2019 Fiscal Year Annual Research Report
自然免疫分子STINGを介したシグナル伝達経路の重層的プロテオーム解析
Publicly Offered Research
Project Area | Integrative understanding of biological signaling networks based on mathematical science |
Project/Area Number |
19H04966
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Research Institution | The University of Tokushima |
Principal Investigator |
小迫 英尊 徳島大学, 先端酵素学研究所(オープンイノベ), 教授 (10291171)
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Project Period (FY) |
2019-04-01 – 2021-03-31
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Keywords | STING / 自然免疫 / プロテオーム / インタラクトーム / TBK1 / BioID / Tamavidin / TMT |
Outline of Annual Research Achievements |
STINGは病原体や自己由来の細胞質DNAに応答して、インターフェロン産生や炎症などの自然免疫系を活性化する膜タンパク質であり、老化や様々な疾患と関連することが知られている。しかし従来の研究からは、STINGシグナル系の全体像を理解する上で十分な知見が得られていない。特にSTINGの下流因子や相互作用因子を網羅的に同定するためには、プロテオーム解析技術のさらなる発展が必須である。そこで本研究では、最新の各種プロテオミクス技術を融合・発展させた重層的な精密定量プロテオーム解析法を開発する。そしてSTINGを介した自然免疫シグナル経路の全体像とその制御機構を明らかにする。本年度はまず、TMT (tandem mass tag)標識による10サンプル間比較定量リン酸化プロテオーム解析法を用いてSTING下流でのTBK1基質の探索を行った。その結果、1万4千種類以上のリン酸化ペプチドの定量に成功し、既知のTBK1基質であるIRF3と共にオートファジー関連分子などのTBK1依存的なリン酸化を見出した。 また、高活性型ビオチン化酵素であるTurboIDとSTINGとの融合タンパク質を安定発現する細胞株を樹立し、STING活性化の前後で近接する相互作用タンパク質を生細胞内でビオチン化した。そして細胞抽出液を酵素消化した後、新規アビジン様タンパク質であるTamavidin 2-REVによってビオチン化ペプチドを特異的に精製する簡便な手法を開発した。その結果、2500種類以上のビオチン化ペプチドの定量に成功し、既知のSTING相互作用因子であるTBK1やp62/SQSTM1と共に、複数のパルミトイル化酵素や抗ウイルスタンパク質などの刺激依存的なビオチン化を見出した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
TMT標識法と鉄キレート(Fe-NTA)を用いたリン酸化ペプチドの精製、さらに高pH条件での逆相分画を組み合わせることにより、1万4千種類以上のリン酸化ペプチドを10サンプル間で同時に比較定量することができた。そして既知のTBK1基質であるIRF3だけでなく、新たなTBK1基質の候補がTBK1の活性化依存的にリン酸化されることを見出した。また、proximity-dependent biotin identification (BioID)法は、生細胞内で近接するタンパク質をビオチン化することによって相互作用因子を大規模に同定する強力な技術である。しかしながら、ビオチン化タンパク質をアビジンビーズで捕捉する従来の方法では、バックグラウンドが高いという問題点があった。本研究において、ビオチンとの可逆的結合能を有する新規アビジン様タンパク質であるTamavidin 2-REVを利用し、ビオチン化ペプチドのみを特異的に精製・同定する簡便な手法を開発した。そしてTurboIDと融合したSTINGを安定発現する細胞を用いて相互作用因子を検索した結果、2500種類以上のビオチン化ペプチドを同定することに成功した。定常状態では様々な小胞体タンパク質のビオチン化が検出された一方、活性化後にはゴルジ体、エンドソーム、リソソームに局在するタンパク質のビオチン化が多数認められた。この中には活性化STINGと相互作用することが知られているTBK1やp62/SQSTM1などが含まれていた。
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Strategy for Future Research Activity |
新規TBK1基質の候補については、Phos-tagウェスタンブロットやin vitroキナーゼアッセイなどによってTBK1基質であることを確認中である。そして同定されたリン酸化部位のリン酸化不能変異体およびリン酸化模倣変異体を作製し、プルダウン実験や細胞内での過剰発現によってリン酸化の機能的意義を調べる予定である。また、BioID法によって新たに見出されたSTINGとの相互作用因子については、siRNAノックダウンやCRISPRノックアウトを行い、STING/TBK1/IRF3シグナルへの影響を調べる。さらに、GFPとSTINGとの融合タンパク質を安定発現する細胞株も樹立できたため、GFP結合nanobodyを固定化したビーズであるGFP-Trapを用いて免疫沈降-質量分析を行い、BioIDと相補的に相互作用因子を検索する予定である。
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Research Products
(5 results)