2019 Fiscal Year Annual Research Report
Understanding amnesic patients with confabulation: Neural mechanisms underlying the interaction between self and time in human memory
Publicly Offered Research
Project Area | Chronogenesis: how the mind generates time |
Project/Area Number |
19H05312
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Research Institution | Kyoto University |
Principal Investigator |
月浦 崇 京都大学, 人間・環境学研究科, 教授 (30344112)
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Project Period (FY) |
2019-04-01 – 2021-03-31
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Keywords | 作話 / 記憶 / 時間 / 自己 / fMRI / 脳神経疾患 |
Outline of Annual Research Achievements |
作話とは,「実際には体験していないことを,あたかもあったかのように話す現象」のことであり,一部の健忘症患者においてしばしば観察される.しかし,健忘があるからと言って必ずしも作話症状を示すわけではなく,作話がどのようなメカニズムの障害を基盤として生起しているのかについては,明らかになっていない点も多い.本研究では,作話を「自伝的記憶を基盤として,過去から現在へと至る時間軸の中に自己を適切に定位する」ことの障害としてとらえ,その脳内機構を健常若年成人を対象とするfMRI研究と脳損傷患者に対する行動学的研究から明らかにすることを目的とした.
健常若年成人を対象とした脳機能画像研究では,自伝的記憶における「自己」の表象について,特定の他者との関係性の中で対象化される自己表象と,多数の他者によって成立する社会的状況の中で対象化される自己表象とが,デフォルトネットワークの異なるサブシステムによって媒介されていることが示された.この結果は,2019年に開催された北米神経科学学会にて発表され,現在追加の解析を進めつつ論文を準備している.また,時間や場所の文脈情報の記銘に関連する海馬と大脳皮質間の相互作用機構に関するfMRIデータの解析を行い,論文の投稿へ向けて準備を進めている.
神経疾患症例に関する研究では,びまん性軸索損傷患者に対する自伝的記憶と未来の思考に関連する研究計画を具体化し,データの取得を開始することができた.次年度に向けて多数のびまん性軸索損傷例のデータ取得を進めると同時に,健常統制群を対象としたデータの取得も進める予定である.
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
健常若年成人を対象とした脳機能画像研究では,自伝的記憶における自己表象の形成に関連する脳機能画像研究を実施し,従来の研究とは異なる新しいパラダイムを用いて,記憶と自己の多面的表象の基盤となる脳内メカニズムについて新たな知見を示すことができた.また,神経疾患症例に対する行動学的研究では,これまでに詳細な神経心理学的検討が実施されていない「びまん性軸索損傷」を対象とした自伝的記憶と将来の思考に関する研究を開始することができ,当初の計画よりもより新奇性の高い研究に取り組むことができている.以上のことから総合的に判断すると,本研究計画は「おおむね順調に進展している」と考えられる.
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Strategy for Future Research Activity |
次年度の研究では,健常若年成人を対象とした脳機能画像研究において,エピソード記憶における時間や場所の文脈情報の変化が記憶に与える影響とその脳内メカニズムの解明に向けた研究を進める.特に,記銘時と想起時の文脈の変化によって影響を受ける脳内表象を明らかにするために,従来のfMRI研究でよく用いられてきた単変量解析に加えて,多変量解析を用いた比較的新しい方法も採用して解析を進める.さらに,脳機能ネットワークの解析も加えることで,時間や場所の文脈の変化に関連する脳内機構に迫る予定である.
神経疾患症例に対する行動学的検討では,今後も継続してびまん性軸索損傷例と健常統制群に対する自伝的記憶と将来の思考に関する障害の行動学的検証を進め,自己とエピソード記憶が,大脳皮質領域と海馬間,および大脳皮質領域間のネットワークとどのように関連するのかを解明する.さらに,これまでに実施してきた前脳基底部手術例における時間情報処理と作話症状の関連についても検証を進める予定である.
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Research Products
(5 results)