングにより結晶内の分布を明らかにし,高圧実験の温度圧力保持時間の最適かもあわせて行う事で,水素や炭素の分配係数を決定する手法を構築する。 金属鉄-ケイ酸塩液相間の炭素分配係数を制約する研究テーマにおいては,グラファイト以外のカプセル材を使用し、低濃度炭素を試料に加えることで上記の問題解決を試みる。特に金属鉄の組成を大きく変えないカプセル材として窒化ホウ素(BN)、SiO2、MgOといった材質のカプセル材を使用することで金属鉄-ケイ酸塩液相間の炭素分配係数を制約することを目的とする。
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Research Products
(3 results)