2019 Fiscal Year Annual Research Report
光駆動マイクロマシンによる単一量子ドットに働く光圧計測法の開発
Publicly Offered Research
Project Area | Nano-Material Manipulation and Structural Order Control with Optical Forces |
Project/Area Number |
19H04670
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Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
田中 嘉人 東京大学, 生産技術研究所, 助教 (50533733)
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Project Period (FY) |
2019-04-01 – 2021-03-31
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Keywords | 光圧 / 光トルク / 角運動量 / 微弱力計測 / アクティブフィードバック制御 |
Outline of Annual Research Achievements |
従来の捕捉ポテンシャル解析による光圧計測感度を飛躍的に向上させることに向けて、リアルタイムに高精度計測したマイクロプラットフォーム(MPF)の位置に応じて捕捉レーザー光の強度や集光位置を高速で制御し、MPFが感じる光場をデザインするシステムを開発してきた。特に、四分割フォトダイオード(QPD)による位置計測とFPGAによるフィードバック信号の生成を行うことで、同種のフィードバック制御系の中で世界最高の高速化と低遅延化(< 6 μs)を実現し、捕捉ポテンシャルを高いゲインで制御できることを実証した。また、光ピンセットにアラン分散を導入することで、①時間領域でのノイズの分類・評価、②現在使用している実験システムによるポテンシャル解析に最適な測定時間の見積もり、③光圧計測の分解能の見積もりを定量的に行えることを明らかにした。 また、角運動量を持つ光とナノ物質との相互作用を理論的に解析する新しいアプローチを提案した。具体的には、全角運動量のうちスピンのみの保存則を導出することにより、光とナノ物質との相互作用に伴うスピン角運動量Lossと軌道角運動量Lossを分離して解析することができる。Optical chiralityの時間微分から導出されるその流速Fが、ナノ物質の分極も含めた系全体のスピン角運動量密度σと関係式σ = F/w2(w:角周波数)で直接結びついていることを見出した。そこでσの時間微分を取ることで、連続の方程式(スピン角運動量保存則)を導出し、σの流束密度Tspin(テンソル量)を得ることができた。これにより、任意の入射光場と任意の形状や材質のナノ物質の相互作用に伴うスピン・軌道角運動量変換を定量的に求めることが可能になる。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
ナノ光圧計測システムについては、当初の予想を上回る高速化と低遅延化でフィードバック制御可能であることを示すことができた。また、アラン分散を導入することで光圧計測におけるノイズ解析と最適化を可能にした。これらのアプローチは、高精度な光圧計測システムを開発する上で極めて重要なものであり、計画を超えた進展といえる。さらに、実験データを解釈するために、角運動量を持つ光とナノ物質との相互作用を理論的に解析する新しいアプローチを見出すこともでき、当初の計画を上回るものである。しかし、サンプル作製についての再現性が未だ低いため、ナノ物質の光圧計測が安定して得られていない。これらの理由より、おおむねは順調に進展していると結論付けた。
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Strategy for Future Research Activity |
ナノ光圧計測法の開発を終わらせ、分子もしくは量子ドットの共鳴や光学非線形性(吸収飽和、反転分布等)に伴う光圧および光トルクの特性を研究する。具体的には、MPFに配置した量子ドットに波長可変のチタンサファイアレーザー(CW・パルス)を照射し、それに伴う捕捉ポテンシャル変化から光圧(Fx, Fy, Fz)と光トルク(Tθx, Tθy, Tθz)を計測する。波長・強度・偏光等をパラメーターに光を線形・非線形に作用させ、光圧と光トルクに対する共鳴効果(共鳴増強、非線形光学効果等)を解析する。様々な共鳴特性(位相緩和時間、共鳴周波数等)を持つ単一量子ドットについて同様の計測を行い、得られた結果と数理シミュレーションとの整合性について考察する。
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