2019 Fiscal Year Annual Research Report
Contribution of Japanese wolf genome to generation of Japanese dogs
Publicly Offered Research
Project Area | Deciphering Origin and Establishment of Japonesians mainly based on genome sequence data |
Project/Area Number |
19H05343
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Research Institution | The Graduate University for Advanced Studies |
Principal Investigator |
寺井 洋平 総合研究大学院大学, 先導科学研究科, 助教 (30432016)
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Project Period (FY) |
2019-04-01 – 2021-03-31
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Keywords | ニホンオオカミ / 日本犬 / 古代ゲノム / 島嶼適応 / 交雑 |
Outline of Annual Research Achievements |
これまでのミトコンドリアDNA全長配列の研究から、ニホンオオカミは他のハイイロオオカミから遺伝的に離れた古い系統であること、またニホンオオカミと日本犬は過去に交雑を起こして来たことが明らかになっている。このことから、ミトコンドリアDNAだけでなく、日本犬の核ゲノムにもニホンオオカミ由来のゲノムが浸透していると予想される。そこで本研究では、日本犬ゲノム中に存在するニホンオオカミ由来のゲノム領域とその役割から、日本犬の成立を明らかにしようとしている。具体的には、1)ニホンオオカミの島嶼適応に関係した領域の特定と、2)それらの領域の日本犬ゲノムへの浸透から予測される日本犬の成立、3)これらゲノムからの推定と、考古学的知見との比較検証、を行い日本犬の成立に寄与したニホンオオカミのゲノム領域の解明を目的とている。この研究を行うにあたり、日本犬、ニホンオオカミのゲノムDNA配列を決定する必要がある。 本年度はニホンオオカミ6個体、秋田犬3個体、柴犬5個体、紀州犬3個体のゲノムそれぞれ50xの配列を決定した。またオランダ ライデン自然史博物館に保管されているニホンオオカミのタイプ標本とヤマイヌの個体のゲノムそれぞれ50xの配列を決定した。予備的なSNP解析によりニホンオオカミは他のハイイロオオカミ亜種や犬種から遺伝的に離れており、またヤマイヌは他のニホンオオカミから遺伝的に離れていることが明らかになった。上述したニホンオオカミのデータを用いて、全ゲノムより先にミトコンドリアゲノムの配列を決定した。これらの配列を用いて研究協力者と系統解析を行い、論文を作成し、論文は現在投稿中である。上述したニホンオオカミと日本犬の個体からのゲノム配列を用いて現在SNPデータの解析を行っている。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
1: Research has progressed more than it was originally planned.
Reason
当初の予定では、ニホンオオカミ3個体、秋田犬3個体、柴犬3個体、紀州犬3個体の予定でゲノム配列を決定する予定であった。しかし、実際には企業との協力もありニホンオオカミ6個体、秋田犬3個体、柴犬5個体、紀州犬3個体、ヤマイヌ1個体のゲノムDNA配列を50xで決定することができた。特にニホンオオカミの中の1個体がミトコンドリアDNAの全長配列の解析により、すべてのニホンオオカミの外群になることがわかっており、この個体のゲノムDNA配列を効率良く決定できたことは成果として大きい。なぜなら、ニホンオオカミと日本犬が交雑している可能性が高いため、ニホンオオカミのゲノムにも日本犬のゲノムが浸透している可能性が高いからである。ニホンオオカミの中でも古い系統の個体を解析に用いることにより、交雑前のニホンオオカミのゲノム情報を得ることができる。これらのことより、当初の予定より進展していると考えている。
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Strategy for Future Research Activity |
これまでにゲノム配列を決定した18個体についてはゲノム解析を進めている。また、比較のために世界各地の犬種とハイイロオオカミのゲノムDNAのデータをデータベースからダウンロードして解析を進めている。これらのデータについては、ニホンオオカミと日本犬の世界のハイイロオオカミと犬種とどのような遺伝的関係になるか、日本犬ゲノムに存在するニホンオオカミ由来のゲノム領域はどの程度存在するか、そのような領域にどのような遺伝子が存在しどのような機能を持っているか、前述の遺伝子の機能からニホンオオカミの形質は日本犬に現れているか、予想される日本犬の成立を考古学的な遺物との検証、についての解析を行っていく予定である。
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Research Products
(15 results)