2020 Fiscal Year Annual Research Report
Search for new lipid ligands responsible for chemical communication between plants and microorganisms
Publicly Offered Research
Project Area | Frontier research of chemical communications |
Project/Area Number |
20H04779
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Research Institution | The University of Tokushima |
Principal Investigator |
櫻谷 英治 徳島大学, 大学院社会産業理工学研究部(生物資源産業学域), 教授 (10362427)
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Project Period (FY) |
2020-04-01 – 2022-03-31
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Keywords | 水酸化脂肪酸 / フザリウム / 糸状菌 / 発酵 |
Outline of Annual Research Achievements |
通常培養では生成されないこれら脂肪酸二次代謝産物は特定のストレス下で生成することから生理活性脂質リガンドとして機能することが期待される。菌体内でこれら脂肪酸二次代謝産物の貯蔵形態や生理学的機能が解明されれば、これら脂肪酸二次代謝産物を含む脂質が新たな生物活性脂質リガンドとして機能すると考えられる。 自然界から廃グリセロールを利用可能な菌のスクリーニングを行った結果、脂肪酸二次代謝産物(10-ヒドロキシ脂肪酸と10-オキソ脂肪酸)を著量蓄積する糸状菌の単離に成功した。同定の結果、フザリウム属糸状菌であることがわかった。このフザリウム属糸状菌の培地にオレイン酸を添加すると水和反応により10-ヒドロキシステアリン酸が生成され、リノール酸を添加すると10-ヒドロキシ-シス-12-オクタデセン酸が生成されることが明らかになった。また、振盪培養後、静置培養を行うと生成物の量が増加することが分かった。このことから本菌株の水和反応の進行には微好気条件または嫌気条件が好ましいことが示唆された。さらに、各種脂質の添加効果も確認した。具体的には、オレイン酸を多く含むキャノーラ油(トリアシルグリセロール)、キャノーラ油から調製した遊離脂肪酸、脂肪酸メチルエステルをそれぞれ培地に添加したところ、すべての条件において、10-ヒドロキシステアリン酸が検出された。水和反応の基質は遊離脂肪酸と推測されるが、フザリウム属糸状菌がもつリパーゼの働きでトリアシルグリセロールや脂肪酸メチルエステルが遊離型に変換され水和反応が進行したと推測された。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
単離したフザリウム属糸状菌の脂肪酸水和反応に関して、オレイン酸やリノール酸が良好な基質であることを見出した。また、反応を微好気条件あるいは嫌気条件にすると、水和反応がさらに進行することが分かった。培地に添加する脂肪酸は、遊離脂肪酸だけでなく、トリアシルグリセロールや脂肪酸メチルエステルでも本フザリウム属糸状菌は水和活性を有することがわかった。遺伝子組換え系の開発に関しては、高効率で安定した形質転換系の開発が求められる。パーティクルガン法に注力して条件検討を行う必要があると考えている。また、菌体内における水酸化脂肪酸、脂肪酸二次代謝産物の局在に関しては、いくつかの脂質で細胞内局在を観察する必要があると考えている。
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Strategy for Future Research Activity |
単離したフザリウム属糸状菌の形質転換系の効率を向上させるために、パーティクルガン法の諸条件の最適化、高発現プロモーターの探索を行う。高発現プロモーターの探索をするために、本菌の遺伝子発現解析を行い恒常的に高発現している遺伝子のプロモーターをいくつか単離し、遺伝子の転写量を評価する。開発した遺伝子組換え系を利用して、内在性の脂肪酸水和酵素の高発現による水酸化脂肪酸生産、外来性遺伝子発現による新たな脂肪酸二次代謝産物の生産研究を行う。 水酸化脂肪酸などの脂肪酸二次代謝産物が本菌体内でどのように蓄積されているかを顕微観察する。脂質の染色にはナイルレッドなどの一般的な脂質染色試薬を試行する。
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